やるわよ
スリー・ビルボード
(2017/アメリカ)
監督:マーティン・マクドナー
出演:フランシス・マクドーマンド ウディ・ハレルソン サム・ロックウェル
魂を揺さぶられっぱなし!サスペンスの醍醐味がぎゅっと詰まった衝撃作。
脚本も担当している監督は、劇作家としてローレンス・オリヴィエ賞を受賞しているほどの実力派。ケタ外れの執念と覚悟で突進する彼女と、それに対して容赦なく報復する警察官。この2人の複雑な関係を軸に、憎しみの連鎖と和解、そして犯人を追い詰めていくスリルが巧みに描かれ、ハラハラしたり泣いたりグッときたりの連続に満足度は上がりっぱなしだ。
特に母親の「そこまでする?」という過激な行動に隠された理由に、胸を強く打たれること間違いなし。
また、彼女に責められる署長にもそれなりに事情があるわけで、善と悪を多角的に捉えつつ、どこかで人間を信じている監督の視点が優しい。
ドロドロなのに後味さわやかなのは、きっとそのせいだろう。
暴力の連鎖がすっと抜けた瞬間から、憎しみあっていた関係が急速に変化していく。それまで向かい合っていた2人は、一緒に前を向いて歩き始めるのだ。
ハリウッド大作にはしてはめずらしく結論を出さず、余韻がずしりと残る傑作。