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生まれた家は無二のものよ

ハワーズ・エンド
監督:ジェームズ・アイボリー(1992/イギリス・日本)
出演:アンソニー・ホプキンス ヴァネッサ・レッドグレーヴ ヘレナ・ボナム=カーター エマ・トンプソン

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偶然っていうのは運命のこと?ありそうでない。でもあるかもしれない。

 「ハワーズ・エンド」という名の別荘をめぐり、2つの家族が複雑に絡み合い、人と人が奇妙な縁で結ばれていくこの作品は、イギリスの文豪フォスター小説を映像化して定評のある監督が世に出した傑作の1つ。20世紀初頭のイギリス紳士・淑女の服装や室内インテリア、美しい田園風景などみんなが憧れるイギリスがぎゅっと詰まっているので、特にイギリス好きにはたまらないだろう。

もちろん知的でシニカルなユーモアもたっぷりで、そこもイギリスらしく、つまり映画を通してイギリス文学を堪能できる作品だ。

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登場する2つの家族が、芸術的で情緒豊かな中産階級と現実的な資産家の家庭というのが対照的で面白い。彼らの価値観の違いや時代背景などが歴史の勉強になるだけでなく、財産争いのドロドロもあって退屈せず。「ハワーズ・エンドは誰のものに?」というミステリーとしても、十分楽しめるだろう。

 重要な登場人物である女性が、ベートーヴェンの演奏会に出かけるシーンがある。

そこであの有名な「運命」が流れるのだが、「運命はこう扉を叩く」という言葉の通りその音楽が彼女の人生を暗示しているみたいで、こちらの気分も高揚。その後「運命」の「タ、タ、タ、ターン」という宿命的メロディが、彼女の恋人の「頭痛」、そして汽車の「騒音」と重なりあいながら、2人を思いもかけない場所へと導いていく…こういう演出がうまいね。ニクイね。

 運命に逆らっても身を任せても、めぐりめぐって結局は同じところに行き着くのだろう。

いろいろあったけど、何だかいい話。見終わった後、そんな気持ちになる。

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