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危険なゲームを仕掛けるのね

マッチポイント(2005/イギリス)
監督:ウディ・アレン 
出演:ジョナサン・リーズ・マイヤーズ スカーレット・ヨハンソン

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ああ、曇っている。ずうっと曇りっぱなしだ。

今までイギリスを舞台にした映画を何本か見てきたけど、これほど曇り空が印象に残る作品はなかったように思う。これはやっぱりウディ・アレン監督が、「ロンドンって、本当にいっつも曇っているよなあ」という異国人の目で撮ったからだろうか。

とにかく今にも雨が降りそうなどんより空なのに、平気でテニスをしているイギリス人。何事もないように庭でくつろぐイギリス人。

うーん。イギリスで暮らすのって、こんな感じなのかなあ。

映画を見ていてこういう実感を得ることは、実は結構大切なことである。だから、ウディ・アレンってやっぱり上手い。

あと、イギリス上流階級の人たちのスノッブな雰囲気や、育ちはいいんだけど俗っぽい感じ。お金があるのが当たり前な感じ。イギリス社会にいまだ息づいているこういう「階級感」を描くのが、上手いなあ。観察力のセンスがさすが!

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今回初めて映画の舞台をニューヨークからイギリスに移し、音楽もジャズからオペラに変えたウディ・アレン。

その新しいウディ・アレンが「凶と出るか吉と出るか」と、映画ファンはちょっとイジワルな視線で注目していたわけだけど、とりあえず絶賛されているようなので、私もひと安心である。

今までの作品は、男女がくっついたり離れたりしながらみんなペチャクチャよくしゃべるコメディが多かったけど(もう飽きた)、この映画みたいに不吉な影が漂うシンプルな話も、なかなかいいじゃない。

実はこれも「(皮肉な)コメディ」という見解があるのだけど、どうでしょう。

ともあれ御年70歳。プリプリ唇のスカーレット・ヨハンソンが、ウディ・アレンの回春剤になったに違いない。

それにしても、これはものすご~く複雑な気持ちになる映画だ。イヤな気持ちにもなるし、虚しくもなる。

女だったら、まず怒ると思う。なのに、不思議と忘れがたい。「まあ、よくある話」と言ってもいいほど、古典的な三角関係のもつれ話なのに、妙に長く心に引っかかるのである。

でも、臭いものにフタをしたこの主人公は、確かに強運の持ち主だけど、罪の意識があるだけまだマシよね。世の中には、どんな悪行をしてもバレず、いやバレだとしても、平気な顔をして生きている人がたくさんいるだろうから。

しかし、彼がそうまでして守りたかったものが、出世や贅沢な暮らしというんだから、ケチくさいのう。しかもそれ、棚ぼたで手に入れたものだよ。いや、だからこそ、あんなにしがみついたのかな。

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ところで、私にはこの主人公が、最初から野心でガツガツしているようには、どうしても見えなかったけど。

だって、上流社会の女性と結婚し、妻の実家の後ろ盾によって出世したのも、向こうからやってきたものをつかんだだけのことであって、自分から戦略をめぐらせて実現していったわけではないでしょう。そりゃ「あわよくば」という上昇志向は強かっただろうけど。

幸運の波に身を任せ、快楽にも身を任せる。先のことをあまり深く考えていないあたり、よくいる身勝手な普通の男である。

それはそうと、ジョナサン・リーズ・マイヤーズって、ホアキン・フェニックス(カッコよくなってきた最近のホアキン)に似てない?目元や唇が。特にスカーレット・ヨハンソンを熱く見つめる目つきとか、緊張でじっとり汗をかいている時の顔が。

いや、どっちかというと、ジョナサン・リーズ・マイヤーズの方が、顔に肉がついてホアキン・フェニックスに近づいてきたんだね。しばらく見ないうちに、こんなにホアキン化が進んでいたとは。

なんてこともつらつら思いつつ、このショッキングな映画を映画館で見た私です。

ホントに私としたことが、こんな陳腐なストーリーにショックを受けるなんてねえ。それもみなウディ・アレンの才能のせいだ。

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