
私はいつも…変わってるでしょ?
アルゲリッチ 私こそ、音楽!(2012/フランス・スイス)
監督:ステファニー・アルゲリッチ
マルタ・アルゲリッチというピアニストをご存知ですか?
1941年アルゼンチン生まれ。12歳の時に大統領の計らいでウィーン留学したという天才で、24歳でショパン国際ピアノコンクールで優勝して日本でも有名になった。
そして70代になった今でもなお国際的ピアニストとして世界中で活躍しているアルゲリッチは、その一方で、マスコミ嫌いで取材は一切拒否だの父親違いの3人の娘がいるだのと、私生活も彼女の演奏のように奔放で情熱的。それゆえ、彼女の素顔は謎に満ちていた。
このドキュメンタリーが公開されるまでは。
この映画の注目すべき点は、監督が実の娘だということであろう。
家族だからこそ撮れた名ピアニストの本当の姿。スクリーンには3人の元夫も登場し、女性として母親としてアルゲリッチが今まで何を考え、そして何を語るのか、特にクラシックファンでなくても興味シンシンである。
世界中を飛び回りながら子供をポンポン産み、しかし一緒にいることはほとんどなく、離れ離れに育った親子。父親の違う姉妹がいて、母親はエキセントリックな天才で…子供たちがどんな幼少期を過ごしたのかは想像に難くないが、その娘たちも今では大人になり、過去はどうあれ同じ女性として母親の生き方を受け容れているようにみえる。
ああ、結局変わらなければならないのは、子供の方なんだよなあ。
母と娘たちがマニキュアを塗りあいっこするシーンが、とても好きだ。芝生の上で4人がじゃれあいながら他愛もない話をして、失った時間を取り戻すかのようにくっついて。マニキュアというのがいい。だってお母さんと娘なんだもん。