「日経平均株価指数がバブル越え=バブルよりも好景気」は間違い!?
ここ1ヶ月の日本経済の話題は、日経平均株価指数(以後、日経平均)がバブル景気時よりも値上がり史上最高値を更新したこと、また日銀がマイナス金利政策を解除したことです。
そこでこの記事では、日経平均と日本の景気について、記事タイトルのとおり「日経平均株価指数がバブル越え=バブルよりも好景気」と考えるのは間違っていることについて話していきたいと思います。
連日の経済ニュースの通り、2024年の2月末に日経平均が、バブル経済で記録した最高値を三十数年ぶりに更新しました。
しかし、日本で暮らしているほとんどの日本人にとって、今の日本の景気がバブル経済時よりも好景気である、もしくは単に好景気であると感じている人は少ないでしょう。
じつは、「日経平均株価がバブル時よりも高値=バブル時代よりも好景気」と考えるのは間違っているのです。
それはなぜかをこれから説明します。
そもそも株価指数というものは時間が過ぎるにつれて右肩上がりで上がっていくものなのです。どういうことかというと、代表的な株価指数を構成する企業には、上場企業でしかも業績が良い企業が選ばれています。そのため、業績が赤字の企業はほとんどありません。つまり金額の大小はありますが、基本的には毎年黒字です。すると、企業は1年ごとに資産が増えていきます。増えた資産は、現金の時もあれば、土地や他企業の株式かもしれません。資産の形態はともかく、利益が出れば決算書の貸借対照表の資本の部の金額が増え、その結果資産の部も年々増えていきます。
そして、企業が保有している資産が増えれば、当然企業価値が上がり、それを株式市場が評価して結果株価も上がります。これが、株価指数が右肩上がりを続ける仕組みです。
では、なぜ日経平均がバブル後低迷したかというと、バブル時に株式市場が加熱して急激に上昇した時に株を買った人は、それ以後のこの30年間の成長を織り込んで、当時高値で株を購入してしまったからです。そして、バブル経済が終焉したら、株価が「妥当な」価格まで下落してしまいました。
しかし、株価指数が過去最高値を更新した今、過去に株を購入した人は今まで持ち続けていれば、皆利益が出ています。まあ、30年経っても数%のリターンしか得られないのは、割りに合いませんが。
話は戻り、過去50年間の日経平均の推移を見ると、バブル経済時の数年間で、株価が急激に上昇しましたが、バブル経済の終焉と共に、最高値の数分の一以下まで値下がりしました。しかしその後の推移をじっくり見ると、バブル時の急激な値上がりは特別として、バブル前の日経平均の上昇曲線の延長線上に、右肩上がりに日経平均が上昇してきています。そして、2024年の今、ようやく日経平均がバブル時の最高値を超えたのでした。
このように見ると、今の日経平均は、バブル時のように株式市場が過熱した結果の市場最高値更新ではなく、日本企業の基礎体力が時間と共に上がった結果の株価なのです。つまり、現在の株価指数は、現在の日本企業を冷静に値付けした結果の株価であり、さらにいうと企業の資産や利益を見ると、まだ割安な株価でもあります。
株式投資の知識がない人は、日経平均がバブル経済時を超えて最高値になったと聞くと、いつまたバブル経済崩壊のように株価が下がるか心配になる人が多いでしょう。しかし、現在の株価指数は、特に好景気だからというわけではなく、日本企業の実力が正当に評価されての株価指数なので、今後たとえばリーマンショックやコロナ禍のような、何か大事件が起きない限り、大きく値下がりすることはないと考えられます。
そもそも、株というものは、企業の資産を元に価格が決められています。よく、会社が倒産すれば株価が0になると言われていますが、倒産企業にも何かしらの資産が残っているので、本当の意味での株価0ということは起きません。
ここまでは、現在の日経平均が、バブルよりも好景気だから過去最高なのではなく、時間が経って利益が積み上がったからの過去最高値ということを説明してきました。
多くの方がもう一つ疑問に思うことは、日経平均が過去最高なのに、好景気を実感できないことでしょう。
これは、バブル期とそれ以後の日本経済の違いを見ればわかります。バブル期は、日本国内の土地が値上がり、日本の企業の株価が上がり、日本企業は主に日本人に向けて商品を売り、インフレが続いていたので日本企業の従業員の給料も毎年上がり、海外向けの商品も日本国内で生産していました。この結果、日本国内にはお金が余るほど循環していました。
しかし、現在の日本企業は、売上の半分以上を海外で稼ぎ、工場も海外に作り、その工場では海外の現地の人が働き、そこで作った商品は海外で販売されています。また、日本は長年デフレが続いていますが、ほとんどの海外ではインフレ状態なので、海外で稼いだ利益も、毎年値上がっている海外の従業員の給料や原材料費の支払いに当てないといけないので、利益を日本国内の従業員に還元することができません。
このような理由から、日経平均株価指数が過去最高値を更新しても、日本国内では好景気を実感できないわけです。しかし、企業の決算書を調べれば、現在大きな利益を稼いでいる日本企業はごろごろあり、そのような会社は「私の会社はすごく儲かっています」とは大っぴらには言わないので、ほとんどの日本人は知らないのです。
しかし、海外の投資家は日本企業の決算書を調べて、企業の資産や利益の数字から、「今の日本企業の株価は安い」と考えているので多くの海外投資家が日本株を購入し、その結果が現在の日経平均に反映されているのです。
以上、日経平均と日本の景気について話してきました。
テレビや評論家などの中には、バブル経済時の株価指数を超えた今の日本経済は、過去同様バブルではないかと言う人もいます。おそらく日本国内の景気が良いと実感できないのに、日経平均だけが上昇しているので、「実態を伴わない株価上昇=バブル」と捉えているのでしょう。しかし、「日経平均が過去最高=好景気」でないことがわかったあなたは、もうそのような話を信じてしまわないでしょう。
過去30年、日経平均が低迷していた日本に暮らす多くの日本人には、好景気は実感しにくく、また株価は基本的に毎年右肩上がりに上がっていくという事実を信じられないでしょう。しかし、現在日経平均が史上最高値を更新したのは、バブル経済が理由ではなく、過去30年間の企業の努力が結実した、日本企業の正当な評価が理由なのです。
以上、「日経平均株価指数がバブル越え=バブルよりも好景気」について話してきました。
この記事を書く前の予想に反して長文になってしまいましたがまとめると、現在の日本経済はバブルでもなく、かといって好景気でも不景気というわけでもなく、普通の状態ということです。どちらかというと、アメリカ経済の方がバブルだと思います。
話が長くなりましたが、この記事が、今年から新NISAの制度も始まり、株式投資に興味があるが、現在の日本はバブル状態で今後また大きく株価が下がるのではないかと心配している方の株式投資への後押しになれば幸いです。
では、また次の記事でお会いしましょう。
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