プロレスにおける批判的な考察 16
久しぶりの投稿である。
新日本プロレス、年間最大イベントの1つである、1.4東京ドーム大会が終了した。この大会から、今後の「外国人選手」について考えてみたい。
1 新日本プロレスの「ガイジンエース」を振り返ると・・・
古くはタイガー・ジェット・シン。悪役を迎え撃つ日本人エースの構図は分かりやすく、シンは新日本プロレス初期の大功労者と言えよう。
そしてスタン・ハンセン登場。猪木を破壊するんじゃないかと思わせるその暴走ファイトは、シンやブッチャーの時代の終焉を告げていた。
ハンセンからホーガンへ、そしてビガロ・・・ベイダー、ノートンの時代に入る。器用すぎたビガロはベイダーのパートナーに落ち着き、ベイダーが去った後はしばらくノートンがエースの座に就くが、いかんせん不器用すぎた。いわゆる“名勝負”が思い浮かばない。
新日本から移ったハンセンやウイリアムス、テリー・ゴディが輝いていた全日本プロレスと比べると、どうにも1枚落ちていたと言わざるを得ない。
2 パレットクラブ登場
パワーファイター型の「ガイジンエース」からの方向転換は、何と言ってもパレットクラブの登場だ。NWOの衝撃を思い出させるスタイリッシュな人気を得たと言っていいと思う。
プリンス・ディヴィッド、AJスタイルズ、ケニー・オメガ、そしてジェイ・ホワイト・・・彼らは全員卓越した運動能力を持つテクニシャンである。テクニックを隠し持つ狂乱ファイターであったシン、不器用だが暴走パワーのあったハンセン以降のエースガイジンと比べると、試合内容のうまさは圧倒的である。ディヴィッドもAJも「あっち」に行き、ケニーもAEWへと去ってしまったが、特にAJはもう少し日本人レスラーと戦ってほしかったと個人的に思う。(当時から限定出場で、ギャラは高科っと思うが・・・。)
そしてパレットクラブのボスは、ジェイ・ホワイトになる。新日本プロレス育ち。そう・・・新日本は“自前の”ガイジンエースを育てたのである。
3 ジェイ・ホワイトの時代
彼のファイトスタイルは極めてオールドスクールだ。相手の攻撃をのらりくらりと受け、スキを見て切り返し、ここぞというところで大技を放つ。ダメージを蓄積させ、無敵のフィニッシュであるブレイドランナーにつなげていく。
わたし的にはその緻密な試合運びが貴重に感じ、ジェイのことは高く評価している。しかし、ケニー・オメガなどと比べると刺激が無く、観ていて退屈に思える人は少なくないのかなあと思う。
そのジェイが・・・また、今回も負けた。東京ドームで。まあ、年間最大イベントで(しかも1年の最初の大イベントで)日本人の大エースであるオカダ・カズチカが負けるはずがない。ジェイの負けは、このカードが決まってから予想はついていた。
今後・・・ジェイ・ホワイトはどうなるのだろう。
4 新日本プロレスに求められるもの
現在、新日本プロレスのガイジンは、それなりに充実していると思う。ジェイ・ホワイトにウィル・オスプレイ、タマ・トンガ、ザック・セイバー・Jr、そしてジェフ・コブ。それぞれ異なった試合スタイルで、新日本プロレスにはいなくてはならない存在だ。皆肝心な試合で勝たせてもらっていないのが気がかりではあるが・・・。
今後期待していたのはなんと言ってもヒクレオ。その体格とバックボーン、そしてブルーザー・ブロディを彷彿とさせる風貌は、次期ガイジンエースの最右翼と言って良い。
そんなヒクレオとジェイ・ホワイトが今度試合する。「敗者日本追放マッチ」として。
最初、これでジェイ・ホワイトもついに日本を去るのか・・・と思った。ヒクレオには日本を去る理由がなかったからである。ジェイには数年前から海外の他団体移籍のうわさが出ていたし、まあ20代で大物レスラーにのし上がったからである。
しかし・・・どうやら、「あっち」の団体が目を付けていたのはヒクレオのようである。玄人好みのジェイよりも、単純にでかくて強いことの分かるレスラーだからか。
どちらにしても残念なことである。ジェイ、オスプレイ、ジェフ、ザック、ヒクレオは、いずれも新日本のガイジンエースになることのできる器だからである。もったいない。
新日本プロレスに望むこと。もっとガイジンを大事にすべきである。いつもオカダやヒロムが勝利する(今回はYoshihashi・後藤組も!)、そんな展開は飽きた。正面からぶつかり、どちらが勝利するか分からない、そんなマッチメイクをしてほしい。
じゃないと・・・もっと失っていくぞ、光る原石を。
ジェイ・ホワイト・・・まだまだガイジンエースとして活躍してほしいなあ。彼こそ宝だよ、新日本の!