見出し画像

生分解性セルロースセメントの作り方 完全マニュアル


生分解性セルロースセメントとは?

セルロースセメントは、木材の下地コーティングやハンドメイドルアーの製作などに使用される塗料です。透明で耐水性があり、薄くても強固な塗膜が得られるのが特徴です。

一般的なセルロースセメントには生分解性がありませんが、生分解性の酢酸セルロース樹脂を使用し、さらに溶剤組成を最適化することで、コーティング剤「生分解性セルロースセメント」を開発しました。

生分解性セルロースセメント

生分解性セルロースセメントの主な特長

  • 木材に含浸し、強度を与える

  • 木材の凹凸を埋め、表面を平滑にする

  • 木材に耐水性を付与できる

  • カラー塗装の発色やホログラムの輝きを増すことができる

  • 硬質で手触りが良好な透明塗膜が得られる

  • 仕上げのトップコートとして使用できる

  • すぐれた生分解性を持つ(土壌中でも海洋中でも分解する)

  • 塗膜のレベリング性が良好(塗りムラになりにくい)

  • 作業上の安全性が高い(溶剤の臭気や毒性が低い)

  • 塗装時のカブリ(高湿度下での白化現象)が起きにくい

  • 低コスト(原料費のみで自作可能)

  • 都度使う分だけを作ることが可能

  • 配合のアレンジが可能(粘度や揮発速度を調整できる)

このように、既存のセルロースセメントにはないたくさんの特長を持っています。

開発の経緯

プラスチック製品は、環境に流出して一旦海底や湖底に沈んでしまうと、温度や紫外性などの影響を受けにくくなり,劣化を促進するものがなくなってしまいます。これは塗装品でも同様です。塗装もプラスチックであるため、非生分解の塗料で塗装されたものは母材が何であれ、プラスチック製品同様に分解が進まなくなってしまうことが考えられます。

木材は自然に還すことができる素材ですが、塗料を塗ってしまうと長期間分解が進まなくなってしまう可能性があります。塗料は母材を保護するためのものであり,長期耐久性が求められますが、ある程度の年月が経過したら自然に還った方が良い場合もあります。

最近は釣り具に対して環境素材を使うことの理解が進んでいることもあり、セルロースセメントを生分解性素材に切り替える提案から始めてはどうかということで、酢酸セルロース樹脂を使ったルアーコーティング用塗料の開発を行ったというのが経緯です。

実績

酢酸セルロースコーティング(Stream-Fishing.net 様)

ルアー製作で生分解性セルロースセメントをお使いいただき、良好な評価をいただいています。木材ルアーでは計3回のディップコートが行われますが、すべて生分解性セルロースセメントでルアーを仕上げていただきました。


生分解性プラスチック・酢酸セルロースを折り紙と竹細工に塗る (ダイナミックラボ 様)

ルアーとは離れますが、紙のコーティング用にもお使いいただいています。折り紙と一閑張りの竹籠について、生分解性セルロースセメントで試していただきました。生分解することから安心して自然環境中で使うことができ、耐水性が得られるということでこちらも良好な結果をいただいています。

試作段階だったため、上記2つのサイト内では「生分解性セルロースセメント」という文言はでてきませんが、2つとも生分解性セルロースセメントについての記事となっています。

生分解性セルロースセメントの組成については無償公開を目的として、サイト内でご紹介いただきました。この情報からでも自作できますので、可能な方は試してみてください。


ふじのくにセルロース循環経済国際展示会2024に出展いたしました (Nature3D)

生分解性セルロースセメントは、2024年10月24~25日に開催された「ふじのくにセルロース循環経済国際展示会2024」に出展させていただき、大変好評をいただきました。ルアーや紙などの塗装例の他、出展の資料も掲載してあります。参考にしてください。

以下は詳細マニュアルです。組成の技術的な意味、準備が必要なもの、作業手順、安全上の注意事項などをご説明します。

ここから先は

5,028字 / 19画像

¥ 5,000

PayPay
PayPayで支払うと抽選でお得

この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?