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個人の製作品の値付けをどう考えるか

個人の製作品を販売する際、価格をどう決めるかというのはなかなか難しいものです。まず価格帯はその製作品が大量生産の工業製品に近いのか、一点物のクラフト品に近いのかで決め方が違ってきます。大量生産の工業製品に近いのであれば、近い位置づけにある市販品の価格がベンチマークになりますので、市販品との価格競争ということになります。ただ、個人の製作品で工場に近いレベルの大量生産ができる例は、製造委託する場合を除けばあまりないと思います。

やはり個人の製作で入りやすいのは、数十個、数百個単位となる製作品が多いのかと思われます。最近は高性能なデジタルファブリケーションツールが出てきたおかげで、一部の作業を自動で行ってくれるようになったこともあり、昔のようにすべてを手作業で行うような大変さは減ってきました。しかし多くは事前の調整や仕上げ作業など、必ず何らかの人手を介する作業は残ります。一から工具で掘り進める職人的手作業のような大変さは減りましたが、別の側面での大変さは依然として残っているということです。

また、最近はデジタルファブリケーションツールの性能が向上してきたこと、写真撮影の機材が充実してきたことで、その製作品が工業製品と見分けがつきにくくなってきています。それ自体はいいことなのですが、製作品の画像だけを見た時に、工業製品と同じように見えてしまうことがあり、そのレイヤーの外から来た人にとっては工業製品と同等の価格をイメージしてしまうこともあります。

最近はものづくりも昔に比べラクになったという声もありますが、それは必ずしもそうではなく、実際のところ、裏では製作者は多くの苦労をしています。製作品が認められるものであれば、その労に対する対価は得られるべきです。忖度せずに適切な価格を設定することは、その製作品の位置づけを決めるという意味合いを持ちます。逆に言えば、いくら価値があるものでも、妥協して安価な価格を設定してしまえば、そういう価格帯の製品と同じだという先入観を持たれるということです。

やはりその製作品に何かしらの思いを込めるなら、適切な価格を設定すべきだと思います。しかしその場合、作者はその製作品の意義、良さ、価値をていねいに説明、表現する必要があります。「良さは買ってくれればわかる」というのは幻想です。これは多くの日本企業がかつて失敗したことでもあります。良さは意識して伝えないと伝わりません。これでもかと説明するくらいでちょうどいいくらいです。

広告を出すのも一つの方法ですが、画一的になってしまい、有効な方法となりえないこともあります。それよりも個人は淡々とその製作品がどんな意味を持つのかを自分の言葉で説明した方がよいのだろうと思います。それがたとえ面倒で不格好でもです。見せ方は人それぞれです。動画で見せる、写真の撮り方で見せる、文章で説明する、図解を入れる、ユーザーさんの評価を紹介する、思い入れや開発の背景を添えるなどやり方は無数にあります。

そのやり方から訪問者は本気度や温度を感じ取ります。これがなければ商品ページを作っても単なる無機質な情報にとどまってしまい、多くの人はその製作品のことを忘れてしまうでしょう。画像を載せ、価格を付ければ終わりではありません。むしろそこがスタートで、どれだけ価値を伝えることができるかが個人にとっては大事なのだと思います。

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https://deltathink.com/news-views-apc-price-changes-when-does-up-mean-down/

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