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日本お米ばなし vol.14 環境編「田んぼを小麦畑に転換したらどうなる?」

Natural Farmingは、お米の専門家である「五ツ星お米マイスター」のいるお店です。
お米が大好きな私たちがお届けする【 日本お米ばなし】ぜひご覧ください。

日本お米ばなし vol.14 環境編「田んぼを小麦畑に転換したらどうなる?」

日本人の米離れについては、以前の日本お米ばなし vol.2 食文化編「日本人はどのくらいお米を食べている?」でもご紹介しました。
そして、日本の家計支出額からみると、すでにお米は主食ではないというお話もさせていただきました。

そうすると、「田んぼをやめて、小麦を作ったらいいのでは?」と考える方もいることでしょう。
もちろん、小麦を国内生産していくことも良いと思いますが、田んぼをやめてしまうと困ったことになってしまう日本という国の特性があるのです。

ということで、今回は、日本には田んぼが必要不可欠な理由を少しご紹介しようと思います。

どうして米が主食になった?

古事記や日本書紀で、日本の国は「豊葦原之瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)」と呼ばれるように、日本は低湿地が多く、縄文人にとっては役に立たない土地がたくさんありました。
採集や狩猟で主な食糧を調達していた縄文人は、縄文時代後期の気候変動により農耕をはじめていきます。
ちょうどその頃、大陸から稲作技術を持った人たちがやってきて、稲作文化が広がっていきます。実際に稲作文化を日本に広めていったのは弥生人で、縄文人が見向きもしなかった低湿地を水田に改良していったのです。
こうして縄文時代の食文化に米が主食として加わることで和食文化ができてきました。

水が多すぎる国「日本」

日本はモンスーンアジアの東側に位置する、世界的に見ても雨の多いエリアです。少し古いデータになりますが、日本は年平均1718mmの降水量があり、これは世界平均(880mm)の約2倍に相当します。しかも、日本の降水量は季節ごとの変動が激しく、梅雨期と台風期に集中しています。
山が多く地形の険しい日本は、川が急流で降った雨が一気に海まで流下していくこともあり、大雨が降ると水が急に増えて、洪水や土砂崩れを引き起こすのです。
さらに、狭い国土に人口が多いので、人口一人あたりの降水量は世界平均の約4分の1で、人口一人あたりの水資源量は決して多くはありません。日本では、多すぎる水をコントロールしていく必要があるわけですね。

出典:(財)水資源協会「日本の水 2005」

米をつくるだけではない、田んぼの大切な役割

ここまでの流れで、田んぼの重要性に気づいた方もいらっしゃるでしょう。
田んぼは、米作りのために水を必要とするのはもちろん、水をコントロールすることで国土を守る働きもあります。

①洪水を防ぐ
田んぼはあぜで囲まれているので、ダムのように雨水を貯めてくれる働きがあります。日本では、田んぼや溜池、用水路などの農業用の水利施設が一時的に大量の水を溜めることで、洪水被害の軽減や防止をしてくれているので、田んぼが減ると蓄えられる水の量も少なくなってしまいます。

②地下水をつくる
田んぼは常に水を溜めているため、絶えず地下に水を浸透させています。こうして、ゆっくりときれいな地下水をつくり、それが川の下流や海へと流れていったり、地下水を汲み上げるなどして利用することができます。このように、水環境の保全にも役立っているのです。

ほかにも、「暑さをやわらげる」「いきものの住処になる」などの役割もありますが、今回は「水」に着目してご紹介しました。

まとめ

日本お米ばなし vol.14 環境編「田んぼを小麦畑に転換したらどうなる?」
こたえ:水のコントロールができなくなり、水害が増える可能性がある。

おわりに
世界的な小麦の需要増加や国際情勢から小麦価格が上昇している反面、需要も価格も落ち込むお米ですが、消費量が減ってきたから作るのをやめてしまおうというわけにはいかない事情もあるのですね。
災害大国日本において、食べ物の選択で1つでも災害が減るのなら、計り知れないメリットがあるのではないでしょうか。
需給量だけでなく、日本という国の文化がどのようにできてきたのかを知ることで、お米も食べようかなという気持ちになっていただけたら嬉しいです。


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