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#1 「ハサミの事」
ハサミの歴史は意外と古くて深い。
普段気が付かないけど今では生活の中でなくてはならない物になっているんじゃないかなって思う。
勿論、触る機会がそれほど無い人もいるかとは思いますが
自分自身洋裁の仕事をしているのでそれこそ一日一回は必ず触れると言っても良い位身近で大事。
そんなハサミ。その歴史は意外と古くて深い。
確認出来うる世界最古のハサミというのは紀元前1000年頃まで遡るというのだから驚きです。
主に羊の毛を刈る為に使用されていたという事で
という事は
もうその頃には羊毛産業とまではいかないにしろ
羊の毛を使った何かしらの物は作られていたという事になるのでしょうか。。。
日本に初めて伝わってきたのは6世紀の中国からという事らしく
当時の日本の本州では古墳時代〜飛鳥時代が始まったばかりの頃。
「古墳時代」などと聞くとその言葉の雰囲気だけでもかなり昔なのだなと分かりますよね。
ただ、
今日で使われる様になった形のハサミはそれまではあまり普及せず
現代の様に広く普及し始めたのは明治時代に入ってからだそう。
その普及を後押ししたのが明治時代に起きた「文明開化」と「廃刀令」。、
「文明開化」によって海外から色々な物資が輸入され
その中に洋服用の厚い生地(羅紗 らしゃ)や
それを切るための羅紗切り鋏も一緒に伝来する運びとなったそうです。
ただ、その当時使われたハサミというのは日本人には使いにくく
切れ味も納得いく物ではなかったそうです。
そこで「廃刀令」のため刀を作ることを辞めてしまった鍛冶屋さんが
その技術とノウハウを活かしてハサミ職人の道へと進まれたそうです。
日本人に使いやすい様、軽量化と切れ味を新たに加え改良に改良を重ね、
出来上がった物が現代のハサミの原型となりました。
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そんな日本独自の技術で生まれたハサミ。
その仕上がりには高度な技術が盛り込まれており
繊細でちょっぴり気難しい。
ハサミの構造で特徴的なのが
1ソリ(こごみ、おがみ)
2裏スキ(ひぞこ)
3ひねり
です。
その三つが精密に絡み合う事で見事な切れ味を約束します。
その精巧さは精密機械並みと言っても言い過ぎでは無いような。。。
ちょっとした扱いの間違いで二度と元の切れ味には戻らない事もある位、
繊細な道具だと思っています。
と言うのは。
実はサムネの画像のハサミ。
私物なのですが研ぎを間違えたやり方でかけてしまい
元の切れ味が無くなってしまいました。
ビックリするくらい、全くと言って良いほど切れなくなってしまった鋏。
元の切れ味を戻すには大幅な直しが必要との事。
勿論、自分では修復はできるはずも無く専門の業者に頼まなくてはならないのですが結構な金額になりそう。。。
ただ、無用の長物というのにはあまりにも可哀想で勿体無い。
なのでこのハサミは捨てずに今では紙切り用として使用してしております。
いずれ直しには出したいと思っています。
「仕事」として携わってからすぐに購入した思い出の品なので。
皆さん、自分のようにしくじらない様、もしハサミを研ぐ時には砥石に当てる前に一度誰かに相談か研ぎ方をネットなどでチェックすることをお勧めいたします。
一番はケチらず専門の方に頼むのがいいかなぁと。
では。