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【革】手縫いとミシン縫いの違い

革の縫製方法として、手縫いとミシン縫いがあります。


両方を経験してわかる、違い。
それは、「縫えること以外は全然違う」ということです。

手縫いから始まりミシン縫いに移行したわたしは、
正直、革のミシン縫いがこんなに難しいとは思っていませんでした。
まるで勝手が違うのです。

しかもわたしは、手縫いの達人の革鞄を実際に見、
学ばせてもらったので、その高いクオリティが
良い作品の基準になってしまっています。

一針一針時間をかけて手縫いしたハイクオリティ作品を、
ミシンで短時間で表現するなんて、とてもとても…(^^;

もう一度言います。まるで勝手が違うのです。。

手縫いは、ひと穴ひと穴開けて縫い進めます。
言ってしまえば、とてつもなく時間に余裕がある人(趣味でやっている人)が有利であり
そこそこの知識と技術があればある程度のクオリティのものはできてしまいます。

なので、初心者レベルから中級者レベルまでは
時間があれば結構容易に習得できると個人的には思います。

もちろんそこから、上級者レベル~達人までの壁が
ものすごく高いですが。

手縫いには不利な点があります。

ミシンに比べて縫うのが遅いんです!そりゃそうだ。

当然人件費がかかるため、価格に反映されてしまうのです。

達人であれば目をつぶってでも手際よく仕上げられるのでしょうが、
技術力が無いまま速く手を動かしてもクオリティは落ちます。

なので、製作スピードの速いミシン縫いに比べて
相対的に割高になってしまう手縫いの商品は、
いかに素早くハイクオリティに仕上げられるかという技術力と、
いかに付加価値をお客様に伝えられるかという宣伝力を、
より求められるのでしょう。

まぁでも、
どんな技法であれ素材であれ一長一短
好まれるお客様も人それぞれなので、
考えすぎずに
好きなモノコトをやりつづけたら、
共感してくれるかたがたに応援してもらえるんでしょうね。

しかしやっぱりあれですね…
わが子のような大切な作品…しかもわたし達の手を離れて
お客様のもとへいく…
手縫いミシン縫い関係なく、
時間をたくさんたくさんかけてあげたいです!
ものづくり好きなひとあるあるなのではないでしょうか。

わたしは手縫いから革細工の道に入りました。

手縫いは縫製に時間がとてもかかります。

ミシンで本格的に仕事を始めるまでは
「ミシン縫いなんて自動でスイスイと縫ってくれるんだからいいよね、
ちょちょいのちょいだね」と思っていました。

全然、全然そんなことありませんでした。

当然ですが、根本から違います。
手縫いは手で革を縫います。
ミシン縫いは、まず手でミシンを扱ったうえで、革を縫います。
脳から革までの距離が遠くなるのです。

さらに例えると、

あなたは一本道を進んでいます。
道を踏み外すと命はありません。
その道幅は狭く、しかもジグザグです。

1、歩いてゆっくり渡る
2、バイクに乗って速く渡る

どちらが簡単ですか?

乗り慣れているのであればバイクがいいでしょう。
早く仕事が出来ます。それがプロですから。
ただ、経験が浅いとそうはいきません。

生まれて何年も扱ってきた「身体」という道具で革を縫うことと、
初めて乗る工業用のミシンで革を縫うこと。
甘く考えていた分、戸惑いました。

しかもわたしは達人のハイクオリティな作品を目にしてしまっています。
そのレベルが基準になっているので、それを
ミシンを介して表現できるのかと…
難しいなんてレベルではありませんでした。
とにかく練習練習しました。

手縫いと違うミシン縫いの難しさはたくさんあります。

当然ですが、革は傷がついたらOUT!です。
手縫いならひと目ひと目穴を開けていきますが、
ミシンはハイスピードでダダダダと縫い進めます!
どれだけ気をつけていても、例えば、虫に驚いて
手元が狂えば…おじゃんです。。

あとはじめのころは糸調子の問題には悩まされました。
上糸と下糸の交わりが革の断面中心になるように気を遣うのですが、
そのバランスが悪くなる要因というのは、いくらでもあるのです。
そのたくさんの要因をひとつずつ検証して原因をみつける
という作業を何度も繰り返しました。
慣れたら「あ、あそこが問題かな?」と"あたり"をつけることが
できるようになります。

しかしまた個々のミシンでクセが違うので…
どれだけそのミシンと仲良くなっても、
別のミシンに乗り換えるとまたお付き合いは一からなので、
ある程度デートをしてクセを知ることが必要になります。

手縫いは一人作業!
ミシン縫いはミシンとの共同作業という感じですね!

どちらも一長一短ありますので、
一つの技法にこだわる必要はありません。
まずその作品で何を表現したいか、
そのためにはどちらの縫製方法が適しているかという考え方が作品ファーストなんだと思います。

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