見出し画像

煙草の話

わたしが初めて煙草を吸ったのは、生き別れの母の写真を初めて見た時だった。引越し作業で片付けていると仰々しいアルバムが出てきた。表紙に寿とある。
両親の結婚式のアルバムだった。
若すぎる2人が和装で緊張した顔をしている。
私はアルバムを閉じて祖父の煙草を1本盗み、
吸った。

なぜか分からない。18歳の時、なぜか無性に煙草を吸いたい口になった。粋がるとか悪いことをしたいとかではなく、なぜか口が求めた。
祖母いわく、母は私を妊娠中も煙草を吸っていたという。そのせいか。ミルキーはママの味、ならぬ煙草はママの味、か。

それからたまにこっそり煙草を吸った。
でも、ほんとたまに、月に一度ぐらい。
ここ数年はまったく吸っていなかった。

昨日、小さな商店街をブラブラしていると昔ながらの煙草屋さんを見つけた。
そこでチェ・ゲバラのライターとCAMELの茶色を買った。
久しぶりに吸った煙草は美味かった。
夜空を見上げて煙草を吸い込む、ああ煙草って吸うものではなく「のむ」もんだな、と美味くて思いっきり吸い込みすぎてケホケホ初めての煙草みたいになった。

煙草は1人で吸う。
家のベランダで吸う。初めての煙草もベランダだった。
喫煙所には入ったことがない、今度入ってみようかね。体を悪くしないよう、たまーにだけ煙草を吸うよ。
ぼんやりするために。

煙草の味はママの味。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?