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異世界考

言わずと知れた異世界ものだが、冒頭の主人公が轢かれるトラックに不思議な魔力があるのではないかと思ってならない。
となれば、それを運転するおじさんはきっとすべてを知っていて、故意に主人公を異世界へといざなったのであろう。
主人公を轢いたとき、おじさんは何を思うだろうか。
「頼む!君が希望だ」や、「クックック…計画通り」や、「頑張って行って来いよ」などのパターンが考えられる。
あるいは、おじさんはトラックの魔力について何も知らないのかも。
となれば、異世界から天使が舞い降りて、そこら辺の適当な車に魔法をかけている、という可能性も出てくる。
あなたの車、あなたの会社のトラック、もしかしたら「異世界転移用」かもしれない。それを理由にして、轢いたり轢かれたりしないように。

散々トラックについて書いてきたが、実はトラックに魔力はなく、普通に死後の世界が異世界になっているのかもしれない。
とすれば、それは宗教である。
私は、異世界はイスラム教やキリスト教で示されている「天国」とはまた違った「天国」なのではないかと考察している。
「死後に復活する」という共通点こそあるが、異世界ものには「エルフ」だったり「ドワーフ」だったりが出てくるせいで、神話をごちゃ混ぜにした世界観の新たな宗教になっている。
いわば宗教同士をクロスオーバーしたようなものだ。とうに著作権切れとはいえ、流石に神々は訴訟を起こさざるを得ないだろう。
しかし、相手は「日本のサブカル文化」であって、人間のような個が裁かれるわけではないので、かなり長期にわたる裁判になりそうだ。

現実世界で死んだあと異世界に飛ばされるのであれば、異世界で死ねば現実に帰れるのだろうか。
それを知ってしまった人は、他とは異なる死生観を持った人として注目されたり、崇められたりするのだろう。
あるいは、異世界で死ぬと異世界より異な世界、言うなれば「異異世界」に飛ばされるのだろうか。
その先で死ぬと異異異世界、またその先で死ぬと異異異異世界…と、世界がミルフィーユのように何枚にも折り重なって束になっている、というのを私は想像した。
つまり50回死ねば異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異世界に到着だ。
世界の中でも底辺層なので、ディストピアな世界観に違いない。
海は枯れ、地は裂け、爛れた木があたりを覆い尽くす中、ゴツゴツとした岩場の隙間を呆れるほど眩しい太陽の光が通り抜けてゆく。
太陽光は見てしまうと一瞬で白内障になってしまうほど強く、日に日にますます輝きを増してゆく。オラこんな異世界嫌だ。
101回死ねば異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異世界へたどり着く。
こうなってくるとおおよそ世界とは呼べなくなる。恐らく、宇宙空間のような背景の中に看板だけがぽつんと立ててある世界だ。
看板にはこう書かれているに違いない。

『100回目の世界までは作ったけど、ここからは制作中だよ!
 By 神様』

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