五つの短編2(七色のブーメラン/裸足/鬼太夫ススピッド/サーファー/新しいメンバー)
七色のブーメラン
赤、青、緑、黄、紫、橙、黄緑の7色が刻まれた虹色にしては可愛げのないブーメランだ。
このブーメランで97人が誤って首を切った。
そして今はジョーという5歳児の手元にある。
親が家の隅で、ドキドキしながら見ている。
一回投げた。無事、ジョーのもとへ戻ってきた。
もう一回投げたが、首が切れることはなかった。
辺りは緊張に包まれた。ジョーは何故か手が震えている。
親も手が震えている。家まで、震えているようだった。
これはただの地震としよう。
ジョーがもう一回投げたが、反対側から風が来、ジョーの首を軽々と切った。
ショックで歩けなくなった両親の首まで、ブーメランは切った。
その後、風とともにブーメランは弱々しく地面に落ち、灰になった。
灰と遺体を面白がって、3羽のからすがその上をだ円を描くようにぐるぐるといつまでも廻っていた。
裸足
彼はいつも裸足だ。外も裸足で歩いている。意味はない。
はじめは混乱していたが、だんだん、
「靴で歩くのと違いはあるが、歩くのは同じだ」
「あいつはいつも裸足だ」
という感じで、みんな慣れてきた。
ある日、彼は突然サンダルを履いて家から出てきた。
みんなが混乱した。みんながいつまでも彼の後を追った。
これが、「あいつはいつも裸足だ」と軽視する民たちに与えられた天罰だ。
鬼太夫ススピッド
監督ススピッドはいつも怒鳴ってばかりで、映画には見向きもしない。
今まで一度も映画を作ったことがない。
彼はわめき散らすのがライフワークなのだから。
サーファー
サーファーは海を滑ってばかりだ、海に飽きたサーファーは数知れず。
サーフといえばただ波に耐えるだけ。波の間をくぐって、ジャンプするだけ。
それの何が面白いのだろう。
だが今は、サーファーの大会までできている。
やはり、サーフは面白いのか。
新しいメンバー
このサークルにも今日、新しいメンバーが来た。名前はミセス・シンドラー。
確かにオスカー・シンドラーの面影は見られる。
だが、話し方、声、おまけに国籍まで違っていた。
面影だけでシンドラーと決めていいのか。
サークルのリーダーの私にもこれは分からない。