五つの短編3(ビー玉/車/扇風機/カーペット/紺色の塩)

ビー玉

それは地面を転がっている。やっと転がりを止めた。それはまるでガラスで出来ているようだった。そこに車が走ってきた。ガラス玉は粉々に砕け散った。
ビー玉も夢も壊された少年は、煙とともにコンクリートの壁に消えた。

何もかも壊すものである。轟々と音を立てて走り、木をなぎ倒す鉄の怪物である。
改めてこの私、中年男のプディーは、人間はおそろしいと、実感したのだった。

扇風機

何もかも捨てた者がいる。やることと言ったらただただ扇風機を回すだけ。
だが、扇風機は風を出すだけ。なので、その者は扇風機を友達だと思っているようだった。

カーペット

新しいカーペットが届いた。何故か少しうごめいている。踏むたびに違和感を感じる。だがその違和感が逆に気持ちいい。
カーペットの裏には誰もいない。これは真実だろうか?それともただの茶番劇なのか?
なあ、答えてくれよ。答えてくれたら答えてくれたで、俺の仕事も楽になる。
自動マッサージ機能搭載のカーペットを買ってしまっていたようだ。

紺色の塩

どんな物事も一応疑ってみるものだ。もしかしたら塩は紺色かもしれない。
…というひょんなことから、生まれたことわざが、「紺色の塩」
…だ。例えばこんな例がそのようなことである。
普通のサラリーマンが歩いているのをあなたは見ましたか?彼は泥棒かもしれない。いや、サラリーマンかもしれない。いや、どちらでもなく指名手配犯だったとしたら?ただただ街を歩くゴロツキか?
いや、ゴロツキではなく只の散歩だったとしたら…
ということが「紺色の塩」だ。
だが、それが違う意味のことわざかもしれないとしたら、それこそ「紺色の塩」なのではないか。

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