カラフルな世界が消えてしまうの?
末っ子君がユーチューブから流れてきたピアノ演奏版『パプリカ』に合わせてうたいだした。それはあくまでも自然で、自発的なものだから飾り気のない「おしゃべり」のようなうただ。発声練習やかっこよくうたうテクニックなど知らない歌声は、ピュアで疲れた時にもらったあめちゃんみたいに私の心にしみた。
それはじょじょに次女にもうつっていった。誰かにきかせようとするのではなく、ただ楽しいからうたう声には、照れも「よく見せたい」時特有の、甘みを含んだかん高さもない。ただただうたいリズムに合わせて自然に身体が動いていく。その空間だけは彼らの世界で、パプリカのカラフルな色に満ちていた。ああ、音楽ってこういうものだよね、って本来のすがたを見せてもらった気がした。
急いでカメラに手をのばした。
気づかれないように動画を撮るため「携帯をいじっている風」に装いながら。
でももう彼らはあきたみたい。うたうのをやめてしまった。
「え、待って。まだうたってよ!」といっても、もうあのカラフルな世界は色づかないだろう。
これだけSNSが発展しても本当に残したい一瞬は切り取れない。いとおしい瞬間は、自分の脳内にのこすしかない。どうか私の脳よ! 永遠に記憶できるスーパーハイスペックなメモリーを搭載しておくれ!
ひしひしと思い、いとおしさがこみあげてきた。
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