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16.スイヘイの法則

コウジは心穏やかに、まるでナギであるかの如く冷静に目的地に到達していた。
それは、操り人形の糸が切れて自由を得た様なスッキリしたものでもあり、葛藤など侵入してくる余地もない世界。
生まれ変わるには充分だったのである。
 愛や尊敬の念が消滅すると自身の感情のままの思考が支配する。
 1年半前に会った時のタエの言葉は天秤の傾きによる違いをオブラートに包むかの如く提示したものだったが、利益至上の利己主義であることは明白だった。
それは、23年間の長い月日を考えると矛盾のシューに包まれたバタークリームだった。
食べたい時に、欲しい時に食べられる甘いお菓子宣言だったのである。
それは、自己都合による単純なラベル貼り替えのようなもの。
消費者は騙されない。
しかし、委託された販売業者は簡単に騙されるのである。
権力に守られた業者は天下無敵なのである。
強かな筋書は三國殿の印籠。
絶対服従、勧善懲悪、カラクリなんて無関係なのである。
賞味期限のラベルをこっそり裏の厨房で貼り替える。
消費者は蔑ろにされる。
伝家の宝刀として個人の利益を求めるだけの利益主義を成し遂げるのである。
消費者への裏切りが、信用信頼を失墜し、後に企業の存続自体が危ぶまれる結果となる。
敵対心だけになった水平の法則を手に入れたコウジは、愛情も無ければ、葛藤もない。
情も恩も生じない、タエと同じ様に釣り合いの取れたスイヘイの法則へ導かれたのである。
冷酷、非情な同じ武器を手に入れたのである。
レスの穴埋めのための道具として利用され、賞味期限が切れたら廃棄されただけのことを気付かないお人好し。

まさに、オロカモノだったのである。

時間とともに、スイヘイの法則と微笑みの法則を身に着け、今で言うブレナイオロカモノになっていくのである。



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