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8月22日/得点が入るのはどの瞬間?

  今回はちょっと哲学チックな話から始めたいと思います。
 
 例えば、大谷翔平選手が特大のホームラン(ランナー無し)を打ったとします。当然チームには1点が入る訳ですが、ではこの得点はどの瞬間に入ったと貴方は考えますか?
 
 野球の正式なルールで言うと、ホームランで得点が入る正式なタイミングは打った後にベースを1周してホームベースを踏んだ瞬間です。逆に言うと、もしホームランを打ったとしてもベースを踏み忘れてしまえば得点は入りません。なので得点が入るのは「ホームベースを踏んだ瞬間」が正解です。
 
 しかし、現実としてホームランを打った打者がベースを踏み忘れるなんて事はまずありません。そんな珍プレーは数年…あるいは数十年に1度でしょう。大谷選手もベースを踏み忘れてホームラン取り消しなどという失態は引退するまで1度も犯さないと思われます。ファンもそれを分かっているので、まだホームベースを踏む前…つまり大谷選手がゆうゆうとベースをまわっている時点で喜びの拍手を送ります。となると、ルール上は得点が入るのはホームベースを踏んだ瞬間ですが、現実的な話としては打球がスタンドインした瞬間に得点は入ったとも言えます。ホームベースを踏むのはあくまで手続きに過ぎず、踏み忘れる可能性など事実上0%なのですから。
 
 この考えをもっと突き詰めると、得点が入ったのは実はもっと前のタイミングだったと言う事もできるかもしれません。つまり大谷選手がスイングして打球を高々と打ち上げた瞬間に1点が入ることは事実上確定した、とも言えそうです。何せボールを打てば後は物理法則に従って飛ぶだけなので、着弾点は打った瞬間に確定している筈です。実際に大谷選手も、打った瞬間に得点を確信してよく「確信歩き」しています。
 
 もっと前のタイミングと言う人もいるかもしれません。例えば投手がボールを投げて大谷選手がスイングを開始した瞬間、この瞬間からボールやスイングの軌道は決まっており、ホームランとなるのは確定していたと言う人もいるかもしれません。あるいはもしかしたら「今日は大谷選手の調子が良くて相手投手の調子が悪いから、ホームランを打つことは試合前から決まっていた」だとか、中には「大谷選手がメジャーリーグでホームランを量産する事は、彼が中学生の頃から確定した未来だった。今日のホームランはその1本であり、数十年前から決まっていた必然の1つに過ぎない」と言う人もいるかもしれません。まあここまで来るとあまりに宗教的というか運命論すぎますが、しかし得点が入るのはホームベースを踏んだ瞬間であるというのはあくまでルール上の話で、現実問題としてはそれよりもかなり前の段階で得点は事実上入っていた、と言える事は間違いないでしょう。
 
 
 という長い前置きを経て、ここからが本題です。
 今回私が何を言いたいかと言うと、大谷選手がホームランを打ってゆうゆうとベースをまわっている…このタイミングの株を買うべきだ、という事です。
 
 例えば、私が昨年買った株の1つに7299フジオーゼックスという銘柄があります。同銘柄は昨年、配当性向30%を明言し期首時点ではそれに基づいた配当予定を発表していました。そして1Q決算で大上方修正を発表、しかしこの時点で増配は発表しませんでした。
 
 これはまさに先ほどの例の、「ホームランを打ってベースをまわっている」状況と同じと言えます。というのも配当性向が決まっているという事は配当は利益額に完全連動する筈なので、上方修正がなされればその分だけ増配されなければおかしいのです。実際にフジオーゼックスは2Q決算時に、1Q決算の上方修正分に合わせる形で増配を発表。つまり1Q決算でホームランを打ち、2Q決算でホームベースを踏んだという訳です。この「確定していた増配」のよって一気に高配当化したフジオーゼックスはその後株価急上昇、半年で2倍以上の株価になり私自身にとってもこの1年間で最も利益を得られた大成功銘柄となりました。
 
 今回の決算チェックで上位評価した銘柄で言うと、実は4114日本触媒がまさに昨年のフジオーゼックスと同じ状況です。日本触媒は28年3月期までの配当性向100%を明言しており、今回の1Q決算で大きな上方修正を発表しました。なので本来なら増配も併せて発表されなければおかしいのですが、現時点で増配は発表されていません。現時点で今期配当予定は70円となっていますが、計算上は27円の増配が「確定」している状態です。実際、来月発表される四季報秋号では日本触媒の今期予想配当はおそらく「97円」と記載される筈です。
 
 つまり日本触媒は「ホームランを打って今はベースをまわっている状態」であり、もうすぐホームベースを踏んで27円の増配が発表されることが事実上決まっています(会社が配当性向100%を守る事が大前提ですが)。なので日本触媒は本来なら激アツ…なのですが、しかし言うまでもなく株価を決めるのは配当だけではありません。日本触媒は配当面を見ると今後の増配はまず確実ですが、業績面においては為替という懸念点を抱えています。というのも日本触媒は今回の決算で想定レートを1ドル155円・1ユーロ166円に上げてしまいました。私の調べではドルに関してはそこまで大きく業績に影響しないという情報もあるのですが、しかしユーロに関してはやはり円高はマイナス要因のようです。残念ながら為替が今後1ドル155円や1ユーロ166円まで円安に戻るとは考えづらく、次回決算では円高による利益圧縮が現出する可能性が否定できません。それが日本触媒の評価を難しくてさせている理由です。
 なので日本触媒に関しては、為替がまだ1ドル160円とか150円台後半にいてくれれば紛れもなくAA評価でした。本当に岸田植田(+河野茂木)が要らん事をしてくれたなと心から思います。
 
 という訳で日本触媒の紹介でしたが、今回の記事で最も伝えたかったのは「ホームランを打ってベースをまわっている状態の株が狙い目だ」という事です。ホームベースを踏み忘れるという大アクシデントが無い限り得点が入る訳ですから、こんなに旨味のある状況はありません。しかし、多くの人はこの「得点確実」という状況をスルーし、「将来の大谷翔平」を探すべく中学生や高校生の中から銘柄探しをしています。そうして優良銘柄を掘り当てられた時は喜びも大きいですし何より取れる利益も大きいですが、しかしそのやり方は不確実性が大きいのは言うまでもありません。得点の瞬間が近ければ近いほどローリスクで旨味のある株に出会える、私が決算チェックで探しているのはそういう株なのです。
 
 しかし、「ホームランを打って大谷選手がベースをまわっている途中」というような株はさすがにそう簡単には見つかりません。配当性向が決まっている以上、通常は上方修正されれば増配も同時に発表されてしまうからです。ただ、「ベースをまわっている途中」の銘柄はなかなか見つからなくても、「まさに打球が高々と飛んでいる」銘柄や「甘い球が投じられて大谷選手がスイングを開始した」というような状況の銘柄は結構落ちていたりします。明日はそういうタイプの銘柄について書く予定です。

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