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9月21日/金利の話とか

 今週は日米で金融政策決定会合があり、「金利」というものに注目が集まりました。旧ブログでも金利に関しては繰り返し書いてきましたが、今回も改めてちょこっとだけ書いておきたいと思います。
 
 ヤフコメなどを見ていると「金利はある程度高い方がいい」「金利が最低でも2~3%ぐらいあるのが正常」というコメントが本当に多く見られ、しかもそれらのコメントに「そう思う」が大量についていたりします。挙げ句の果てには「日本が不景気なのは低金利のせい」「金利を上げないのはアベノミクスの間違いを認められないプライドの問題だ」といったような主張も本当に多く見られます。
 
 それらのコメントはほとんど全部大間違いなのですが(何せ安倍が総理大臣になるずっとずっと前から日本はゼロ金利でした)、なぜこんな出鱈目な主張が堂々とはびこっているのかというと、ひとえに「金利を上げれば景気が良くなる」という誤った認識が蔓延してしまっているからに尽きます。
 
 確かに、景気がいい時は金利も高いのが普通です。昭和以前の日本がまさにそうですし、最近の米国も金利は高く景気は好調です。だから「高金利=好景気」という方程式が出来上がってしまうのは分からなくも無いのですが…しかしその思い込みは、高金利と好景気の順序が決定的に間違っています。昭和の日本にしても現在の米国にしても、「金利を上げたから好景気になった」のではなく「好景気になったから金利を上げた」のです。決して高金利が好景気をもたらした訳ではありません。
 この点は本当に重要です。金利を上げるのは「意図的に景気を悪くするため」であり、景気が良すぎるのを放置しているといずれバブルになってそれが崩壊したら大惨事になるので、そういった事態を未然に防ぐために金利を上げてわざと景気を悪くしているのです。
 
 こんな例えを考えてみました。誰でも夏は薄着になり、逆に冬は厚着になるでしょう。夏の街は薄着の人だらけで、冬の街は厚着の人だらけです。この光景だけを見ると「薄着=気温が高い」「厚着=気温が低い」という方程式が成り立ちます。なので冬に寒くて寒くて仕方のない人が「そうだ、薄着=気温が高い筈だ!だから上着を脱げば気温が上がるに違いない!」と言って薄着になればどうなるでしょうか?当然気温が上がる訳もなく、ただ服を脱いだ本人が風邪をひくだけです。「薄着だから気温が高い」のではなく「気温が高いから薄着になっている」のです。金利も同じで、「好景気だから金利を上げている」のですが、この点を正しく理解していない人が本当に多いです。
 
 冒頭で紹介した「金利はある程度高い方がいい」というのはあながち間違いではありません。何故なら「金利がある程度高い」状況というのは即ち「ある程度景気がいい」状況に他ならないからです。しかし不景気なのに「ある程度金利が高い方がいいんだ!」と言って金利を上げれば、もっと景気が悪くなって地獄見るだけです。事実、平成前期~中期までの日本がそうでした。当時の日本は大して景気が良くないのに拙速な利上げや金融引き締めを繰り返した結果、不景気が深刻化して物価も賃金も全く上がらない国になってしまいました。
 
 そして今の日本は、当時と同じ失敗を繰り返そうとしているように私には見えます。植田日銀総裁は利上げを「金融正常化」と言い換え、景気そっちのけで利上げに邁進しています。しかし今の日本が好景気だと認識している日本人が一体どれだけいるでしょうか?私の周りには一人もいません。また次期総理大臣の有力候補の中にも利上げを金融正常化と言い切り、利上げを主張している経済音痴が複数います(というか現総理大臣もそうです)。自民党総裁選の結果次第ではこの秋から政治と日銀の「利上げコンボ」が始まる可能性もあり、大いに注意しなければなりません。

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