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照ノ富士、現役引退に思う
大相撲の第73代横綱・照ノ富士(33)が現役引退するとの報道をみた。
両国国技館で行われている初場所(1月場所)で、照ノ富士は4日目の1月15日に2敗目を喫して2勝2敗となると、右膝と腰の痛みで5日目(1月16日)から途中休場し、3場所連続の休場となっていた。
また休場かー
そう思っていたが、まさか休場を決めた翌日には現役引退するとの決断をするとは……
インターネットサイトのニュース記事によると、
照ノ富士は「今場所は自分の中でやれることをやって、ダメだったらという思い」と悲壮な覚悟で臨んでいた。
との記載があり、照ノ富士は場所前から進退をかけて臨む強い決意を持っていたのだと思う。
朝青龍以降、モンゴル出身力士が台頭し、正直「日本人もっとがんばれ!」と思っていた。
日本人力士(国籍が日本という意味ではない)と外国出身力士が対戦する際は、パトリオティズムではないが、よく日本人力士を応援していたものだ。
しかし、照ノ富士は違った。
モンゴル出身力士だが、色眼鏡なく自然と応援できた。
それは、満身創痍からの復活劇と醸し出す雰囲気に好感を持ったからである。
照ノ富士は2011年5月の技量審査場所で初土俵を踏み、初の幕内優勝を果たした15年夏場所後には大関に昇進。
初の幕内優勝と大関昇進後は、両膝のけがや糖尿病などに苦しみ、18年名古屋場所から4場所連続の全休なども経て序二段まで転落した。
普通なら大関経験者が幕下以下に落ちると諦めてしまうと思う。
しかし、照ノ富士は不屈の闘志でこの逆境をはねのけた。
なんと、序二段転落後わずか所要5場所で関取に復帰すると、再入幕を果たした20年7月場所で2度目の優勝を果たしたのだ。21年春場所で3度目の優勝を飾り、場所後に大関再昇進が決定。
さらに勢いはとどまることを知らず、大関での2場所後(21年名古屋場所後)に横綱昇進が決まった。新横綱からの連覇も達成する。
大関→序二段→大関(復活)→横綱(昇進)と以前の輝きを取り戻すだけでなく、さらなる高みに登ったのだ。
この逆境から立ち上がり、乗り越える姿は多くの人の共感を得たと思う。
苦しい経験をしている人や、今困難にさらされている人は沢山いらっしゃると思う。
月並みな表現だが、照ノ富士はそんな人達に勇気を与えた。
最終的には以前の自分を乗り越え、最高位にまで上り詰める姿は、
「人生は諦めず、努力すれば必ず好転する。」
そのことを証明してくれたと言えるのではないだろうか。
また、照ノ富士と直接挨拶や会話をした事はもちろん無く、私の単なるイメージでしかないのだが、照ノ富士の朴訥とした雰囲気が好きだった。
それまでのモンゴル人力士といえば、朝青龍をはじめ気の強そうな印象があって、あまり良いイメージがなかった。
特に取り組み前の土俵上での睨み合い(朝青龍は基本的に自分の方から目を逸らさなかった)には、なんだか癪に触った笑
最初は言葉も通じない異国の地で生活するのは、想像を超える大変さがあると思うし、ましてや勝負の世界にいる訳だから、気が強くなるのはもっともだと思う。
しかし、和を以て貴しとなす日本人精神の当方からすれば好戦的な感じが好ましくなかったわけだ。
しかし、照ノ富士からは、そんな印象は全く受けなかった。
ましてや、2年程前の地方巡業の時に生で見た際には、その大きさから来る迫力の中に、威厳や柔和な印象を受けた。
現役引退した後は親方業を行うそうだが、今後の活躍にも期待したい。
とりあえず今は、照の富士、お疲れ様でした。
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