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桜咲く街でもう一度君と#2


目の前で誰かが走っている。

頑張って追いつこうとするも途中で転けてしまう。

するとその子は笑いながらこっちに近づいて手を差し伸べた。

??:大丈夫?

そう言われたから手を掴んで立ち上がった。

大丈夫だよって言うとその子は…

??:ーーー早く行こっ!!

と言った…






知らない天井だ。

意識がはっきりしない状況でそう認識した。

それもそう引っ越してきたのだから。

◯◯:まだ7時か…

時計を見ると登校までまだ1時間弱ある。

学校は8時半からのためちょうどいい時間帯なのだが、僕の家からは歩いて20分はかかる。

◯◯:とりあえず起きよ…

ベッドから出て自分の部屋を出る。

珍しく一軒家を買ったため僕の部屋は二階にある。

階段を下り、一階のリビングにいる母親に声をかける。

◯◯:おはよう

冬華:ん?おはよう!先に顔洗ってきなさい

冬華:ご飯食べるでしょ?

◯◯:うん

返事をした後、洗面台に行く。

顔を洗った後もう一度母親の元に戻り、椅子に腰をかける。

テーブルの上には朝食が並べられていく。

今日は定番の食パンとスクランブルエッグ。

それを食べていると母親が話しかけてくる。

冬華:今日から新しい学校だけど楽しみ?

◯◯:特に

◯◯:いつも通りだよ

冬華:つれないな〜

冬華:彼女の1人でも作りますっ!

冬華:って宣言しなさいよ笑

◯◯:母親にそれ言う馬鹿いないでしょ

冬華:そうかな〜

冬華:お母さんね高校生の時にお父さんに会っているのよ?

冬華:お父さん私より1つ歳下で

冬華:ずっと面倒見てる内に好きになっちゃった!!

◯◯:朝から親の惚気話とか…

そんな会話をしていると付けっぱなしのテレビからある宣伝が始まった。

アナウンサー:本日紹介するのは!!

アナウンサー:大人気の作家さん!!

アナウンサー:スノーフラワーさんの新作です!!

朝から元気いっぱいにそのアナウンサーは絵本の紹介をしていた。

ちなみにスノーフラワーとは今僕の目の前でうざいドヤ顔をしている母親だ。

冬だからスノー、華だからフラワーというあまりに捻りのない名前を付けたのである。

冬華:◯◯?言いたいことあるなら言いなさい

◯◯:…朝ごはん美味しいね

こういう時だけ察しがいい。

面倒だ。

冬華:でも良かったわね〜

◯◯:何が?

冬華:村井ちゃんだっけ?

冬華:あんなに可愛い子と同じクラスになれて笑

村井優さん。

昨日母親と共に書類を渡しに学校に行った際、職員室で出会った子。

元気そうな見た目の子だった。

でも僕を見た時一瞬固まったのはなんだったんだろう?

まぁ話す機会があれば聞いてみよう。

冬華:ああいう子と付き合って欲しいわね〜

◯◯:あれだけ可愛かったら彼氏くらいいるよ

冬華:何言ってるの!!

冬華:それを奪うのが男でしょうが!!

◯◯:…お願いだから

◯◯:これ以上面倒な理由で転校させないで

あなたの仕事に付き合ってあげてるこっちの身にもなって欲しい。

なんて言えるはずもなく朝食を食べ終わり学校に行く支度をするのだった…





冬華:学校に着いたら忘れずに職員室に行ってね

◯◯:分かってるよ

◯◯:昨日直接先生から聞いたんだから

家の玄関で靴を履いている間にそんな会話をした後。

◯◯:じゃあ行ってくるね

冬華:うん!行ってらっしゃい!

玄関のドアを開け外に出る。

一応9月なのだが、まだ少し暑い。

学校の方向に向かって歩き出すと何かの視線を感じた。

振り返ってみたものの当然誰もいなかった。

学校に向かうために再度歩き出すと目の前に1匹の小さい白猫がいた。

その白猫は宝石のような透き通った目で僕を見ていた。

僕が少し近づこうとするとその白猫は建物の中に消えていった。

野良猫かな…

そう思い僕は歩き出した。





息子が家を出た後、私は携帯を取りにリビングに戻る。

そしてある人物にメールをした。

冬華L:今日から息子があなたのいる学校に通います

冬華L:何か困っていたら助けてあげてね

冬華L:頼んだよ

??L:分かってる

??L:出来る限りの事はします

相手の返信を見た後、私は家事に戻った。







しばらく歩くと学校に着いた。

正門を通りその足で職員室に向かう。

そこはお城もしくは要塞と言うほどの建物だった。

私立櫻高等学校。

中高一貫校でその生徒数は4000人にも及ぶらしい。

元々この街で唯一の学校のため注目はされていた。

しかし、それ以上にこの学校は話題性という点においては他の追随を許さない。

まず、桜月市には学校は2校しかない。

この街のほとんどの人はこの学校に入っている。

街の中心部にこの学校を建てているため、多方面のアクセスが可能だからだ。

何より市全体がこの学校の支援を行っているためでもあるのだが。

もう1つは、この学校の理事長。

小田倉麻美(おだくらあさみ)の存在。

彼女は元・女優でドラマや映画に数多く出演していた。

だがある時、この学校の理事長をしていた彼女の祖父に訃報が入った。

その時彼女は突如芸能界を辞め、この学校の
理事長を引き継いだ。

何故なのかは未だ語られていないが、彼女が理事長になったあとは凄まじかった。

教育システムの見直し、学生がより良い環境で生活出来る支援。

それまでなかった学生寮や中高の運動部に配慮したトレーニング施設。

今のプロスポーツ選手はほとんどがこの学校の卒業生だ。

スポーツだけじゃない。

勉学においても高い評価を受けている。

政治家や弁護士を数多く輩出しており、国においても多大な影響を与えている。

授業は常に最先端技術を使いながら、全生徒の近況を教師が常に管理し、その生徒にあった勉強方法で指導していく。

だからここは俗に言うエリート校なのだ。

それだけでもすごいのに彼女は自身の資金で隣に大学を建てた。

その大学もハイレベルで、都会にある国立校に引けを取らない。

そんな学校なのだが、何故僕が入れたかと言うと…

この学校の理事長と僕の父親が昔に面識があるらしい。

つまりコネだ。

今何をしているのかは知らないがどこかで元気にやっているのだろう。

そんな事を思いながら歩いていると下駄箱に着いた。

昨日母親と来ていなかったら迷子になっていただろう。

それくらいこの学校は無駄に広い。

昨日と同じルートで職員室に向かう。

少し歩くと職員室に着いた。

職員室のドアを軽く叩き、ドアを開ける。

◯◯:おはようございます

◯◯:今日より転校してきました

◯◯:犬塚◯◯です

◯◯:米田先生いらっしゃいますか?

僕は礼儀正しくそう言うと昨日と同じ場所から担任がこっちに来た。

米田:おはようっ!!

米田:迷ったりしなかったか?

◯◯:まぁ昨日も来ていますから

米田:そうか

米田:それは良かった

米田:もう少しで準備出来るから待っててくれ

◯◯:分かりました

その後、数分待ち担任と一緒に僕が通うクラスに向かった。







遠い。

流石に遠すぎるだろ。

学校内だと言うのに職員室から教室までなかなかの距離を歩かされている。

この生活を続けていくのか…

中々ハードかもしれない。

そんなこんなで教室に着いた。

先に担任が入り、少し生徒達と話していると僕が呼ばれた。

米田:入ってきていいぞ!!

そう言われ僕は教室のドアを開けた。

担任の隣まで歩いていき体をクラスメイトの方に向けた。

◯◯:犬塚◯◯です

◯◯:変な時期での転校ですが

◯◯:これからよろしくお願いします

僕が挨拶をするとクラスメイトからは拍手で迎えられる。

米田:◯◯の席はそうだな〜

米田:柴崎!お前の隣でいいか?

教室のちょうど真ん中の列の1番後ろに座ってる生徒に確認をとる。

大丈夫っすよ〜って返事が返ってくると僕はその左隣に置いてある席に向かう。

席に着くとカバンを置き椅子に座る。

左側を見ると窓際に座っている一人の女子生徒がいる。

昨日の村井さんと同じくらい可愛い見た目の人だ。

その後、朝のホームルームが終わると前の席と右隣の男子生徒から声をかけられる。

??:また変なタイミングで来たな〜笑

柴崎?:何かやらかしたの?笑

初対面相手にどんな質問だよ。

そう思いつつ返事をする。

◯◯:親の都合だよ

??:そうか〜大変だな〜

前の席の彼はそう言うと手を差し伸べてきた。

竜也:俺、大狼竜也(おおがみたつや)

竜也:竜也でいいぜ!よろしくな!

自己紹介されたあと彼と握手をした。

牛島:そんで俺が…

牛島:柴崎・ジェームズ・牛島だ!

右隣の彼は名前を言ったあと、グータッチを求めてきた。

中々パンチの効いた名前だな…行動といい。

僕は彼のグータッチに応じる。

◯◯:あ、あぁよろしく

牛島:何か聞きたいことあるか?笑

◯◯:そうだな…

◯◯:とりあえず、日本語以外話せる?

牛島:全く無理だっ!!

なるほど…キャラが濃すぎる。

竜也の方は首にヘッドホンをかけているチャラい感じの生徒だ。

対して牛島の方は見た目は色黒でどう見てもアフリカ系のハーフなのだが日本語しか話せない。

そして、2人共見事に陽キャだ。

これは先が思いやられるな…

転校初日からそう思う僕だった。






その日は普通に過ごした。

教科書などは前もって送られていたから特に借りるような事もなかった。

改めてすごい学校だなと思った。

授業スピードはものすごく速い。

初日である今日はついて行くので精一杯だった。

竜也:どうだったよ?大変だろ?

◯◯:これ毎日やってたのかよ…

竜也:俺は中学からな笑

竜也:牛島は高校からだけどな

牛島:最初はしんどかったが慣れてきたら楽だぞ

◯◯:まじかよ…

訂正する。

こいつら化け物だったわ。

竜也:どっか寄って行かね?

竜也:親睦も含めて

◯◯:あ、悪い

◯◯:職員室にまた行かなきゃいけなくて

牛島:着いていこうか?

◯◯:いや、場所とか覚えたいし一人で行くよ

竜也:じゃあ連絡先だけ交換しとこうぜ

そうして僕は2人と連絡先を交換した。

教室を出た所で2人と分かれた。

職員室に向かって歩いていると後ろから声をかけられた。

??:◯◯くん!!

聞こえた方に振り返るとそこには昨日会った村井さんがいた。

優:◯◯くん!!今から帰るの?

◯◯:いや、職員室に寄ってから

僕がそう言うと目線を少し下に落として。

優:じゃあ…待ってるから

優:少しだけお話ししない?

◯◯:えっと…なんで?

それもそうだ。

昨日職員室でたまたま会っただけのやつと話したい。

まるで意味がわからない。

優:えっと…私が話したいからっ!!

返しも意味不明だった。

特に断る理由もないため僕は渋々了承した。

◯◯:分かった…

◯◯:じゃあ、下駄箱の所で待っててくれる?

優:うん!!待ってるね!!

満面の笑みで彼女は下駄箱の方へ走って行った。

◯◯:もしかして…

◯◯:変な子だったりするのかな…

思いもよらぬ角度から不安がよぎった。

少し唖然としながらも職員室に向かった。






転校生が来る。

そう先生が言うとクラスは沸いた。

そして、その生徒は先生に呼ばれ教室に入った。

その人を見て私はびっくりした。

その人は昔会ったことのある人に似てたから。

◯◯:犬塚◯◯です

やっぱり…◯◯だったんだ…


続く



あとがき

お読みいただきありがとうございました!
メロンパンです!
今回長くてすみません笑
とりあえずこれで物語の説明回は一旦終わりなので次回からは普通に物語書いていきます
これからも長くなりそうなので
時間がある時にでもゆっくり見てください
また感想とか待ってます!
ありがとうございました!

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