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妄想オタクは死神に語る 11
『好きな人×テロリスト』
蓮加:ねぇ、起きてよ…〇〇くん…
〇〇:……
蓮加:嫌だよ、そんなのやだよ!早く起きてよ!
〇〇:……
蓮加:ねぇ!〇〇くん!!
……
〇〇:はぁ〜……今日もつまんないなぁ〜…
窓際の席で頬杖をつきながら、窓の外に映る何の変哲もない景色を眺め〇〇は呟いた。
空の中に〇〇は壮大な想いを巡らせる。
〇〇:今日も空には何の変哲もなくペンギンが空を飛ぶぅ〜…
まるで生きる屍のような瞳で〇〇は空を飛ぶペンギンたちの群れの行く末を眺める。
〇〇:自動車もついには空を飛び〜
何年も前からある空を飛ぶ車に目をとどめる。
〇〇:そして今や人間は進化をするぅ〜
支柱が崩れ、倒れそうになった電柱を下敷きになりそうになった人間が鍛え上げた右手一本で止めた。
〇〇:しまいにはドラゴンが空を闊歩するる〜
雲を掻き分け、巨大な蛇が空を縦横無尽に駆け回る。
〇〇:今度は宇宙船でも攻めてこないかな〜…
目の前に広がる"当たり前"や"常識"と呼ばれる現実を退屈と痛感しながら〇〇は"妄言"を我儘に吐き散らす。
〇〇:それかテロ…
生徒:キャ、キャー!!
担任:あ、がっ…
異常に近い爆発音が鳴り響き、それに呼応するように何かが弾けるような音が聞こえた。
そして3秒後、1人の女子生徒が赤い液体に染まった担任教師の姿見を見て、大声を上げた。
〇〇:あ、い、今、な、なにが……あった?
教卓のすぐ後ろで頭から倒れた教師を眺めていると、視界の端から現れた3人の黒をベースとした格好をする男達が教室内に侵入した。
生徒:な、なにが起きてるの……?
生徒:せ、先生が……先生が!!
生徒:やばい、これ……俺達……死っ
テロ1:うるせぇっ!お前らころっすぞっ!!
教室で状況を飲み込めない少年少女達の声に苛立ちを覚えたのか、黒い男の1人は左手に持った拳銃を天井に打ち上げ怒鳴り声をあげた。
教室内にいる38人の少年少女は、銃に怯えたり、涙を流したり、17年間生き続けた人生を諦めた者など、多くの人間がいた。
しかし、1人の人間はヒーローを夢見ていた。
〇〇:っ……やっべぇ
テロ1:ふっ、やっと黙ったか……クソガキ共が
怯える事で話す事をやめた子供達を見下し、発砲を行った男は言った。
テロ2:おいおい……ビビらせすぎだぜ?ボスよ
テロ1:るっせぇぞ、それよりとっととこいつら縛り上げんぞ
テロ2:あいよ、やってやりますか
2人のテロリストは目を合わせ、片方はロープを取り出し、もう片方は怯える子供達の頭に銃口を突きつけ言いなりになるように命じる。
そして効率よく1人ずつを縛り上げていく。
テロ1:へぇ〜、高校生も悪くないじゃん笑
遥香:ひゃっ!な、何ですか?!
男は、遥香の両腕を縛り上げたあと、束ねた髪の毛を持ち上げ匂いを嗅いだ。
テロ1:い〜や?目的達成までの間……遊んでもらおうかと思ってきてさぁ〜
笑いながら男は自身の下半身を触る。
テロ2:じゃあ俺はこっちの子かなぁ!!
さくら:や、い、嫌……
銃口をさくらに突き付け、男は悦に浸る。
テロ2:はぁはぁ……たまんねぇっ!こんな面の良い女が俺みたいな奴の一挙手一投足に怯えてるなんて!!
次第に荒くなる吐息を浴びたさくらの目は、普段の優しい目と一変し、男を睨みつけた。
さくら:あ?あんま調子乗ってんじゃねぇぞ、お前らなんか所詮あいつの妄…
蓮加:ねぇ!あなた達の目的は一体なんなの?!
未だ拘束される順番ではないはずの蓮加は、我慢の限界を迎え、立ち上がりそう言った。
蓮加:こんな事してあなた達は…きゃっ!
テロ1:うるっせぇぞクソガキがっ!!
男の怒号と同時に発砲された弾丸は、蓮加の頬をかすめた後、壁に激突する。
テロ1:あんまイキってると殺すぞ!!
正義感ゆえに、委員長を務める蓮加の正義は、銃に怯えることはなかった。
しかし、頬を掠めた死の質感と男の怒号により簡単に萎縮してしまった。
蓮加:も、目的は…一体…
しかし、委員長として、蓮加は怯むことなく、彼らに同じ問いを繰り返す。
テロ1:はぁ?目的ィ?そんなもんねぇよ!
テロ1:俺が!本能のままにこうするべきだと思ったんだよ!テロリストを全うしろ!って言ってんだよ!だから…
テロ1:俺は本能に従うんだよ!!
曖昧な理由と傲慢な本能を語った男は、高笑いを見せた後、蓮加に再度銃口を向けた。
テロ1:2人目の犠牲者はお前だな、偽善者……今すぐ殺して…あがっ…
〇〇:次はお前だよ
男が持っていた凶悪な物は、地面へと転がる。
そしてその銃を拾い上げたのは、テロリストの死角から突然現れた〇〇だった。
テロ1:がっ、がは…な、なんだよコレ……
的確に顎を殴られたテロリストは、揺れる視界と思考の中、立ちあがる事ができず、困惑を余儀なくされずにいた。
テロ2:何やってんだよ!ガキが!
さくらにつききっきりだった男は一連の抵抗を前に、腰に備え付けた拳銃を〇〇に向け発砲した。
〇〇:っぶな!
しかし間一髪、〇〇は首を右に曲げ、勢いのついた弾丸をかわす。
そして弾丸を避けると同時に走り出し、〇〇は一気にテロリストの元へと距離を詰める。
テロ2:よ、避けた?!偶然だろ!死ね!!
人間業とは思えない〇〇の回避行動に恐れをなしたテロリストはさらに弾丸を放つ。
だが、その弾が〇〇に被弾する事はなかった。
姿勢を低く走り、周りに散らばった机を盾にし、その影を抜け出し、〇〇は飛び立った。
〇〇:お前らなんかに……殺されるかよっ!!
大きくジャンプし、そのまま着地すると同時に〇〇の両脚がテロリストに命中。
テロ2:がっ、かはっ……
〇〇:大丈夫?蓮加ちゃん……
飛び蹴りを繰り出し、銃を持つテロリストが地に伏せた姿に目もくれず、〇〇は蓮加の前に立ち言った。
蓮加:〇〇くん……
遥香:嘘じゃん……〇〇が……
あやめ:テロリストを……倒しちゃった?
さくら:……
突如授業中、何が目的だったのか、そもそもどこから現れたのかすら分からないテロリスト達は、数分のあっという間に〇〇に成敗された。
女6:す、すごい!〇〇くんすごい!!
女7:ね、ねぇ!みた?さっきの〇〇くん!銃弾をかわしながら敵に近づいて1発で倒したよ!すごいかっこいい…
男6:〇〇すげぇ、あいつめちゃくちゃ強いじゃん…しかもかっけぇ…
男3:めちゃくちゃかっこよかったな…
クラス全員が〇〇の咄嗟に起こした行動に、見惚れ、感動する中、1人の少女は涙を流す。
蓮加:〇〇くん……〇〇くん……
蓮加:わ、私……怖かったよ……
テロリストの前でも屈する事なく、銃口を向けられても動じなかった少女は、涙を流しながら〇〇を抱きしめた。
〇〇:蓮加ちゃん……
蓮加:うぅ……
普段の彼女とは全く違う姿を見せ、蓮加は〇〇を強く抱きしめる。
〇〇:よく頑張ったな、蓮加ちゃん…
そう言い放ち、〇〇は右手を蓮加の頭に当て、抱きしめながら頭を撫でた。
〇〇:君を守れて良かった
〇〇:あの時とは違って、君を……
??:〇〇、もうそろそろ時間だよ
言葉を言い終える前に見た事もない少女が現れ、〇〇の名前を呼んだ。
〇〇:は……?えっと君は……?
??:まだそこまで目が覚めてないか
〇〇:は?目が覚めてない?
〇〇:それに……さっき俺……何を言おうとしてたんだ…
〇〇:蓮加ちゃんを……いや、蓮加を……2度とって…言おうと…
蓮加:〇〇くん?どうしたの?
何もかもが訳のわからない状況の中、〇〇の視界に映る世界が、崩壊し始めた。
??:〇〇、そろそろ目を覚ます時間だよ
〇〇:は、ここは……何で俺……こんな姿に?それに君は……あの時……
少しずつ、何かを思い出す。
さくら:飛鳥さん、もうそろそろいいでしょ。早く飛鳥さんの手でこの妄想から醒まさせてあげよう
飛鳥:分かってるよさくら。でも少しだけ待って
〇〇:はぁ……はぁ……俺は……僕は……何が…
割れそうになる頭を必死に押さえつけ、〇〇は全てを思い出そうとする。
飛鳥:ごめんね、〇〇……
飛鳥:今、楽にするから
その一言を残し、飛鳥は指で音を鳴らす。
テロ1:へ、へへ…じゃあな……死ね、クソガキ
目の前に転がる銃を拾い上げたテロリストは、数分前の恨みを込め、〇〇に向け発砲した。
そしてその弾は〇〇の腹部の肉を抉り、英雄は大きく吐血した。
〇〇:あがっ、がはっ……
それと同時に教室にヒビが入り、まるで割れた窓ガラスのように世界が散る。
飛鳥:さぁ〇〇、夢の世界は終わり…
飛鳥:私の最後の仕事を終わらせよう…
〇〇:飛鳥…ちゃん……
……to be continued