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色々言われても、ゴシップは大事

98  「最後通牒ゲームの謎」 小林佳世子 著

進化〇〇学。

これを個人的に極めて
いこうと思っています。
超長期的計画です。

ほんと、色んな書籍がありますね。
まずは財布に優しい範囲で色々読み漁る予定です。
今回はこの本。
当時、Kindle Unlimitedでした。

〜〜個人的な見どころ〜〜

①合理的とは
最後通牒ゲーム。ある界隈では有名なゲームです。
これに関する論文は3万程度あるようです。

簡単なルール(1000円の場合)
・プレイヤーA(提案者)が1000円をどう分けるか決めます。
例えば、「自分が700円、プレイヤーBに300円をあげる」と提案します。

・プレイヤーB(受け手)はその提案を受け入れるか拒否するかを選びます。
◯受け入れる → 2人とも提案通りの金額をもらいます。
◯  拒否する → 2人とも何ももらえません。

ちなみに、Bは、Aが1000円もらってて、いくら分けようとしてるのかは知ってます。
ただし、AとBは、全く知らない他人です。
(実験によるでしょうが、顔も隠してると思われます)

もっとも合理的な解答はどうなるでしょうか?

経済学的正解
Aは999円を懐に入れる。
要はBに1円だけ渡す。
Bはそれを受け取る。

これが大正解です。

で、実際に実験したら、そういう大正解する人はほぼいなくて。まあ、そりゃそうだろうって気がしますよね。

ただ、それが経済学的には本当に理解できないようです。
人は合理的じゃない!って頭を悩ましました。

それをなぜか?って分析し続けます。
究極的な原因としめ、人類の進化の過程でこうなってきた。こうなったから、ここまで人類は生き延びてきている。

この進化の過程を重視して考察するのが進化○○学です。
〇〇は生物だったり、社会だったり、心理だったり。
色々です。

このゲームと、これに類するゲームの実験で集団に対する人間のふるまい。進化の心理過程を存分に考察する本になっています。

②目について
これもある程度、有名なお話なんですが。
人は、他人の目があるとちょっとカッコつけたふるまいをするんですね。

少なくとも悪さをしにくくなります。

ちなみに、他人の目が、単なる絵や画像でもいいようです。
なぜ、人は目を気にするのか?

シンプルに他者の評価や評判を気にしているものと思われます。
個人的に面白い事に、目を気にするのは、悪い評判を避けるためなのか、良い評判を得るためなのか?ってところがよくわかってなく、議論が続いているようです。

どっちでもええやんけ?って思いますけどね。
どちらにせよ、これを気にする個体が偶然、生存に有利だったってとこなんですから。

③ゴシップの有用性
人類のゴシップ好きは、サピエンス全史とかで有名になってきてますね。
会話の半分以上は誰かの噂話って言われてます。

意外なことに、これが色々なところにまでお話が広がっていきます。
つまり、ゴシップ=集団生活を送るにあたり、かなり必要な能力のようです。

ゴシップにもいろいろあるでしょうけど。
ここでは主に誰かの悪しき行いのネガティブな噂話としてます。

ちなみに、良い噂話は全体の7%程度って結果もあるようです…。

このゴシップ。

特に有名人のネガティブなゴシップを聞くと、報酬系が反応。おいしいものを食べた時に反応するのと同じ部位が反応してるんです。

なので、他人の不幸で飯が上手いのは、本当、そのまんまなんですね。
英語でも、そういうのをジューシーっていうらしいです。
多分、メシうまって言葉とか、報酬系が反応するって判明するより前ですよね??
すげーですね。人間の感覚って。

それだけでなく、ゴシップってオキシトシンもでるようなんですよ。
これは驚き。愛情ホルモンですよ!
親が子供を抱いたりする時にでるもの。
ほんと、尊いホルモンって思ってましたが、ゴシップでもでてくるんですね…。

ゴシップは人にとってなくてはならないものなんでしょうね。

究極的な原因としてのゴシップの役割は、警官であり、教師の役割を進化の中でになってきたのだろうってお話です。

あいつは悪いやつだ。罰しよう!とか。(警官)
あいつのような行動はいけないよ!とか。(教師)
これが、特に集団の中で生き延びるために役立っていったのだろうと考えられてます。

そんなこんなで、敵を捕まえたりして誰かを罰する際、喜びや快感をつかさどる部分が反応しているようです。
ザマぁって感覚ですね。

特に敵と認定したものに対する仕返ししたい!って気持ちが強い人ほど、喜びが強くなるようです。

この傾向、子供のころ、何やったら赤ちゃんの頃から見られるようです。これは衝撃ですね。

しかも、自らコストを負ってまで悪い事をした人に罰をあたえようという考えは、人間にしか見られないようです。
この考えの詳細は、本書のなかに書かれてます。
最後通牒ゲームの亜種で、不正を働いた人に、自分でお金払ってまでも、相手のお金を減らしたりする行動が見られたとの事。

今、ザマぁ系の異世界ものの作品がたくさんあるのって、この手の欲の発散場所がなかなかないからなんでしょうかね。考えさせられます。

その研究結果に、人間怖いとか、戦争なくならないわけだとか、そういうネガティブな反応あるようですが。
この感覚があったから今まで生存できたわけで。
恐らく、この感覚なくしたら、この感覚を持ってる者に滅ぼされる気がしますけどね。

あと、みんな大体「けしからん!」って言ってるワイドショーが無くならないのも、実は人間は、ワイドショー好きで、このおかげで集団生活をやってこれたからなんですね。

この辺り、進化論の身も蓋もないところだと思ってます。

〜〜まとめ、雑記〜〜

まず前提として、人類はほぼ狩猟を主に、集団で生活をしていました。遺伝子と身体はそれに適応しきっているというのがあります。

そして、農耕革命はおろか、今の産業革命以来の社会なんて、最近すぎて遺伝子も身体も適応できていない状態なんです。

狩猟時代の集団生活(といっても最大150人くらい?)。
この作品は特に集団生活についてにポイントを絞ってます。
人間は他人にどう接してきて、今までやってこれたか?がテーマかなと。

集団について、どれほど集団に属することが重要かについての記述が興味深いです。
集団について来れない時、無視された時はこんな反応を起こします。
本文↓
・孤立〟のときの脳の反応を測定すると、身体的な痛みと同じような部位(「帯状皮質前部(anterior cingulate cortex: ACC)」や「島皮質前部(anterior insula)」など)が活性化することが報告されたのです。また、拒絶されたという感覚の強い人ほど、帯状皮質前部の活動が大きいことも示されました。

身体的な痛みですよ。
痛みは、危険を報せるシグナルでもありますので、それほどキッツイ事なんですね。

いじめとかもね。
この研究結果からも明らかなように、孤立させるのは暴力と同じなので、立派な犯罪としてバンバンあげていってほしいですね。
あ、いじめって基本、肉体的暴力も含むから、元から犯罪かな。

あとは興味深かった点をメモ。本文より。
・損をしてでも悪い相手を罰する行動は、一般に「利他罰(altruistic punishment)」とよばれています。
・本書でいう適応合理性とは、「(古代の環境を前提として)、生存と繁殖の可能性をあげる」

・不公平な状態そのものに、〝敵〟に対応する脳の部位であった扁桃体が反応していたのです。公平感のような、ヒトに固有の理知的な働きと考えられてきた意思決定に「古い脳」が関わっていることを示したこの結果は、大きな驚きをもって迎えられました。

では。また。

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