演劇評『午後の光』
太田省吾脚本、越川道夫演出『午後の光』2018年8月24〜26日@西荻窪ビリヤード山崎2F。出演:足立智充、安藤真理、越川道夫、山田真歩。音楽:てんこまつり。老優と死んだ妻とのひとときの交情を描いた戯曲を、三十代の役者さんたちで上演する試みです。ツイッターに連続投稿した感想を、ここにまとめておきます。
*
太田省吾脚本・越川道夫演出の『午後の光』。8月25日土曜日の昼の回を観てきました。同じ役者さんで、配役の変わる夜の回も観る予定です。一回の上演に観客20名ほどの贅沢な公演です。当日券も出るそうなので、お時間のある方はぜひ。
越川道夫さん演出の『午後の光』。西荻のビリヤード場の二階という、会場の選択がまず興味深かったです。日常とのテンポの違いから、観客が劇になじんでゆくまでに時間のかかる感じが、太田さんを彷彿とさせるものがありました(越川さんは、太田省吾の演出助手を務められたことのある方です)
ここでいう「時間のかかる」は、もちろん、ほめ言葉ですよ。
安藤真理さんが妻役を演じる回。こちらのバージョンにより心を動かされました(山田真歩さんが妻を演じるバージョンには、この世のものとは思えない、はかない美しさがあり、こちらも素敵でした)両方を観ることができて、とても深い体験となりました。
こちらは、夫婦役のふたりが、お互いの存在を確かめるように、からだにふれあうしぐさや、宇宙の底にいるような感覚、パトスが語源の「ペーソス」あふれる演技と演出など、太田作品に通じるものが満載でした。
これは余談ですが、安藤さんの台詞の言いまわしやリアクションの仕方が、ぼくの妻にそっくりで、とても驚きました。同じ戯曲の同じ台詞なのに、山田さんの回のときには、まったくそう感じなかったから、不思議です。
山田真歩さんが妻役を演じるバージョンは「遠さ」を、安藤真理さんが妻を演じるバージョンは「近さ」を感じたような気がします。夫婦のあいだの距離や、役者と観客のあいだの距離の部分で。どちらがいい悪いでなく、そのような違いがあったのではないかと。
音楽担当のてんこまつりさんもきわめて魅力的でした。舞台に出ずっぱりで、3人の役者さんに寄り添いながら、愛おしむようにマンドリンを弾いていらしたお姿。今後のご活動も追ってみたい、という気にさせられるものがありました。