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原稿料の相場って、ぶっちゃけ、どうなのよ?

クライアントワークの場合、案件によって原稿料の相場はかなり違います。高けりゃいいとも言い切れませんが、安すぎるのはさすがに困る。

提示された原稿料を見て「え、安くない?」と感じても、そもそも原稿料の相場というものが分かりにくいですよね。原稿料は、案件一つひとつの事情によって変わってくるため、「この案件だと相場は○○円」と一概に言えるものではありません。

とはいえ、それでもだいたいの傾向というものはあります。原稿料の相場感、そして、提示された原稿料が安いと感じたときにどうすればいいのかについて、書いていきたいと思います。


掲載メディアによる原稿料の違い

何に使われる原稿なのかによって、原稿料の相場が変わってきます。

見出しには「掲載メディアによる違い」と書きましたが、ライターの書く原稿が必ずしもメディアに公開されるとは限りません。とはいえ、何らかのメディアに掲載されることが大半なので、気にせずこのまま話を進めます。

メディアの傾向でざっくり分類すると、「情報系メディア」と「企業系メディア」の2つがあります。


■情報系メディア

出版社や新聞社などが運営するWebメディアです。情報発信を主な目的としたメディアになります。

キャッシュポイントはバナー広告やGoogleアドセンスなどであることが多く、PVが生命線。たくさん読まれれば読まれるほど、そのメディアの収益が上がります。

正直、PV勝負はしんどいです。業界全体としても、年々、メディアの運営が厳しくなっていっている印象があります。


1. 年々、広告ばっかりで読みにくくなっていってる

5000字の原稿を納品しても、それを3~4ページに分割してWebに掲載される。そして、読者さんが次のページに進もうとすると、一旦広告だけのページが挟まれる。小さな「×」をタップするか、数秒間その広告を見つづけるかしないと、次のページが表示されない。

えーい、まどろっこしいんじゃい。そんなことしてまで読みたないわ。
となる人が大半でしょう。

広告単価も年々下がり続けているので、今後、何かしら大きなルールチェンジが起きない限りは、このまま先細っていくのかなぁ...という予感がします。

とはいえ、まだまだメディアのバリューは高いので、ライターとして記事を書き続ける価値は充分ございます。


2. 原稿料は、残念ながらややお安め

情報系メディアの原稿料は、比較的お安めです。

メディアの知名度や運営企業の規模と、原稿料の間には、あまり相関性はないようです。「え、こんな名の通ったメディアがこんなに安いの?」とビックリしたことは、一度や二度ではありません。

出版社系・新聞社系メディアでの執筆、私はそんなに多くないのですが、私がそれらのメディアでこれまでにいただいた原稿料は、1記事あたり1.5万円~3万円でした。

もちろん、これより低いところも、これより高いところもあると思います。
あと、一度の取材でイイ話をたくさん聞けたので、「前後編でいきましょう」と、一石二鳥になったこともあり、記事単価としては3万円だけど、実質1案件6万円だった......という嬉しい経験もございます。


3. 工数が結構かかる

また、情報系メディアの企画は、基本的にライターの持ち込みです。

もちろん、編集者さんから「こんな企画で記事を書いてくれませんか?」と頼まれることもありますが、それはある程度メディアとの関係ができた後の話になります。

そのメディアに適した企画を立てる ⇒ 企画を持ち込む ⇒ (編集さんOK ⇒ 企画会議OK ⇒ )取材アポとり ⇒ 取材 ⇒ 執筆

結構大変です。

それなのに、原稿料はそこまで高くありません。


4. 原稿料以外の大きなメリット「クレジットが入る」

情報系メディアには、原稿料ではないところに大きなメリットが存在します。

それは「クレジット」。

出版社や新聞社の運営する情報系メディアでは、ライターのクレジットが入ることが多いです。なので、「○○メディアで書きました」と実績としてアピールしやすい。

まだ経験の浅いライターさんの場合、ポートフォリオを充実させることが、お仕事確保の近道。なので、クレジットの入るメディアの仕事は、積極的にチャレンジしたいところです。


■企業系メディア

企業のオウンドメディアや広報誌、コーポレートサイト、セールス系文章(LP、ホワイトペーパーなど)、採用系文章(採用広告、採用サイトなど)といった、企業活動に求められる文章について、ここでは「企業系メディア」と呼びます。一部、メディアではないものも含まれますが、そこはご愛敬ってことで。

企業さんのお仕事の場合、次のような要素が原稿料に反映されます。


要素①:予算が潤沢かどうか

ぶっちゃけた話、これが一番大きい。
身も蓋もない言い方をすると、原稿料を決めるのは、ライターの腕ではなくクライアントの予算です。

もちろん、高い予算を持つ企業と取引できるようになるためには、ライターの手腕や実績、信頼が必要ですけどね。営業の上手いライターさんがいたら、ワンチャン、実力飛び越えて高単価案件をゲットできるかもしれません。(継続できるかどうかは知りませんが)

ただ、大企業だからといって予算が潤沢だとは限らないのが難しいところです。会社案内や広報誌などでもない限り、本社からライターに発注がくることは少なく(あったとしても編プロや広告代理店経由が多い)、大抵は事業部から依頼を受けることになります。

となると、その事業部の予算がどのくらい割り振られているか、みたいなシビアな話になってきます。大企業にも、予算の少ない事業部は存在します。

ご予算じゃぶじゃぶの潤った事業部さんから、ぜひご依頼いただきたいものです。


要素②:売上につながる原稿かどうか

広告やセールスレター、ランディングページ(LP)のように、売上につながりやすいポジションの文章は、その他の文章に比べて原稿料が高くなる傾向が見られます。

まぁ、そりゃそうですよね。その文章の良し悪しで売上が変わるわけですから、「多少高くても売れる文章を書いてほしい」と思うわけです。

じゃあ、売上に直結しないような、たとえば理念を伝える文章とか、ブランディングのための文章は原稿料が安いのかというと、実はそうとも限りません。

というのも、売上に直結しないところにも力を入れるゆとりのある企業は、予算も豊富だからです。

つまり、
①予算の潤沢な企業は原稿料もイイ。
②その中でも売上に直結する文章は、原稿料をはずんでもらえる。
という順番です。


● 原稿料がちょっと低いと感じたら
もし、企業さんから提示された原稿料に対して「ちょっと安いな」と感じたら、「このお仕事だと通常は○○円なのですが、クレジットを入れていただけるなら、ご提示いただいた金額でもお引き受けします」という交渉をしてみるのもオススメです。

企業さん案件の場合、ライターのクレジットが入らないことのほうが多いです。なので、たくさん書いていても、ポートフォリオなどに載せられる実績をなかなか積むことができません。そこで、値引きの代わりにクレジットを入れてもらうという作戦です。

メディアのトンマナが固まっている場合には断わられてしまうかもしれませんが、立ち上げたばかりのメディアとかだと、対応してもらえる可能性があります。ダメ元で交渉してみましょう。


ジャンルによる原稿料の違い

ジャンルによっても、原稿料の相場は結構変わってくる......というのが、私の実感です。

趣味・生活系

美容・ファッション、食・グルメ、子育て・教育、旅、介護など。

趣味や生活系ジャンルは、誰にでも馴染みのある話題です。ライターとしても参入の心理的ハードルが低く、「このジャンルで書いてみたい」というライターが大勢います。

間口が広いぶん、原稿料は低めになることが多いようです。需要と供給のバランスですね。このジャンルは需要が高い反面、書けるライター(供給側)も多いので、値崩れ感は否めません。

とはいえ、経験と知見を積むことで、高単価案件も受けられるようになっていくはず。

「好きで好きでたまらない」というジャンルがあれば、そこをどんどん突き詰めてSNSなどで情報発信していくのも、戦略の一つ。「フルーツサンドと言えば○○さん」くらいの認知が取れるようになると、アツいです。

ビジネス系

不動産、お金・金融、医療、経営、マーケティング、セールス、BtoBなど。

ビジネス系ジャンルは、とっつきにくさがあり、ライターとしても参入の心理的ハードルがやや高めな感じです。それに加え、ビジネスというのはそもそも経済活動ですから、お金がグルグル回っています。なので原稿料も、他のジャンルに比べて高くなりやすい傾向にあります。

ビジネス系ジャンルの場合、業界知識やマーケティング的な視点などが必要になることも少なくありません。また、取材記事の場合には、ビジネスマナーなども求められます。

原稿料が高いほど、ライターに求められる資質も高度になっていきます。

社会問題系

貧困、雇用、教育、人権、ジェンダーなどの社会問題。

めちゃくちゃ大事なテーマですよね。社会的意義の高い尊いお仕事だと思います。ほんと。

ただ......、正直、あまり原稿料が高いという印象はありません。これは、お金が儲かるジャンルではないからだと思います。

社会問題系の記事を書きたいライターさんは、企業などに依頼されて執筆するのではなく、ジャーナリスト的な動きをしたほうがよさそうな気がします。

ここでも、たとえば「ヤングケアラー問題と言えば○○さん」と言われるようになったら、強いですよね。

環境問題系

SDGs、サステナビリティ、カーボンニュートラルなど。

これらの環境問題は、どうでしょう。

社会問題系の原稿料が高くないというのであれば、こちらもそうなのでは......と思うところですが、環境問題系は割と原稿料お高めの案件が多い印象です。

というのも、環境問題への対策が企業に課せられているため、経済活動の一環として取り組まれているからです。

企業の環境問題への取り組みについて書く場合、IR情報を読み込んだり、世界の環境イニシアチブの情報を調べたり、政府発表の資料を参照するなど、なかなかの重労働が待っています。

また、株価などにも影響を与えかねないため、企業側も真剣です。
といった事情が原稿料にも反映されることが多いようです。

エンタメ・サブカル系

ごめん。分からん。見当もつかない。
エンタメ・サブカル系、私の苦手分野です。
エンタメやサブカルを得意とするライターさん、今度、相場感を教えてください。


原稿料アップのポイント


いっぱい記事を書いてきた。取材も上手くなった。実績も増えた。

「そろそろ原稿料アップしたいぞ」
そう思ったら、どうする?

クライアントに原稿料アップの交渉をしてみればいいのかな?

いえいえ。実は、同じクライアントの案件で金額アップは、あまり期待できないんです。これは、予算の問題。

ライターが力をつけてきたから、2万円だった原稿料を2万2000円にアップする。このくらいなら、できるかもしれません。
しかし、2万円の原稿料を、3万円、4万円にすることは、同じクライアントでは難しいのです。

力をつけたら、ぜひ、予算の潤沢なクライアントにアプローチしてみましょう。

また、WebサイトやSNSに掲載するポートフォリオを整理することも大切です。実績を見た企業やメディアから声がかかるパターンも、結構多いので。

原稿料を上げたかったら、クライアントを変える。これが、一番手っ取り早くて効果的な方法です。


原稿料は高ければ高いほどよいのか問題

原稿料って、高ければ高いほどいいと思っていませんか?
私はそう思っていました。
でも、今はちょっと考えが違います。

5年前に比べて、私が受けている仕事の平均単価は、約2倍になりました。高単価ライターというほどではありませんが、そこそこの原稿料で書かせてもらっています。

めでたし、めでたし。
...…という話ではなくて。

原稿料は高ければ高いほどよいのか、という問題について、ちょっと考えたいと思います。

1記事書くのにかかる労力が全く同じなら、もちろん原稿料の高いほうがいいです。これは文句なし。

けれど基本的には、原稿料の高い仕事のほうが、労力かかります。内容が難しいとか、取材の拘束時間が長いとか、取材相手が偉い人で緊張するとか。

2万円の記事1本執筆するのにかかる労力を《1》として、《3》の労力を必要とする5万円の記事があったら、どうでしょう?

1記事あたりの単価が高いのは、5万円の仕事です。
けれど、労力あたりの単価が高いのは、2万円の仕事です。

手離れよく次々と軽快に仕事を回していきたい人は、2万円の仕事をたくさん受けたほうがハッピーです。

じっくり仕事に取り組んでいきたいタイプの人は、5万円の仕事を無理のない数こなしていったほうがハッピーです。

つまり、どちらを選ぶかは、本人の価値観次第ということになります。

高単価案件、なんだか憧れちゃいますが、自分の理想とする働き方も踏まえて、適性な原稿料と労力のバランスを見つけられるといいですね。


ライフワークとライスワーク

「このジャンルで書きていきたい」というジャンルに、あまり単価の高い仕事がなかったら...…。

そのジャンルで書くことを生きがいにしつつ、他ジャンルで飯の種を探す、というのも一つの手です。

いわゆる、ライフワークとライスワークの両方を持つ戦略です。

ライフワークに専念していても稼げないとなかなかしんどいし、ライスワークしかしていなかったら心が枯れちゃう。

両方にチャレンジして、「楽しい仕事もそうでもない仕事もあるけど、まぁ病まずに日々過ごせています」「稼げる仕事もそうでもない仕事もあるけど、まぁそれなりに食えてます」くらいな感じで生きていければ、結構長続きできると思います。

あと、最初はライスワークだと思っていても、真剣に取り組んでみると、結構楽しくなってくるものですよ。私はそれで、ビジネス系どハマりしました。今は、ビジネス一辺倒です。

あれ、それはそれでバランス悪いのかも...…。うん、いろいろ考えてみます。


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