改訂版【ピトス・エルピス】樋口円香コミュ考察 〜『言葉の解釈』という切り口から〜
先日実装された樋口円香の限定P-ssr【ピトス・エルピス】がW.I.N.G.を想起させたり、言葉選びが巧みだったりしてこりゃあ記事を投下するっきゃない内容だなってことで筆を取りました。
如何せん投稿が遅くなってはしまったので新鮮味はありませんが、独自性はあるんじゃないかな、、? あると思いたい、、
シャニマスのコミュ考察を書くのは初めてなので至らない部分もあるやもしれませんが、楽しんでいただければ幸いです。
ちなみに『改訂版』と冠しているのは、公開後に文章の構成や表現など大部分を修正したためです。
前書き
この考察は少し長くなるため、先に結論とその理由から述べたいと思います。
なぜ激情を再発見する物語なのか、その理由はTrue END『gem』の最終盤にて発せられたシャニPの台詞にあります。
この『今日、確信した』という言い回しは「激情を持っていると今日気付いた」ともとれますが、「激情があるという疑念が今日確信に変わった」といった意味合いではないでしょうか。
(この解釈は少しだけ自信が無かったのですが、友人に質問をしてみたところ5人中4人が同じ解釈で、残りの1人が五分五分という結果でした)
そして疑念を持っていたということは、そう思うに足る出来事が過去にあったはずですよね? では、それは一体いつなのでしょうか。
さて、ところでですが(自然な話題転換)、シャニPに激情を確信させた今回のイラスト、まるで『心臓を握る』ようではないですか?
更に言えば、このイラストが登場するコミュのタイトルはgemなのですが、『夜に待つ』にて円香をスカウトする際、シャニPは円香を宝石(gem)の原石と例えていませんでしたか?
そして、この2つのコミュで円香は透が心配なあまりシャニPに凸したり、思わず声を荒げ、隠していた不安を吐露してしまいましたよね。
激情とは、理性で押えきれない激しい感情の表れ(参考:コトバンク)を意味するそうなのですが、この2つのコミュこそ彼女が激情を見せたコミュと言えるのではないでしょうか?
ということは、シャニPが円香の激情を初めて見た時の比喩がTrue ENDのコミュ名になっており、次に激情を見た時のコミュ名がカードのイラストに反映されていて、そのイラストの演出が流れるのが激情を確信するTrue ENDであると言うことができるわけで、果たしてこれは偶然なのでしょうか?
とまぁ、ここまでが結論であり前書きで、ここから先がその理論の肉付けなわけですが、その前にカードタイトルについて少し書かせていただきます。
【ピトス・エルピス】とはパンドラの箱に由来する名前であり、ピトスは古代ギリシア語で『箱(元々は甕)』を意味し、エルピスは一般的には『希望』と解釈されます。つまりはピトスがパンドラの箱でエルピスが最後に残った希望なわけですね。
パンドラの箱に由来するカード名である以上、当然パンドラの箱の神話の内容も今回のコミュに深く関わってくるのですが、それ以上にピトスとエルピスが複数の意味を持つという言葉であるというのが今回のコミュでは重要になります。
というのも、【ピトス・エルピス】ではこのような同じ言葉で複数の意味を持つものが非常に多く登場し、その言葉をどのように解釈するのかがこのコミュの要点となっていくからです。
あ、あと今更ですが、この考察では【ピトス・エルピス】を含む樋口円香が登場する多くのコミュのネタバレを含みます。予めご了承をば。
1話『hibi』 〜秘める想い〜
【ピトス・エルピス】では、多くのコミュで初めに問いを投げかけ、シャニPと円香のやりとりを通してその解答を間接的に描いていくという形式がとられています。
ここでの問いは『心をえぐるものは』ですね。
円香とシャニPの関係において『心をえぐるもの』といえば円香の皮肉が思い浮かびますよね。
普段通りであれば、心をえぐられるのはシャニPなわけですが、今回のコミュでは円香にブーメランがぶっ刺さってしまいます。
しかしながら、円香の皮肉が『心をえぐるものは』に対する解答というわけではないでしょう。
なぜなら、円香が恥ずかしいと感じた(=心をえぐられた)のはブーメランが返ってきたからというよりも、実は面白いと思っていたのがバレたからだからです。
それは選択肢(シャニPがそのことに触れるかどうか)を通して描かれていて、彼がそのことに触れなければ、円香は恥ずかしさなどおくびにも出しませんが、触れてしまった場合には、、
つまり、円香の『心をえぐるものは』隠していた感情を見られてしまうことなのでしょう。
ちなみに、このコミュのタイトル『hibi』には日々説や罅説がありますが、私は韻説を推していたりします(詳細は余談2:言葉の解釈に関する小話にて後述)。
【もう一つの解答】
笑ったことに触れない選択肢を選んだ場合は、ブチギレ円香こそ見れませんが、円香の吹き出しでシャニPのスーツが汚れてしまったという面白い話を聞くことができます。
自分の吹き出したもので他人(しかも異性)の服を汚してしまうという、なかなか恥ずかしい場面なわけですが、「円香」「シャニP」「スーツに汚れ」「胸に秘めた感情」「黒背景」というと有名なものがありますよね。
あなたは 愚直で
スーツも 折り目正しく 美しい
ああ
ぐちゃぐちゃに
引き裂かれてしまえばいいのに
別のカードの話になるので詳細は省きますが、私はこの独白をプロデューサーという好青年の肩書きがない(スーツが引き裂かれた)シャニPを円香は見たいということだと解釈しています。
(この考察に関しては同じような解釈をされている方も多いので、気になったよって方は是非【ギンコ・ビローバ】の考察を調べてみてください)
さて、スーツが折目正しく美しいことが好青年を指すのであれば、スーツが汚れることが何を指すかは自明ですよね。
実際、過去にスカウトされた透を心配し、シャニPに凸まで行なったわけですから、それはよほど許し難いことなのでしょう。
勿論、シャニPはスーツを綺麗に保っていようと努力しているので、そんなことは起こり得ないわけですが。
さて、今回シャニPのシャツを汚すことが恥ずかしいこととして描かれ、それがシャニPが悪人であることの暗喩だったことがわかりました。
そしてその場合、円香は言うまでもなく心を痛めることになるわけですから、円香の『心をえぐるのは』シャニPが悪人であることとも言えるのではないでしょうか。
2話『hako』 〜ピトス・エルピス〜
このコミュでも初めに問いが登場しますが、如何せん長いです。
簡潔にまとめると『箱に入っている大切なものは何?』でしょうか。
ただ、このコミュは少し入り組んだ構造になっているため、前回のようにすぐに問いの答えを探すのは得策とは言えません。
そのため、初めに前提となる情報を提示し、段階的にコミュを読み解いていこうと思います。
当然ではありますが、このコミュはタイトルにある通り箱(hako)の話です。
この箱という言葉が示すのは、円香が見つけた謎の箱であり、鍵がかかった宝石箱であり、要らないものを詰め込んだダンボールであり、カード名にあるピトスです。
そして、宝石箱は円香の心のメタファであり、コミュ中において箱は他の箱へのメタファとしての役割も果たしています。更に言えば、全ての箱は円香の心のメタファだったりします(理由は後述)。
ちなみに、円香が見つけた謎の箱は鍵のかかった宝石箱の外見をしていますが、同じく鍵のかかっている宝石箱とは別物であり、宝石箱は実在しません。
しかしながら、どの箱も円香の心のメタファという意味では同一であり、お互いがお互いのメタファでもあるので繋がりはあります。
まどろっこしいですね。
ここでは『箱に入っている大切なものは何?』という問いが投げられつつ、円香が謎の箱を相手に悪戦苦闘している様子が描かれています。
セリフは4つとかなり少ないですが、白文字(宝石箱の説明)の間にセリフ(謎の箱の状況)を挟むことで、宝石箱と謎の箱の両方に大切なものが終われている(宝石箱が謎の箱に対するメタファである)とわかる仕組みになっています。
そして、ここでは宝石箱が謎の箱へのメタファである以上、『その中身は何?』という問いは、宝石箱だけではなく謎の箱の中身に対する問いなのです。
ここで登場するダンボールは、選択肢後のシナリオにて宝石箱のメタファとして描かれます。
そこでの話題はもっぱら片付け(断捨離)に関してであり、要らないものを詰め込んだダンボールを捨てるかどうかという話なのですが、
メタファがこのような関係になっているので、ダンボールには要らないものが詰め込まれている=宝石箱には要らない感情が詰め込まれていることがわかります。
更に言えば、片付け(断捨離)が感情を宝石箱に詰め込むことのメタファになるわけですね。
選択肢:足の踏み場は……ある
片付けのコツとして、「手放すことを恐れない」ということが紹介されるのですが、これは、片付けが得意な円香は感情を手放す(詰め込む)ことも得意という意味なのでしょう。
そして、手放すことに対する円香とシャニPのスタンスの違いとその理由が、2人のやり取りとモノローグで描かれています。
彼女が傷くことに恐れているのは今までも示されてきたことですよね。
(左:W.I.N.G.『心臓を握る』 右:【ギンコ・ビローバ】『偽』)
ちなみに、シャニPの『大人になれば分別がつくのかな』という返しは、既に大人であるシャニPが『大人になれば』というボケであり、諦めるという物事の分別(ふんべつ)と要るものと要らないものを見定める物の分別(ぶんべつ)をかけているわけですが、私達視点だと感情の分別(ぶんべつ)もかけているように見えるという仕組みになっています。
面白いかどうかは別にして、この『分別』という言葉はTrue ENDにて重要な意味を持つことになります。
選択肢:捨てるけど、でも……
ここでは、大切なものでも捨てることがあるということが示されます。
つまり、要らないからと宝石箱に詰め込んだ感情が実は大事なものだったの場合があるということです。
そして、先程の選択肢で判明した『円香は手放すことを恐れない』ということの理由が、そもそも二度と手にするつもりはないからであるということが明かされます。
選択肢:円香こそ
ここでは、円香は片付けるのが得意という情報が出ます。
これは『選択肢:足の踏み場は……ある』でも描かれたように、円香が要らない感情を詰め込むのが得意ということなのでしょう。
さて、このコミュでは、私達が導き出さずとも答えが出てしまいます。ただまぁ、これは問題が出されている最中に既に提示されていたんですよね。
つまり、『箱に入っている大切なものは何?』の解答はわからないになるわけですが、先述したように宝石箱は円香の心のメタファなのでこれだけでは解答としては不十分です。
円香の心として、ダンボールとしての解答は、要らない感情、ピトスはエルピス(人によって解釈の違うもの)、謎の箱の中身は謎のままです。
ただ、これらの箱は全てメタファで繋がっているので、それぞれの解答がお互いの解答を暗喩しています。
ほんとまどろっこしい限りですが。
つまるところ、『箱に入っている大切なものは』要らないもの(人によって解釈の違うもの)であるって話ですね。
4話『kara su』 〜パンドラの箱〜
ここのコミュは唯一問いがないコミュなので、あまり語ることはないのですが、三つだけ。
1.kara su
タイトルのkara suは勿論カラスのことでしょうが、円香が声を枯らすまで歌ったことと、空の巣であったことを示しているのかなと。
2.シャニPと円香の意見が食い違う
巣に残されたものについての解釈が円香とシャニPで食い違うのですが、これはパンドラの中に残されたもの(エルピス)の解釈が人によって違うことになぞらえているのだと考えています。
(hakoでのシャニPのギャグを回収するなら、感情の分別が苦手なシャニPは童心を捨てきれず巣の中にビー玉を見るわけですが、感情の分別が得意な円香は大人の冷めた視点から木の実という解答を得るわけですね)
実際、他の選択肢でも『見る者によってガラクタにも宝物にも見える』ということが示されており、巣には物(エルピス)が残され、雛達は巣(箱)から飛び出し、いづれ親鳥のように近隣住民に迷惑(厄災)をかけるのですから。
3.謎の箱
このコミュでは、最終的に謎の箱についた錠前が壊れることになります。
謎の箱は円香の心のメタファでもあることから、円香がこれまで閉まってきた感情が外に出ようとしていることを示しているのだと考えています。
W.I.N.G.『夜に待つ』 〜秘めた激情/ダイヤの原石〜
このコミュ『夜に待つ』は、円香とシャニPの出会いのコミュであり、先述したようにシャニPが初めて円香の激情の片鱗を見たコミュなのですが、そもそもの話、シャニPは円香の一体どこに惹かれてスカウトしたのでしょうか。
勿論、今の私たちは樋口円香という人間の魅力を、アイドルとして輝いている姿を知っています。
ですが、この時のシャニPはどうでしょう?
彼からすれば円香は、アイドル志望と偽り時間を取らせ、自分がプロデューサーであると知ると露骨に態度を変え、勝手な先入観で痛くもない腹を探り、お前の電話番号は控えたからなと脅す人間なわけです。
幼馴染が心配という事を差し引いても、かなり印象悪くないですか?
ですが彼はそれを意に介さず、円香をスカウトするわけです。
パッと見、とち狂ったようにしか見えない彼の行動には、円香もかなり困惑、、というか警戒しています。
実際、初めて円香をプロデュースした時に驚いた人も多いのではないでしょうか。実装当時の私は大爆笑していた覚えがあります。
そんな、円香も我々プレイヤーすらも驚くような行動をしたシャニPですが、つまるところ、彼は円香のネガティブな印象が気にならないほどの何かを見つけていたのでしょう。
ではそれは何なのか。
その答えは、円香をスカウトした時のセリフにあります。
つまり、彼は出会った時に円香の瞳に惹かれたわけですが、ただそれだけで『ダイヤの原石』というスカウトとして最上級とも取れる言葉を贈るものなのでしょうか。
ちなみに「言葉にしていないだけで、他にも理由はあるのでは?」と思われる方もいるかもしれませんが、シャニPがスカウトをする際は何に惹かれたのかが必ずそのコミュ中に明言されており、それがスカウトの動機として描かれるのですが、円香は出会った時以外にそういった文言は登場しないんですよね。
他の人と違い、容姿や技術、アイドルになったときのビジョンといったわかりやすいものがないのも含めてかなり特殊と言えます。
だからこそ、それだけ飛び抜けた何かが、シャニPの食指が動く程の何かが円香の瞳に宿っていたのではないかと思えてならないのです。
そして、それこそが、透が心配だからと会社を凸するというぶっ飛んだ行動を起こさせるほどの激情なのではないでしょうか?
ただ、シャニPがこの時点では『まっすぐで、綺麗な瞳』というそれに触れない評し方をしている以上、感じ取ってはいるが何であるのかは確信に至っていない状態なのだと私は思うわけです。
だからこそ、True ENDの『今日、確信した』という言葉があるのではないでしょうか?
3話『uru uru』 〜秘めた激情/疑念〜
このコミュでは、円香が問いに対する答えを早々に出してしまいます。
彼女の内面ではなく技術が大事という主張は、W.I.N.G.の時から一貫しているもので、それゆえに彼女はひたむきに練習をしているわけです。
ですが今回、円香は技術を大切にしながら、それと同じくらい大切だと自覚している喉を痛める事になります。
それは、円香が自分の歌に対して「綺麗ではないし、自分が目指しているものとは違う」と感じているからなのですが、シャニPはその姿に何か引っ掛かりを覚えてしまうのです。
ここでのシャニPはそれが何故だかは理解していません。
ですが私達は、喉を痛めてはならないという理性すらも上回る、押えきれない激しい感情が彼女には存在していることを知っています。
つまり、シャニPはまたしても激情であるとは気付かないうちに、円香のそれに触れたわけです。
ちなみに、円香は『胸を打つものは』に対して『技術』という答えを提示しましたが、シャニPが解答者であったのならば、その答えは気持ちだったりするんじゃないでしょうか。
True END『gem』 〜激情/そして原石は〜
謎の箱の中身は空でした。
円香は取るに足らない物だとしてそれを捨てることをお願いするわけですが、シャニPは本当は大切なものなのではと思案します。
そして、気付くのです。
シャニPが見つけたオルゴールの音色は、円香の歌声と重なっていきます。
これは【ギンコ・ビローバ】にてシャニPと円香の見た映画でも使われた手法で、オルゴールの音色と円香の心情をリンクさせたのだと考えています。
なぜなら、宝石箱に仕舞われていたのは円香の感情だからです。
宝石箱はオルゴールこと謎の箱のメタファでもあり、宝石箱の中の円香の感情はオルゴールの音色と解釈することができるのです。
だからこそ、ラストシーンにて円香が心臓を握りしめ歌い出した瞬間、世界が白色に染まったのは、彼女の『激情』が世界に溢れ出た表れなのだろうなと私は思うのです。
そして、心臓を握り締めながら歌う円香の姿を見たシャニPが彼女には激情があると確信することで、シナリオは終わりを迎えます。
ちなみに、このコミュにて円香の『激情』が世界に溢れ出たというのを裏付けるのが『分別』という言葉です。
この言葉は、2話『hako』にて物事の分別(ふんべつ)と物の分別(ぶんべつ)、感情の分別(ぶんべつ)という三つの意味で使われていました。
そしてそこでは、円香は物の分別が得意であるということが示されており、物は感情のメタファだったので、円香=感情の分別が得意=大人という等式が成り立っていたわけです。
そして同時に、シャニPは彼が言ったように分別が得意ではなく(シャニP=物と物事の分別が苦手)、4話『kara su』にて円香に言われたように童心を持っている(=子供)のでシャニP=子供=感情の分別が苦手という等式も成り立つわけです。
その上で、喉はまだ全快していないのに歌の練習を始めた円香に対するシャニPの一言を見てみましょう。
ここでの分別は物事の分別を指しているわけで、円香=物事の分別ができていないと言っているわけですね。
そして、その理由こそが、オルゴールの音色が外に出てしまった=円香の感情が世界に溢れ出たからでしょう。
円香の感情が外に出てしまったということは、今の円香は感情の分別のついていない状態と言えるわけで、円香=感情の分別がついていない=物事の分別がつかないという状況になってしまうわけです。
さて、宝石箱の中身は感情であり、激情であったことがわかったわけですが、皆さんはこのコミュのタイトルを覚えているでしょうか?
そう、gem(宝石)です。
gemならば宝石箱に入っている(分別してある)のが相応しく、宝石箱には円香の激情が入っていたわけですから、gemは円香の激情だったということがわかるわけです。
なぜ宝石箱やgemという言葉を使っていたかは言わずもがな、彼女の激情がダイヤ(gem)の原石だったからです。
以上のことから【ピトス・エルピス】は円香の激情を再発見するまでの物語であるという考察が出来るわけですね。
余談1:磨かれるダイヤ
上の画像は円香の歌声に対するシャニPと円香のセリフなのですが(赤が円香、白がシャニP)、これはかなりダイヤを意識したセリフと言えます。
というのも、ダイヤは原石の状態ではおよそダイヤとわからない程にくすんでいて、それを削ることでようやく我々の知っている姿になるらしく、加えて、ダイヤの中でも透明度が高いダイヤほど価値が高いとされているらしいんですよね。
そのままでは綺麗とは言えない、ダイヤの原石のような激情に可能性を見たシャニPは、とても荒くて、単純で、野生的で豊かな音であることも良しとするわけです。
彼は円香の激情にこそ価値を見出したのだから。
反対に円香は、透明であれと歌います。
ただひたすらに透明な、精巧で複雑で繊細な輝きを放つダイヤのように。激情なんて存在しないかのように。
人に感動をもたらすのは内面ではなく技術だから。
相反する思いを円香の歌声に見る2人ですが、しかし、美しくあれという願いは同じなのです。
まるで削ることで輝き、そして価値が生まれるダイヤのように『魂を削り出すように』と。
ですが私は、2人の思う透明は違うものではないかと思うのです。
円香の思う透明は、魂から激情を削り出した、激情を持たない姿なのでしょう。
あるいはその名を冠する、『透明感あふれる佇まい』の少女の姿かもしれません。
しかし、シャニPの思う透明は、激情すら魂から削り出した姿なのではないでしょうか?
なぜならシャニPが見出したのは、透明の中に激情を秘めた円香であり、同じ言葉でもそれが同じ意味を持つとは限らないのが、この【ピトス・エルピス】であり、どこまでも価値観が合わないのが彼女たちなのですから。
余談2:言葉の解釈に関する小話
コミュ名がその意味を一意に定められないローマ字表記なのは、同じものが見えていたとしても解釈や答えは同じとは限らないということが今回のコミュにおいて重要だったからだと私は考えています。
実際、どのタイトルも複数の意味を持たせることに成功していますしね。
このように、韻やメタファなどを使って内容にコミュのタイトルをリンクさせているのです。
ちなみに、なんでシャニPだけじゃなく円香も『うるっと』したと捉えているのかというと、空白を入れることで複数の解釈を持たせる(kara su)ものが他にあること、そして、シャニPがタイトルの『うるうる』ではなくわざわざ『うるっと』という言葉を使っていたからですね。
つまり、円香も内心は『うるっと』しており、シャニPのうる(uru)と円香のうる(uru)が合わさってuru uruなんじゃない? って話です。
そして、その感動によって激情が溢れ出してしまったんじゃないかなぁって考えています。
というのも、激情は今回の物語の重要である部分なわけですから、それが表に出てしまった理由はコミュ中において示唆されていると考えるべきで、それに該当しそうなのがコンサートぐらいしかないんですよね(劇場=gekijoで激情が宿ったのでは? って考えてたりもします)。
後書きと謝辞
以上が、今回の考察になります。
長々と付き合って下さりありがとうございました。
まぁ全部が正しい自信なんてないですし、私は高尚な文章を書けるわけでもないので、とりあえずはここまで読んでくださった方が面白かったと感じてくださっているのであれば幸いです。
そもそも考察なんて正しくないのが前提ですからね。公式が明言していないものは程度の差こそあれど全て妄言妄想の類なわけで、、
ちなみにですが、この考察、、というか私自身は遊佐師門さんのこの記事に多大な影響を受けています。
今回『ことば』の解釈について書こうと思ったのはこの記事のお陰であり、この記事がなければ筆を取ることはありませんでした。
特にシャニPと円香が基本的に対比される存在であるって考えがなければ、多分ここまで書き上げられなかったんですよね、、
感謝と共にここで紹介させていただきます。
そういえば、円香役の土屋李央さんの出られているASMR作品が最近発売されたんですが、今回の『hibi』で土屋さんのASMRに可能性を感じた方は是非購入をお勧めします。
土屋さんの役は右の子であり、私達が左の子ですね。
私は好きな声優さんが出てたら割と内容関係なしに買っちゃう人間なので、聞いてみたら内容がちょっと微妙、、なこともそれなりにあるんですが、この作品は演技は言うまでもなくASMRを活かした百合の音声作品として完成度が高く、買っといて損はないんじゃないかなぁとか思っています。
個人的にはEP5がいじらしいやら格好良いやら質感が高過ぎるやらでヤバいなって感じです(語彙力)。introductionとepilogueだけちょっと音量に困りますが。
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【追記 その1】
この記事を受けて、遊佐さんが記事を書いてくださりました、、いや通知来た時マジでビビったよ。本当にありがてぇ、、
シャニPのギャグについての考察は割と「気付いてるの自分だけでは」くらいのドヤり具合だったのですが、優にそれを上回る解釈を提示されて非常に悔しいです。いやマジで。
加えて、感謝祭に関しては自分も綺麗な解釈ができていなかったので、思わず唸るというか、舌を巻かざるをえないというか、、
【追記 その2】
これは割と下らない話なんですが、分別が得意な円香/苦手なシャニP概念って既出だったんですね、、
買ったくせにすっかり頭から抜けてました。
愚かな私を叱ってくれ、円香、、
【追記 その3】
現在、ナツトリップの続編、フユメモリーが絶賛発売中です!!!
【追記 その4】
今回の【ピトス・エルピス】の内容を踏まえた上で【オイサラバエル】について考察をしています。
よろしければこちらもどうぞ。
ということで、後書きを兼ねた謝辞&宣伝(+懺悔?)もこれで終わりになります。
改めて、ここまでお付き合いいただきありがとうございました。