夏 海

言葉を紡いで、光を残している場所。

夏 海

言葉を紡いで、光を残している場所。

最近の記事

【世界蒐集】11日目、しばし休憩

平日の昼間、バスタ新宿に行った。 先週行った街が、まだ夏の街の姿をしたまま、電光掲示板に輝いていて涙が出そう。大きなキャリーケースを抱えた旅行客たち。遠くへ行けそうな気配だけでも楽しめるんじゃないかと思って行ったバスターミナルは、今は苦しいだけのようだった。このまま私、夜の高速道路の灯りも嫌いになっちゃうのかな。 どうやら今は、ただひたすらに吸い込む期間に入ったみたい。本を読んで、映画を見て、誰かと話す。 ああ今、混沌としているなと思うタイミングがある。自分がまとまっていない

    • 【世界蒐集】10日目、世界の解像度

      ここ数日、人生でいちばんにやらかしたかも、という出来事に落ち込んで、3日ほど経ってしまった。 これはいつか、30年後くらいの笑い話にできたら良い、はたまた墓場まで持って行くか。 今日は美術館に行った。 私の感情の遅さでは、とても追いつける世界じゃなかった。私、言葉にするのが苦手なんだ、本当に。 空想に語彙を持たせること、最高に素晴らしくて素敵なことだと思った。 才能の一言で片付けてしまいたくなる時点で私は、何が好きで何をしていきたいのかを見つけられていない。好きなものがたく

      • 【世界蒐集】9日目、天使の話

        去って行く人の話ばかりで溢れていて、逃げるように本を読んでしまう。切実な読書。 別れが悲しいとかではなく、別れすら悲しめないなら私の心はどこにあるの と思う。自分の感情に自信が持てないから、私は何もないところに生み出される感情に惹かれてしまうんだろう。時々それがとてつもなく苦しく迫って来てしまうけれど、本や映画や音楽で心を動かされている瞬間だけは、私にも一人前の心があるのだと信じられる。 好きなものは偉大。 だから今日は、愛してやまない天使の話。 天使が街に、舞い降りた。

        • 【世界蒐集】8日目、夜色を愛す

          明日こそはもっと明るい言葉に溢れたいと思って、キラキラひかるものを探してみても、自分の心を通すと夜色に染まってしまうのはどうしてなのか。 夜を愛しているけれど、光の中に憧れている、ずっと。 虹が地面に落ちていた。上を向いて歩けない日も、ハッピーを見つけてはいけないわけじゃない。 逃してもいいと、諦めた電車ばかりが捕まるの。 名前に季節が入っているから、私はずっと夏だけを生きられると思っていた。 キラキラとした海とともに生きていけると思っていた。 布団と埃の匂いを肺いっ

          【世界蒐集】7日目、晴れのち豪雨

          1日休憩を挟んで7日目。 泣きたくなるような気持ちにさせるならいっそ壊してくれと思う。簡単にはダメにならない、自分の心の強さまでをも呪ってしまう日は、今日だってあの町にはあなたが変わらず息をしているんだ、ということを思い出してなんとか生き延びている。 果ての見えない山並みと、ビーズに縁取られた湖。 空を写す鏡のような水面と、カーテン越しの木漏れ日。太陽が映す葉の形。 人間らしい生活を束の間取り戻したと思った朝。 嘘みたいに大きい青や緑や黄色を目に灯しながら歩く月曜日。

          【世界蒐集】7日目、晴れのち豪雨

          渋滞に巻き込まれてこんな時間に帰宅。 毎日投稿7日目は、ちょっとお休みしてまた明日〜 このくらいのゆるさでいいの、ゆるゆるとゆっくりとね

          渋滞に巻き込まれてこんな時間に帰宅。 毎日投稿7日目は、ちょっとお休みしてまた明日〜 このくらいのゆるさでいいの、ゆるゆるとゆっくりとね

          【世界蒐集】6日目、雲の中

          1週間連続投稿まであと1日。 今日は旅行先からお届けです。 山が吐き出したため息が、雲となって湧き出している。 それはただ美しくて、何度も観た映画の冒頭を思い出していた。 手が触れられそうに思える雲も、近づいてしまえば霧になってしまうんだよね。 ただ自分の呼吸だけが響く白い空間で、ようやく私はひとりになれた。 水の中の感覚と似ている。 祈りの場での君を想う。 私は隣の君が願うことすら知らないらしい。 何処へ行っても人は住んでいるの。 独りきりではない気がした

          【世界蒐集】6日目、雲の中

          【世界蒐集】5日目、台風の詩

          5日目。 朝が来ても、寝静まったような暗さの街はとても居心地が良かった。夜が好きなんだな。 夜ご飯は焼肉。自分で自分のご機嫌をとっていこう。金曜日の夜の無敵感は何にも代え難い。 季節が変わる頃には、雨がよく降るらしい。 彼女は今日、この街を抱いて眠ることにした。薄暗い産屋の中で、街は寝静まる。 いつまでも起きていては駄目。電気を消して。 灯火管制。 窓の外には鯨が泳ぐ。 幻と知りながらも手を伸ばす。 銀色の巨大な鰭を、目の前で翻しながら泳いでいく後ろ姿が、瞼の向

          【世界蒐集】5日目、台風の詩

          【世界蒐集】4日目、小さな旅の記録

          無事、三日坊主を抜け出し4日目になりました。 今日は、先週末の大切な記憶を残しておくことにした。どんなに忘れたくない出来事や感情でも、どんどん忘れていってしまうことが恐ろしくてたまらないのです。 土曜日。いつもならもう少しだけ微睡を楽しんでいるベッドを抜け、いつもより少し丁寧にメイクをして、電車に乗った。まだ夏の日差しが残る9月の日、私は小さな旅をした。憧れの女の子に会うために。 何年振りかに乗る一人の新幹線。駅で少し奮発してのどぐろ入りの柿の葉寿司をレジへ差し出す。内心

          【世界蒐集】4日目、小さな旅の記録

          【世界蒐集】3日目、

          3日目も投稿することに成功。 明日からの目標は、三日坊主にならないことです。 週末に買ったネムの木。 平日は葉が開いているところを見れなくて寂しいね。朝は私よりゆっくりと目を覚ますし、夜は私より先に眠りにつく。週末にまた会えますように、あと2日をなんとか乗り切りましょうか。 駅に落ちたハンガーは、過ぎた季節の忘れ物。 風に流れて旅をする場面を想像して、どこへも行けない気がしていた教室を思い出す。 初めて叱られた日、あの西日の生ぬるさを僕は忘れることができない。 雨に

          【世界蒐集】3日目、

          【世界蒐集】2日目、眠る街の詩

          毎日何かを書いて残そうと決めて、今日はいつもより周りの世界をよく見ている気がした。 ついつい考えごとに耽りながら周りを見ずに歩いてしまう私が、もっと世界をよく見て愛していくために、これはとても有効かもしれないと思えた。 100%の厳しさ冷たさむき出しで大嫌いにさせてくれれば良いのに、今日も東京はほんの一欠片のやさしさを渡す。 私がこの街を嫌いになれるまで、あと千年。 東京の空が見えないのは、狭いから、ではなく、高いからである、らしい。 空の丸天井を目指せば世界の秘密を暴ける

          【世界蒐集】2日目、眠る街の詩

          【世界蒐集】始めます。

          毎月noteを更新しようと思って、いつもうまくいかない。やる気がなかなか湧いてこないなんて、やっぱり私は文章を書くのがそんなに好きじゃなかったのかな、なんてちょっとへこむ。 そんな気持ちをどうにかしようと思って、毎日、だった一文でも良いから言葉をここへ落としていこうと決めました。(全然毎日は無理かもしれないけど)(ほぼ毎日 にもならないかもしれないけど) 詩でも日記でも、言葉の形を借りていればなんでもありとします。 無理のないペースで、楽しい気持ちいいと思えるくらいでやってい

          【世界蒐集】始めます。

          3年ぶり、祖母との再会

          3年ぶり。 実に3年ぶりに、祖母と再会をしてきました。 施設に入居している祖母とは、ここ3年の間、コロナでずっと面会ができず(本当は1回してるけど一瞬すぎた)でした。貧血の症状があるということで入院してしまったと聞いて、病院まで。 会社帰り、正面入り口の閉じた暗い病院の敷地内を歩き、少し苦労して見つけた小さな扉を母とくぐる。面会の旨を伝え、紙に名前を書いてバッジを貰い、そのまま病室へ。 長いことまともに会えていなかったのが嘘みたいに簡単だった。 エレベーターで4階まで上り

          3年ぶり、祖母との再会

          冬の終わり、旅の雑記

          部屋に迷い込んだ羽音を、逃すための窓辺。ストーブを消した匂いに、混ざるのは少しぬるい雨。あの人たちを救えたとか救えなかったとか、そんな次元にすら立てない私は、小さな小さなその音だけでも離してあげたかったんだ。それすら叶わず呆気なく殺されて、本当の暖かい風が吹く頃には忘れたことすら忘れている。 知らない人たちが知らない生活を当たり前に紡いでいることを目の当たりにした時、実感を伴った寂しさがある。私は絶対に君にはなれないし、一生かかっても君の目で世界を見ることはできない。でも、

          冬の終わり、旅の雑記

          2月、書き散らし

          永遠などない って言葉を当たり前に受け止められているなら、この星や私たちさえも永遠に続くはずがないって、きっとみんなわかっているのか。私がいなくなったあとの世界なんて本当にどうでもいいんだけど、こまめに電気のスイッチを消して回る。結局、私の美しい地球 がなくなるのは嫌なんだ。本当に勝手な話。 他の植物動物と同じく、ただ子孫を繋いでいくために生まれて生きているのならば、どうか思考などできない存在でありたかった。哲学などできない、ただの葦でありたかった。 知らない音楽に鳥肌が立

          2月、書き散らし

          私が写真を撮って文章を書く理由

          ずっと、自分は「器」の側にしかいられない人間だと思っていた。 「思っていた」とか過去形で書いたけれど、本当は「思っている」が正解なのかもな。誰かの生み出した素晴らしいコンテンツを、ただ受容する、「器」の側の人間。受け取ることしかできない人間。 「うちの一家には芸術の才能はないからね」 昔から聞いて育った母の言葉。確かに親戚を含めて、いわゆるクリエイティブな仕事についている人は知らない。 オール5に近かった小中学校の成績も、音楽や図工はいつも4だった。そのたびに、「芸術の才能

          私が写真を撮って文章を書く理由