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それでもまた旅をしたいと思えるのは
あの頃の旅行
ネットで旅行の予約が出来なかった頃、なけなしの金で熱海に行った高校生の時の記憶は、今でも僕を旅に駆り立ててくれる。
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旅行は元々好きでは無かった。
家族は良かれと思って連れていってくれたけど、あまり自由を感じられなかった。
別に乳搾りもしたくないし、家族で風呂になんか入りたくない。当時は生魚も食べられなかったから少ししんどかった。
特に帰りの海ほたるSAで試食ババアが塩辛を無理やり食わせて来てゲロったことがトラウマになり、20過ぎるまでほとんど海鮮がダメになった。
高校生になって、熱海に行こうと思ったのは単純に近くて安かったからだ。
本当に初めて行った時はグリーン車すら乗らず普通席で行った。それでも大変さよりも楽しさが勝って、駿河湾が見えた時は人知れず興奮した。
当時コカコーラの自販機ではハッピー缶なるものがあり、低確率でイヤホンやグッズが付いてくるというイベントをやっていた。
僕らは大馬鹿者で、熱海市内のコカコーラを買いまくった。あたり目当てで10缶以上買ってコーラの大半を持て余した。
伊藤園の安いホテルにチェックインしてすぐ、広い部屋に浮かれ飛び跳ね、天井の縁に頭をぶつけて血を出した奴もいた。
熱海で食べたラーメンやマクドナルドはいつもより美味しかった。曇天なのか晴天なのか分からない熱海の空模様も特別感があり、きっと友達と行ったからこそ見える景色だったんだと今ならそう思える。
渋温泉
奇跡的に今でもあの頃の友達と交友がある。それでも何人かはすれ違いがあり、仲違いする事もあった。
恥ずかしながら、自分も何度も皆と縁を切ろうとした。デート中に警察のフリでイタ電された事やインスタをいじられてメッセージを送られたとか、これ以上書きづらい事すらあるのだが、多分自分も何かしらでヘイトを溜めていた気がするから良しとする。
久しぶりの長野県は、もう7度目だった。
僕の第3の故郷である渋温泉がある県だ。
僕は人生が上手くいかなくて、何も信じられなくなった事があった。自信も無くなって、どこか静かな温泉に行こうと思い目指したのが昔モンハンともコラボしていた長野の奥にある渋温泉だ。
そこでちょっくんという居酒屋に出会い、
昭和の概念みたいなとんでも親父のマスターや女将さんと色んな話をした。
そこで喰らったのはおそらく昭和というむさ苦しく、説教臭い独特のエッセンスだった。
「男は根性だ、ダメになったら倒れてしまえばいい。」
店のマスターなのにバカスカ煙草を吸い、片手でスコッチを嗜む男は僕にそう言った。
その言葉が響いてからも、何度も逃げようとして実際逃げたこともあったけどどうにか日々を繋いで生きている。
そんな落ち込んでいた時の僕の事を、マスターは「全然喋んねえから自閉症かと思ったよー」などとしゃがれ声で言い放った。
なかなか堪える言葉だが、そう思われても仕方ないぐらいには落ち込んでいたのだ。実際人見知りすぎてろくに話せなかったから。(たまに他の奴に茶化される事があり、その時は静かに殺意の炎に薪をくべている。)
そんな渋温泉を友人たちも気に入ってくれて、何度も通っている。
久しぶりに訪れたら、馴染みの射的屋のお婆さんが亡くなっていた。
彼女が出来てから初めて訪れた射的屋だったのでただただ寂しく、コルクを詰める度に次来た時には既に終わっている気がして辛かった。
お爺さんはそれでも店に立っていた。
喪失感故か、どこか虚無を感じるけど自分や友達、他のお客さんとも会話を楽しんでいる姿が素直にかっこいいなと思った。
僕はもし大事な人を失ったら、今以上に何も出来なくなるから。
あれだけ待ち遠しく、楽しかった旅は呆気なく終わっていった。
帰る間際の長野駅で、僕は苛立ちを感じる事があった。そんな大した事でもないけど、きっとその時が終わる事が嫌だった思いや前日の酒が残っていて小さく爆発したんだと思う。
気づけば僕はレモンサワーを10〜15杯近く飲んでいて、地元の川崎で友人とサシで飲んでいた。何を話したかは全く覚えていない。後から見た写真では、僕は長野の店先でぶっ倒れていた。本当に五体満足で帰って来れてよかったと思う。何故松屋でチーズ牛めしを食ったのかも思い出せない。
意地悪く朝まで飲み続けたけど、結局「次の日」が訪れてしまった。朝日がこんなにもムカついたのは人生に2度もないだろう。
僕はまたみんなと旅に行けるのだろうか。
どいつもこいつも連絡不精で返信も催促しなければいけない、何度も同じ事を聞いてきてイライラする時もある。
それでも、それ以上に感じられる愉しさ。
僕はそれがクセになってしまって、何度も旅行を立案するのだ。
旅に出る理由。そんな事をテーマに書いてみたけど、結局うまくまとまらなかった。
懲りずにまた旅に出る。出たいから。それでいい。