【旅行記⑥】ついにお目当てのマグリット美術館へ。メシには2€、美術館には187€払う女。
今日はついに、この旅の主役であるマグリット美術館に行く日です。生理2日目ということもあり、リカバリーも兼ねてのんびりすることに。9時半くらいまでホテルでゴロゴロしたあと、徒歩10分くらいのところにある美術館にのっそりと参上しました。
美術館にはさまざまな美術品がロープに囲まれない状態で置かれています。以前取材したこちらの記事↓でも伺ったように、美術品=公共の財産であり、誰でもアクセスできるようにすべき、という考え方があるのでしょう。
美術館の中では、いくつかの小学生グループが校外学習をしていました。輪になって床に座り、絵のモチーフや表現意図についての解説を受けています。
日本でもこういう取り組みってやっているのでしょうか。残念ながら私はこういう授業を受けたことはないけれど、もしそんな機会があったら素敵だなと感じました。
ロッカーに荷物を預けたら、いよいよマグリットの作品とご対面です。年表はフランス語、オランダ語、英語の3言語だったのでなんとか読めましたが、各絵画の解説やマグリットの書簡は(当たり前ですが)フランス語のみなので歯が立たず。ひとつひとつGoogle翻訳を駆使して解読していきました。
これまで、彼の作品には画集や京都での展示を通して触れてきましたが、やはりマグリット美術館だからこそ得られるものがたくさんあって。
たとえば年齢を逆算して、20代半ばのマグリットが「お恥ずかしいことに、とにかくお金がないのです。私にはジョルジェット(妻)を幸せにする責任があります。どんな仕事でもやるので紹介してください」と懇願しているのにいじらしさを感じたり。
年表に「アンドレ・ブルトン(シュルレアリスムの思想的リーダー)と仲違い」などと書かれていると、「ははあ、30前後か。プロとしての自我が出てくるころだもんね」と感じたり。
晩年になっても貪欲に新たなジャンル(彫刻)に挑戦する姿勢に感銘を受けたり。
なぜ彼が青空ばかり描くのか気になっていたけれど、1週間のうち6日は曇ってるか雨降ってるかの気候を体験したことで、「そりゃ美の象徴が『青空』になるわな」と納得したり。
画集で知っていた作品をこの目で見られた感動に加えて、さまざまなメモやスケッチ、習作、写真、映像を見られたことで、より一層マグリットの世界に深く触れられた気がしました。
結局、美術館には2〜3時間いました。その後はショップに立ち寄って、気になったものを片っ端から買っていきます。「こういうときのためにハードワークしてるんだぜ!」と値段も見ずに買い物をしていたら、
お会計は187€(約27000円)でした。わ〜お
ヨーロッパに来てからというもの、2€(300円)くらいの食べ物をつまんで適当に過ごしているのに、美術館には187€払うのかと。90倍もの差に一人でウケてしまったし、店員さんにも「めっちゃ買うやん」みたいなこと言われました。Oui(おう)、めっちゃ買うよ。
さて、大切なお土産を持ち、次に向かうのは「La Fleur en papier Doré(ラ・フルール・アン・パピエ・ドレ)」というパブです。ここはマグリットの行きつけで、写真も飾られているのだとか。それは、行くっきゃないですね。
が、結論からいうとお店は閉まっていました。ドアには何やら貼り紙がしてあり、少し前に「ちょっとした問題で」閉店し、再開の見込みは立っていない旨が書かれています。
張り紙には、同じくここを訪れたであろう旅行客たちからの「なんて残念なの」「早く再開して!」「こんなに素晴らしい場所が閉まっているなんてもったいない」という手書きのコメントが残されていました。まったくもって同感です。
仕方がないのでフラフラ歩いて行くと、何やら人がたくさん集まっている場所に出ました。ああ、なるほど、
小便小僧こと、Petit Julien(ジュリアン君)です。
そして、あらゆる観光地がそうであるように、ジュリアン君のまわりはお土産屋さんまみれです。OK、今日はお買い物デーにしようと決めて、友達や家族に贈るためのお土産を大量に買い込みました。
会計を済ませ、チョコレートがいっぱい詰まった紙袋をウキウキで受け取った私。ところがすぐに真顔になりました。「ダンベルか???」ってくらい重かったからです。
いや待て。これ持って帰るの?っていうか、これ持って明日パリ行くの?無理無理、筋トレしに来たんじゃねんだよ。
ってなわけで、多少高くとも郵送することに決めました。お金は帰ってから稼げばいいけど、「荷物が重いからいいや……」と動きが鈍くなって、何らかのチャンスを逃してしまったら、取り戻せませんからね。
さて、日本への郵送方法はいくつかあり、日本に届くまでの日数とサービスの質によって料金が大きく異なります。
はじめはクロネコヤマトさんにお問い合せをしたのですが、段ボールすら持っていなかったため、今から動き出すのは難しいことが判明。ちょっと不安でしたが、bpost(ベルギーにおける、日本郵便みたいなやつ)に行くことにしました。
(この方のブログで予習していきました。ただ、今は手続きがデジタル化されているので、入力フォームもタブレットへの入力に変わっていました)
ホテルから近いbpostはブリュッセル中央駅にありました。それも専用窓口ではなく、Relayというコンビニみたいな店がbpostも扱っている形です。
段ボールもそこで買えるので、送りたいものだけ持って行けばOK。箱を買って荷物を詰め、タブレットに情報を入力し、重さを計ってもらい(国際便は箱の大きさではなく、重さで値段が決まります)、お金を払って完了です。ちょうど、日本のコンビニでメルカリを発送する要領ですね。
ちなみにチョコレート達+マグリット美術館のおみやげは、合わせてなんと5.4kgもありました。マジのダンベルじゃん。送料は131€(約19000)円、痛い出費ですが仕方がありません。
無事に荷物が軽くなり、部屋に戻ってシャワーを浴びます。昨日会った香港人の女の子(前回記事を参照)とディナーをする予定だからです。
ここまで、防犯も兼ねてノーメイクで過ごしてきましたが、友達とのディナーとなれば話は別。持ってきたメイク道具で最低限の身だしなみを整え、ちょっぴり髪も巻いて出かけました。こんなことなら、1枚くらいかわいい服を持ってくれば良かったです。
レストランへはホテルから徒歩2分ほどでした。先に着いていたらしい彼女と合流して、「1杯目はシャンパンしかないよね」と注文。つたない英語ではありましたが、いろいろなガールズトークを繰り広げました。
「マジな話、ヨーロッパの女の子達ってどうしてもカッコよく見えちゃう。ジーンズを適当に履いてるだけでもオシャレに見えるってどういうこと?」
「ひとり旅ってすごく気楽だけど、ディナーだけは誰かと一緒にいたいよね。防犯のこともあるけど、まずもってウチら、そんなに食べられないでしょ?だから1種類の料理しか楽しめないわけ。それならパンで良くね?とか思っちゃう。今日はシェアしていろいろ食べられるから嬉しい」
シャンパンを飲んでいると、少しずつ気分がほぐれて、だんだんとプライベートな話になっていきます。実は歳も1つしか変わらないことが分かり、話題は自然とお互いの恋愛や結婚、キャリア観の話に。
「これってアジアだけなのかもしれないけど、世の中ってウチらに『30歳までに結婚しろ』ってめっちゃ迫ってくるよね?」
「しかも、なんで結婚=子どもなわけ?私は希望してないのに彼氏の親がすごく言ってくるよ。だけど、ここで屈して何になる?次は『二人目はいつ?』『男の子を産むべき』とかいろいろ言ってくるでしょ。だから無視、無視って感じ」
「婚活パーティにも行ったけど、私には合わなかった。私みたいに世界中ひとりで旅行できちゃうタイプってモテないみたい。マッチングアプリのほうが価値観の合う人に出会えるよ。『アプリなんて』って人もいるけど、香港にも真剣な恋愛に特化したアプリがあるから、そっちを使えばわりと安全なんだよね」
n=1ではあるけれど、どこの国でもアラサー女性の悩みって同じみたい。多分に分かり合える部分がありました。
ちなみに、彼女はいわゆるエリートらしく政治や地理にも明るいので、道中の会話もとても刺激的でした。
「日本でもそうだと思うけど、駅の清掃スタッフさんって高齢の方があまりよくない時給で働いてることが多いよね?でもベルギーだとけっこう若い方が働いてる。賃金がいいのかな?」とか、
「香港の住宅事情は最悪。住宅の供給量が圧倒的に少ないから、価格が上がり続けてる。長時間労働も問題だし。日本はどうなの?」とか。
(香港の住宅価格は世界でもトップクラスなようです)
https://www.homes.co.jp/cont/press/rent/rent_00273/
こういう会話についていくには、まずもって自分の国をよく知らないといけないなあと再認識させられました。
2杯目を飲んだあとは、「ヨーロッパに来て初めて『暑い』って感じてるわ」と笑う彼女とともに店を出て、酔い覚ましの散歩に出かけました。
グラン・プラスあたりに行くと、何やら建物がプロジェクションマッピングされています。しかし色が、
けっこうな感じです。魔王城かな???
おそらくクリスマスカラーなのだと思いますが、「天国っていうより、ちょっと地獄みあるね」と顔を見合わせてしまいました。
明日はパリへ移動する日、彼女ともここでお別れです。お互いの無事を祈り、ハグでさよならしました。「袖すり合うも多生の縁」という言葉がぴったりのディナーでした。
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