『科学とは』の謎。
数日前に日経を読んでいて、ちょっと気になったのが、こちらの記事。
記事の中には、
という問いに対して、明確な答えがありませんでした。
わたしは、あえて引用するなら、この部分かなと思いました。
主なアプローチは、記事の言葉を借りれば、こんな感じになるでしょう。
そして、忘れてはならないのが、この前提条件。
この記事の何が気になったのか。それは、
ということ。
英語であれば、この前半部分の<予測>までが「Science(科学)」の範疇で、後半の<制御>は「Technology(応用・技術)」になると思います。
日本語では、どうもこの2つの言葉がゴチャ混ぜの印象なのですが、英語では、Science と Technology は、理論と応用技術。あきらかに別物なのです。
それはなぜか。
Science とは、そもそもラテン語で「知る」を表す scio が語源。
宇宙を司る<真理>を知るための学問です。「世界はどのような法則で成り立っているのか」を解き明かすために、森羅万象を観察し、実験を繰り返します。
一方、Technology はギリシア語で「技」や「人為」を表す tekhnē が語源。
Science によって明らかになった<真理>を応用するための技術開発の学問です。
海外(少なくとも西洋)では、<真理探究>と<技術開発>は一対をなす別々の活動とみなされています。そこが日本と大きく異なるのです。
また、この記事では科学と理数系を結びつけて論じられていますが、本来「Science(科学)」には「人文科学」「社会科学」など、文系の学問分野も含まれます。文系の学問にも<真理探究>という特徴はあるのです。
さらに、冒頭に述べた科学的なアプローチは、海外では「学問」ではなく日々の生活にも密着しています。
それは、たとえばこんな記事からも伺い知ることができます。
この記事の中の、下記太字部分は、まさに「科学的アプローチ」そのものです。
英語では、このような記事になっていました。
該当箇所は、以下太字の部分です。
元ネタは、アマゾンのこちらの発表です。
該当部分は、こちらです。
この発表の中の「one-size-fits-all approach for how every team works best」の部分が、「何が真実か」という最適解(真理)を指しています。会社経営において、マネジメント層は明確に「科学的アプローチ」に基づいた判断を行っており、それを社内外にもしっかりと発信しているのです。
日本の「科学 ≒ 理数系」という思い込みは、世界の「Science ≒ (何が真実なのかを観察や実験を通じて)知る活動」という定義とかけ離れています。
ですから、
という質問から日本人が受ける印象と、
という質問から海外の人が受ける印象は、かなり違うと予想されるのです。
もしかすると、この「言葉」の持つイメージの違いが、
という実験結果に多少なりとも影響を及ぼしているのではないか。
わたしにはそんな側面があるような気がしてなりません。
ところで、先日梅棹忠夫さんの『文明学の構築のために』(中央公論社)という本を読みました。その中に、こんな言葉があったので、ご紹介しておきます。
理科や算数にかぎらず、暗記の学問ではなく、
というのが本来の「科学」のあり方なのだとするならば、文系・理系の垣根を越えて、きっとすべての人にとって、日々の生活に密着した、とても楽しい知的活動になるのではないでしょうか。(もちろん、暗記も<大切な原理原則を知る>という上で大切な一要素ですが)
わたしにとっては、「語源」を学ぶこともその一つ。「語源」は英語で etymology と言います。これはギリシア語で「真の」を表す etymon が由来。「その言葉は本来何を意味していたのか」を確かめる、<真理の学問>のなのです。
英語と日本語の微妙な温度差に気づけるのは、語源のおかげ。
それは、どんな分野でも、きっと楽しい活動なのだと信じています。
◆最終更新
2021年10月29日(金) 09:00 AM