地球の歩き方「ムー」
先日仕事中の私に夫がLINEを送ってきた。
それがコレ。
地球の歩き方って旅行雑誌だったよね?でもさすがムー、富士山に目があるよ。私は仕事の手を止めた。
神秘の国の歩き方……ちょっとだけ見てみよう。
URLをクリックすると「週末ちょっと異世界へ」の魅力的ワードが私を誘ってきた。
次のページは……日本全国UFO目撃MAP。
おっふ。これは今見たらいけんやつじゃ。
…もうちょっとだけ……日本三大怨霊?
夫は私の好みをよく分かっている。でも、今日在宅勤務だったよね。仕事しろ。
スマホの画面を落とそうとするとまた通知が来た。
こっちは世界版だ。表紙にピラミッドの絵が描いてある。例の目は日本版よりパッチリで青い。さすがムー、芸が細かい。
わ~気になる~。でもどちらか買うとしたら日本版だよな~。海外旅行は我が家の家計では無理そうだし。
仕事を終えて帰ると夫が「どちらにする?」と聞いてきた。
「両方気になるけど、やっぱ実際に行くことを考えたら日本版だね」
「ワシ明日半日休みじゃけん、本屋に行って買って来ようか?」
「ほんと?お願い」
家に帰ると机の上に三冊の本があった。
「え?なんで?」
「ちょっと立ち読みするだけのつもりじゃったんじゃ」
夫は言い訳がましく説明している。
「世界版、やっぱり面白いよ。読んだら止まらんようになったけん」
「……これは何?」
こんなのもあったの?
「これを見たら買わん訳にはいかんじゃろ?」
た、確かに。でも一冊の本を頼んだのに三冊買ってくるって。まあいいか、共通の趣味として家計で払おう。
ひょいと裏を返して価格を見た。
2,420円×3冊=7,260円
(た、高い。この給料日前に7,000円超えの出費はきつい。今払うと明日の食費が……)
悩んでる私に夫は「お金は給料日後でいいよ~」と呑気に言いジョジョ版を読んでいる。
私はイラッとして夫を睨んだ。
なんか君、随分懐が暖かいようだね。ちょっと財布の中身、私に見せてみぃ。
それから暫く二人で無言で本を読んだ。初めの頃は犬のナツがちょっかいをかけて来ていたが、二人共無反応なので、すっかりいじけ、部屋の端から暗い目つきで睨んでいる。
今日はここでやめとこう。私は諦めて本を閉じた。このままではナツの生霊にやられ体の調子を崩してしまいそうだ。
夫は満足したように言った。
「ジョジョ版、面白いじゃろ~。荒木先生が描いたジョジョの世界をこのガイドブックを見ながら巡ることが出来るんよ」
夫が独占しているので私はまだジョジョ版を読むことが出来ない。
夫はさらに恩着せがましく言った。
「あんたが行き詰ってる『Blood of Hivagon』の参考になると思って。いっそ舞台を外国にしたら、海外旅行経費で行けるよ~」
あ、今傷口抉ったね。前回note創作大賞に「漫画原作部門」で応募して、一次審査さえ通らず落選した作品。宣伝のつもりでエッセイ書いたらそちらの方が読まれているという‥。
外国が舞台ねぇ。書いてもいいけど、どこからも経費は出んよ〜。まあせっかく夫が3冊も買ってきてくれた本を参考に何か書いてみるか‥。