本当にお別れをした話
元彼と会った。
これが最後になることはなんとなく分かっていた。案の定、最後に彼は連絡を断ちたいと言った。
ちゃんと分かってた。
勇気を出せずにいたのは私の方だった。ラインで繋がってること、インスタにいることが心のどこかで私の支えだったのだ。
でも私の中ではとっくに終わってたから、もちろんこれでよかったんだけど。
ほんとのとこは、これで終わり、とかじゃなくて自然に終わりたかった。
別に連絡なんてそのうち取らなくなるし、いずれお互い何をしてるかなんて気にならなくなる。
だから自然でいいじゃんと思っていた。
でも彼はそれじゃダメだったらしい。
私は切り替えが割と早い方だけど、彼は得意じゃない。それも分かってる。
全部分かってるけど、改めてもうこれで終わりってなったら涙が今にも溢れ出そうだった。
別れ際、あと一言、何かを発したら涙が出そうで最後は何も言えなかった。どうしても彼の前で泣きたくなかった。
だからなんとか堪えられて、手を振れてよかった。
もう彼を頭の片隅に置くのはやめよう。というかやめざるを得なくなった。
家に着いて、こんなにすっぱり縁を切るのが悲しいなら、もういっそ誰とも出会わなくていいのにと思う。自分の思いとは裏腹に別れるのって本当に辛い。
だが彼との別れで1番辛かったのは、もう2度と彼を好きだった自分に戻れないことだった。それが何より悲しい。
別れてから数回電話しても、2度会っても、やっぱり彼を好きだとは思えなかった。
彼の顔を見ながら、もう1ミリも好きだと思えない自分を思い、心から悲しかった。
自分の中で完全に終わっていたのだ。
何が好きだったのかももう思い出せない。
それなのに、ラインやインスタを削除するのは悲しいなんて矛盾している。そんな私の矛盾に付き合わせて申し訳なかった。
でも私は無理に忘れることとか、写真を消すとか、もらったものを簡単に捨てるとかはやはりできない。
というかそんなことは必要ない。だって彼と過ごした時間だって、私にとってはすごくすごく大切な瞬間だった。
私をどれだけ成長させてくれたか、私にどれほど自信をくれたか分からない。
だから彼を忘れるというより、その過程を忘れる方がよっぽど嫌なのだ。
無理に忘れる必要なんてない。
私の場合、思い出は時間が経てばちゃんと風化するし、大事な学びは自分の血と肉になる。
ただし私の場合は、だ。
だから最後くらい彼に合わせてあげられてよかった。
散々彼を振り回してきたのだから。
それに彼も言ってたけど、次の年にこの縁を持ち込まなくてよかった。
私が1人ではできなかったところを彼が強制終了をかけてくれた。ありがとうと、むしろ感謝すべきだった。
終わり、というよりやっと始まりという感じかもしれない。
涙を流し過ぎてなんだか体の中が乾いてきた気がする。