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ダッチ・デザインウィーク(Dutch Design Week 2024)現地レポート🇳🇱

2024年10月19日(土) 〜 10月27日(日)にオランダ・アイントホーフェン市内で行われていたDutch Design Week 2024に参加してきました。まだ日本ではあまり知名度の高くないこちらのイベントをかいつまんでご紹介したいと思います

ダッチ・デザインウィーク(Dutch Design Week)とは

北ヨーロッパ最大のデザインの祭典とも言われるダッチ・デザインウィーク。開催地であるアイントホーフェンは、南オランダ最大の都市で、フィリップスなどの大企業が本社を据えるオランダ有数の工業都市です。開催期間中は市内各地で展示会、ワークショップ、セミナー、パーティー等が行われていました。

公式HPより。2024年のテーマはreal unreal

周遊のヒント

ダッチデザインウィークは公式Webサイトやマップがしっかり作り込まれているため、初めてでも周遊しやすいです。

公式マップ。エリアごとに番号が振られており、webサイトで照合できます。マップ内にService&InnovativeやProduct&Craftなどカテゴリが記されているため、自分の興味のあるエリアを見分けることができます

会場は基本的に11時〜18時オープンです。期間中は展示のほかに、ワークショップやトークセッション、夜のイベントなど豊富なので、事前にチェックしておくことをお勧めします。

エリアについて

大きく分けて東・西・センターの3つに分けることができます。
東に位置するエリアB(STRIJP-S)がメイン会場とも言えるくらい展示が密集しており、1日目はここを回るだけで時間を使い切りました。エリアA(STRIJP T+R)やエリアC(Next Future Museum)も徒歩圏内です。
センターは展示が点在しているので、街歩きを楽しみながら回ることができます。
西側に位置するエリアH(SECTIC-C)は他の会場から離れているため、バスか車のサービスを利用することをお勧めします。

エリア同士の距離もわかりやすく表記されています

移動手段

コンパクトにまとまっているため、徒歩やバス、自転車で移動が可能です。
レンタサイクルや車のサービスも充実しており、センターエリアからは少し遠いSECTIC-Cに行く際に便利でした。

赤いバスが市内を巡回しています。バスに乗りたい時は、必ず運転手にアピールしないと通り過ぎていってしまうので注意しましょう
車は装飾がしてあるのでわかりやすいです。送迎ポイントはマップに記載されています。車のサービスも11時開始なので、11時までに会場に行きたい場合はバス等で移動しましょう

チケット

期日前までに公式サイトでチケットを購入しておくと、安く購入することができます。もちろん当日チケットカウンターでも購入可能です。オンラインで購入した場合は、チケットカウンターでリストバンドに交換してもらいましょう。

ちなみにDDWのチケットがあれば、フィリップスミュージアムやファン・アッベ美術館なども入場することができます
リストバンドと交換して、公式マップももらって、いざまわりましょう!

ハイライト

ここからは、訪れた中でいくつかピックアップしてエリアや展示を紹介していきます。

Wind Knitting Factory

風力で動く編み機「Wind Knitting Factory」も展示されていました。風の力でマフラーを編むことができる機械で、その場で購入も可能です。この移動できる風力ニット工場は、都市の風を使って持続可能に生産できるプロセスを視覚的に示しています。
https://www.merelkarhof.nl/work/wind-knitting-factory

公式HPより。Wind Knitting Factory by Merel Karhof
羽にはロゴが刻印されています
編み機の上部に設置された大きな毛糸が、ゆっくりと機械に供給されて編まれていきます。編まれたニットはマフラーの形に加工され、「Wind Knitting Factory」のショップで購入可能です。マフラーには風で編まれた日付と時間が記されています

POND (Power Of Nature-based Design) 

POND (Power Of Nature-based Design) は、自然の力を使ったデザインの屋外照明インスタレーションです。水の健康状態を測定し、日没後にその状態を色の投影で表現しています。このインスタレーションは、微生物燃料電池技術(Microbial Fuel Cell)を利用し、水自体がエネルギー源となり、微生物によって発電される仕組みになっています。

公式HPより。Artist impression of the POND installation
実際にVan Abbemuseumの湖に浮かべられており、その様子を観察することができました

CircleFarming

CircleFarmプロジェクトは、新しいオランダの景観デザイン「フードスケープ」(食の風景)や、農業に貢献することを目指して始まったプロジェクトです。CircleFarmingは、限られたスペースをより効率的に管理できる農業の形態として、従来の単一作物を育てる長方形の畑ではなく、様々な作物を円形に配置したストリップ農法を起用しています。今年の展示では、Wageningen University & Research (WUR)と共同で実験が実施され、ロボットアームが開発された様子を見ることができます。

公式HPより。多様な作物を円状に育てるCirclefarming
よく見ると人が乗って手作業をしていることがわかります

MATCHA

日本からは博展のExperiential Design Labが、MATCHAというタイトルで出展していました。Air's Furnitureという、仮設の可能性を広げ、持続可能で新しいコミュニケーションスペースの可能性を探るプロジェクトの一環です。本来の抹茶を気軽に楽しんで欲しいという想いのもと、大きな茶箱を活用した抹茶スタンドを仮設し、立ち寄った方に抹茶を振る舞っていました。伝統的には茶葉の保存や運搬に使われてきたこれらの茶箱を、世界中どこへでも持ち運べるポータブルな箱として再設計しています。
イベントや体験づくりの知見を活かしたHAKUTENならではの視点と日本文化が組み合わさった空間でした。

オランダ人からは苦いと言う人がいたり、フランス人からは海藻やほうれん草のようで美味しいというコメントがあったり、さまざまな反応があったようです。ちなみに日本人の私は、これまで飲んだ抹茶の中で非常に飲みやすく、美味しかったです
お茶を作る過程で使われるさまざまな素材や道具を利用して、バッグや椅子などにリデザインしたものも展示されていました

Class of 24

オランダやその周辺の国のさまざまな大学のデザイン系のコースの卒業制作が集まった「Class of 24」。その場で学生とも会話できるので、ヨーロッパ留学に興味のある人には非常におすすめです。

一度にさまざまな大学の卒制が展示されているため、雰囲気や特色が異なる様子を見ることができます


こちらはIED(Istituto Europeo di Design)のRelations of Careをテーマにしたプロジェクトの作品。手話の形をした模型の裏に、その文字のスタンプが付いています。手話を身近に、楽しみながら学ぶことができます

そこからさらに奥へ進んだところにあるservice&innovative / speculation&socialのエリアでは、テクノロジーを活用した展示が多く並んでいました。

アイントホーフェン工科大学の磁性ソフトロボティクス。柔軟に動くマグネットはまるで生き物のようです
アアルト大学バイオイノベーションセンターとCHEMARTSの共同展示では、さまざまなバイオベースの材料に焦点が当てられていました
エレクトロニック・テキスタイル(e-テキスタイル)。身体の摩擦によって電気を発生させ、より環境に優しいデバイスの充電方法が提案されていました

Drivers of Change

アイントホーフェン工科大学による、技術・研究・デザインを統合したプロジェクトが展示されていました。思考だけでコンピュータを操作できる技術や、誰でも簡単に作曲ができるマシンなどを体験することができます。

Soundsnip。音が録音されたカラフルなコマを、パレット上で自由に動かして作曲することができます
思考だけでコンピュータを操作する実験。念力を送るかのようにゲームを操作します

Dutch Design Awards 2024

20年以上続くDutch Design Awards (DDA) が開催されており、訪れた人が投票できる仕組みになっていました。2024年はDDAの豊かな歴史に焦点を当て、過去と現在の若手デザイナーが取り上げられていました。


Loop Living Cocoon。世界で初めての「生きた棺」で、自然に優しく土に還るデザインです。この棺は45日で分解され、亡くなった人の体からの栄養を自然に戻すことができます。上の画像は公式HPより
Respyreは、どんな垂直の壁や建物でも苔を育てられる技術です。古い建物の壁に苔を育てることができるものや、苔を育てるためのパネルを使って新しい建物を作ることもできます。上の画像は公式HPより
訪れた人が投票できる仕組み

Graduation Show 2024

会場となるアイントホーフェンにある大学、デザイン・アカデミー・アイントホーフェン(DAE)の卒展も見応えがありました。学部生と大学院生の卒展が集まっていたため、会場は建物全体に加えて地下駐車場も会場になっていました。

地下駐車場の展示会場
In-Animate。この光る花は、無生物でも有機的な生命の繊細さを感じさせる動きをしています。生きているものと無生物との境界について考えさせられる作品です


パン作りを通じてコミュニティをつくるプロジェクト。元々フランスでは地域の人と同じ窯でパンを焼く文化があったそうで、このプロジェクトでは地域社会を築くためのパン作りの復活を試みています。ワークショップでは、参加者が道具を使ってパンの形や装飾を作りながら、表現を楽しむ場を提供しています


World Design Embassies

World Design Embassiesは、デザインの力を活用して、社会的課題に対して新たな視点や具体的な方向性を探求する取り組みです。大使館ごとに展示が行われており、政府がデザインの力を信じて積極的に推進していることに感銘を受けました。

Embassy of Foodによる展示。健康的な食べ物が水道水のように当たり前に手軽に手に入るものだったら?という問いかけのもと、街角にヘルシーな食べ物を提供し、ファストフード文化に代わる選択肢を提供するというビジョンを提示していました
Embassy of Circular & Biobased Buildingによる展示。Urban Reefは、地元のクレイなどから作られた、3Dプリントの外壁モジュールです。都市の生態系に不可欠な多様な微気候や生息地を創り出すことで、気候変動の影響を和らげると同時に、持続可能なシステムを提示しています

おわりに

日本ではまだあまり知名度の高くないダッチ・デザインウィークですが、これからの素材やテクノロジーのあり方、社会とデザインの関わりなどをさまざまな視点でみることができました。政府や街全体がデザインの力を信じてプロジェクトを推進していることも肌で感じ、サステナブル、ソーシャルデザインに関連するデザインはもちろん、アートやクラフトの展示も豊富で、参加者自身が関われるワークショップやイベントも行われているため、幅広いデザインに触れることができます。また、オランダ国内外の大学の展示がたくさん見れることも、ダッチ・デザインウィークの魅力の一つではないでしょうか。
今後の北欧デザインの盛り上がりを感じることができる祭典です。

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