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国家、宗教、性別による争いに代わって調和とバランスが訪れれば、世界はどんなに美しい場所になるだろう『モンドリアン よりよい世界へ』

オランダを代表する画家のひとりであるピート・モンドリアン(1872-1944)。名前を聞いてピンとこないという方も、水平と垂直の直線と、赤・青・黄の三原色のみを用いた作品を見れば、「ああ、あれを描いた画家ね」と思っていただけるのではないでしょうか。


赤・青・黄のコンポジション(1930)
美術の教科書に載ってたなあ。

そんなモンドリアンの生涯を描いたグラフィックノベル『モンドリアン よりよい世界へ』が2024年10月に発売されました。フランクフルトのブックフェア用にオランダ文学基金が制作した版権カタログの表紙にも採用された(グラフィックノベルが表紙を飾るとは!!)期待の作品です。モンドリアンが自身の芸術を完成させたパリ、ロンドン、ニューヨークで過ごした時期の波瀾万丈な日々を描いています。

『モンドリアン よりよい世界へ』エリック・デ・グラーフ
スクラッチ社、2024年、320ページ(フルカラー)

世界的に有名なオランダ人画家ピート・モンドリアン (1872-1944 ) は、赤、白、青、黄色の表面を滑らかな黒い線で区切った革命的な画家として広く知られています。あまり知られていないのは、この芸術家がよりよい世界への青写真として、作品のバランスと調和を追求することを自分の使命と考えていたということです。


芸術における調和と均衡を追求することで、芸術は人間社会の青写真として機能することができる。それを達成するための方法は、作品からあらゆる雑音や雑念を取り除き、普遍的な形だけを使うことだった。


作中では、モンドリアンがヨーロッパで台頭するナチズムから逃れ、パリ、ロンドン、そして最終的にはニューヨークまで人生の最後の11年間をどのように過ごしたかが描かれます。第二次世界大戦を背景に、モンドリアンは亡くなるまで世界の増大する闇に光をもたらす方法を模索し続けました。

洗練された美しい作画に目を奪われます。

モンドリアンの絵画は、大きさや配置の違いはあっても、すべての形と色が等しく重要である。この哲学に魅了されたマンガ家エリック・デ・グラーフによるオンラインとオフラインでの徹底的なリサーチ、旅行、インタビューを通して、モンドリアンの最後の11年間がドラマチックに再構築されています。

コンポジションを鑑賞するミッフィー

モンドリアンの作ったデ・ステイルという芸術運動は、ディック・ブルーナにも影響を与えています。黒くて太い線と、赤青黄色の平面的な着色は、まさにブルーナの絵の世界です。ブルーナファンの方にも興味を持ってもらえるのではないかと思います。


著者と子どもたちがいっしょに展示を見てまわります。

現在、オランダのアメルスフォールトにあるモンドリアン・ハウスで出版を記念した展覧会も開催されています。先日、作者であるエリックによる子ども向けのマンガ制作ワークショップが行われ、息子も参加してきました。


マンガ制作ワークショップの様子。世界をよりよい場所にするためにはどうすればいいか
というテーマでマンガを描きました。

日本語で読めるモンドリアンについての書籍はあまりないので、皆さんにぜひ読んでほしいなと思います。

作者エリック・デ・グラーフHP

出版社HP


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