佐賀県の報道について考える。
現在、テレビ、新聞、インターネット上で、佐賀県のコロナ交付金の使い道についてたくさんの報道がなされています。
そのことについて、いち県民として、いち地方自治に関わる者として、考えを述べたいと思います。
前提として、伊万里市の市議会議員である私は県政について正確に説明できる立場ではなく、ここから書くことは私の推測でありいち個人の見解の一つとしてお読み頂ければと思います。
①佐賀県知事が番組の生出演を断ったことについて。
これは当然と思います。
11月26日から佐賀県議会11月定例会が開会しており、12月16日の閉会までは番組に出演するべきではないと思います。
また、現在問題になっている使い道のあれこれは、空港に宇宙空間をつくるというもの(9月定例会にて可決)以外は今開催されている県議会に「審議してください」と上がっている議案です。
それらに使うと決定したわけではありません。
もしそれらが既に決定した議案であって、なおかつ定例会中でなければ出演の可能性はあったかもしれません。
しかし、未決定の議案かつ、今まさにそれらを審議している定例会中です。
出演をお断りされたのは知事として当然と思います。
(番組内でYouTubeチャンネルには出演してもいいという知事回答があったとの発言がありましたが、それについては全く解らないです。単純に会いたかったのでしょうか…。)
②番組が投げかけた各質問について、佐賀県から回答がなかったことについて。
これも理解はできます。
議会の中で一般質問や委員会質問などで質問や意見が出るだろう審議中のものについて、先に番組に回答するのは議会=県民を軽視することに繋がるおそれがあります。
知事も「まずは県民の皆さまと県議会にご説明したい」と仰っていました。
番組では「県議会で説明するより番組で説明したほうがたくさんの人に伝わる」ということを仰っていましたが、確かにそれはそうでしょう。
ただ、例えそうだとしても、決定事項ではない審議中のものについて回答することはしたくてもできない状況にあると思います。
そういう理由から考えると、既決している空港の宇宙空間の件については、9月定例会で議員からも質問が上がっていたようですし、回答されても良かったのではないかと思います。
③コロナ交付金の使い道について。
佐賀誓いの鐘の製作については、県議会の動向を見守りたいです。明日3日の一般質問で質問すると通告されてる議員さんもいらっしゃいます。
県議会はインターネットでの生中継や各ケーブルテレビで放送されています。もちろん傍聴もできます。これを機に、議会をご覧頂ければと思います。
体育施設のトイレの洋式化と電光掲示板等の購入については、4年後に佐賀県で開催される第1回国民スポーツ大会(旧国体)のための設備投資ではないか、コロナ交付金でやることなのか、との番組内発言がありました。
これらの施設が国スポで使用される施設か否かは把握していないのですが、仮にそうだったとしても、私はあまり責める気にならないところです。
今回のコロナ交付金の一部を設備投資に使った自治体は数多くあるでしょう。
伊万里市も例外ではなく、災害時の感染症対策として指定避難所の空調設備工事に使いました。
議案が提出されたとき、これは市の一般財源で行うべきものではないかと思わなかったわけではありません。しかし、これを市の予算で行おうとしても、きっとすぐにはできなかったでしょう。
伊万里市内には、老朽化した公共施設がたくさんあります。
教室に行く廊下に壁がなく、雨の日も吹きっさらしで、手洗い場の石鹸をカラスに持っていかれてしまうような学校があります。
そうでない小学校でもトイレは和式が多く、設備も古くて下水の臭いが上がってきて、子どもたちは日々臭いに耐えながら使用しています。
そんな中、毎年襲ってくる災害に備えてコロナ交付金を設備投資に使うことに、私は反対しませんでした。
地方自治というのは赤字で当たり前です。
これは決して投げやりになっているわけではなく、都市部と比べて企業が少ないので法人税の税収も少ないし、人口も少ないので住民税の税収も少ない。それでも行政サービスを低下させるわけにはいかない。人口が密集していない地域にも中心部と同等の行政サービスを提供する義務があり、例え赤字だろうがやっていかないといけないのが地方自治ですし、そこを補填するのが地方交付税です。
もちろん住民や企業を増やす魅力づくりは必要でしょう。
以前の投稿「子どもの日に人口減少について考える。」でも触れましたが、2040年までに全国の約半分にあたる896の自治体に消滅の可能性があると書きました。それだけ苦しい地方自治の現実があります。
そんな中に国から下りてきたコロナ交付金を、これまでやりたくてもできなかった部分に使うことを私は責められない。市民の安心安全を守るための判断だと思っています。
佐賀県の使い道がそのような状況と言えるかどうかは県議会の判断に委ねますが、障碍者スポーツの活動拠点である体育施設のトイレ洋式化は感染症対策としては和式より当然洋式の方が優れているわけで、ここが国スポで使用されるのであれば県民のみならず国スポで訪れる全国のアスリートのことを考えても私は反対ではありません。
電光掲示板等の購入については、知事がオンライン配信等の新しい生活様式に対応するためとのご説明をなさっていました。
佐賀県はコロナ交付金の95%を医療従事者と事業者の支援に使っており、今回問題になったのは残り5%(それでも17億と言われていましたが)の、今後のウィズコロナの時代を佐賀県が乗り切るための投資の部分です。
その内容が適切であるか否か、県議会での審議を見守りたいと思います。
④佐賀県が注目されたことについて。
前回の放送では、佐賀県のコロナ交付金の使い道がヤバい!という内容のみで、これまで佐賀県が行ってきた様々な支援については触れられていませんでした。
しかし、今日の放送では佐賀県が行ってきた取り組みについてたくさん紹介がありました。これは大変有難いことです。
良くも悪くも注目されたことについて、県民のみならず全国の皆さんが佐賀県政を知ろうとし、興味を持たれることについては前進だと思っています。
それを、今回だけでやめないでほしいのです。
また、問題を感じた時にインターネットで騒いでも、実はあまり政治の現場には伝わらないのです。今回のように大きくなれば無視できない事態になりはしますが、多くの場合は小さな声で終わってしまいます。
ことの大小に関わらず、伝えたい声は伝わる場所で伝わる人に伝えてほしいと思います。
議会に提出された議案は、自治体のHPで誰でも閲覧することができます。
年4回開催されている定例会ごとに、「今回はどんなことが話し合われるんだろう?」と興味を持ってほしい。「誰がどんなことを言ってるんだろう?」と見て聞いてほしい。
県政でも市政でも、疑問があったら行政や議員に質問してほしい。行政の電話番号はHP等に載っていますし、議員の連絡先も多くの場合、公開されています。
議会の傍聴席が満席になるようなことがあれば、発言にも緊張感が増します。
政治は生活です。
私が市議になろうと思ったきっかけは、自分の全く知らないところで自分たちの生活のことが決められていることに危機感を感じたからです。もっとみなさんに伝えなきゃと思いました。
佐賀県議会11月定例会の討論及び採決は12月16日です。
多くのみなさんが政治を自分事に考えてくださることを願います。