教員はピアスをつけてはならないのか
こんにちは。元教師なつみです。
わたしには、若気の至りでピアスの穴が複数あいています。当時自分がしたくてたまらないことだったし、大人になっても人とは違うところにピアスをつけたときとても気分が上がるので気に入っています。
しかし、ピアスを良くは思わない人が日本にはまだまだ多くて、とくに学校の先生には多く存在します。厳格な進学校でない限り、保護者や子どもはそこまで言わないんですけどね。
今回はピアスや教員の身だしなみについてのお話をしたいと思います。
「え?先生ピアス何個あいてるの?イーチ、ニー、……◯個?」
「ブー!正解は、この問題が解けたら教えます」
「えー!」
そんなやりとりも何人ともしました。子どもはすぐに先生の特徴を見つけたがって、絡みたがります。それをうまく利用して授業に繋げるのが教師の役目です。むやみに否定するなんて、もったいない。
わたしと関わった子どもの中に、「先生のくせにピアスあいてるなんて気持ち悪い……」という態度の子はいませんでした。
「先生、ピアス開けるの痛くないの?」
「先生、勇気あるね!」
「先生、こんなピアス似合うと思う」
いつも肯定してくれました。ピアスの穴何個あるか数えているうちに授業が終わってたなんて、そんな集中力を欠く先生はよくないと思いますが、ピアスをつけるつけない関係なしに魅力的な先生であれば、装飾品は華美なものでないならピアスくらいいいのではないかと思います。腕時計や指輪と、そこまで大差あるものでしょうか。違いを説明できるのでしょうか。
結婚するしないは自由だという世の中になっていて、結婚指輪をしていることの方が、わたしからしたら無理な結婚アピールや「あ、この人既婚者なんだぁ」と考える手間が増えて煩わしく思うアイテムなのですが。
もしピアスを注意されることがあったら、「先生の結婚指輪の方が、わたしの胸がザワつくので外していただきたい」と言ってみたいものです。
教員には、私立などの学校にはよりますが、服装に関する規定はありません。
髪を染めてはならないだとか、ネイルをしはならないだとか、教員側に生徒と同じルールはないのです。
生徒は、家庭環境や地域の都合はあれど、義務教育でなければその学校を志願して入学しているはずです。その学校に入りたくて勉強をし、校則を守ると誓って入学するはずです。
校則を破れば指導です。服装や身だしなみも、校内の風紀を乱さないためや、外部に与える印象を保つため、自分勝手に行動せずに規律を守る態度を身につけるために校則はあり、校則があることによって学生は、地域やその学校のブランド性に守られています。
しかし、教員は校則を守る必要はありません。
教員は、別にその学校に入りたくて入ったわけでもなければ、その学校が好きで働いているわけでもないのです。たまたま辞令をもらって配属させられているだけです。
「先生が髪染めてるから私もしたっていいじゃん」
「指導者側のくせに、ピアスはいいんですか」
などと言われることがあっても、校則を守るべきなのは生徒であって、教員は一切守る責任はありません。罰則もありません。
だって、先生も校則を守らないといけないというのなら、制服を着なければいけなくなるでしょう。着てほしいですか、先生も制服(着てほしいと思ったあなたはハロウィンやセックスのときなどに、パートナーに頼んでください)。
校則の一部だけをとりあげて、「ピアスは校則違反だから先生もつけるのはやめましょう」と言うのなら、「では、全ての校則を守っていこうと思うので制服を着ましょうか」って話ですよ。
タイトルに戻りますが、「教員はピアスをつけてはならないのか」?
いいでしょう。つければいい。
あまりにも派手な目立つものは学校現場にはそぐわないでしょうが、上品な大人を演出するだとか、身だしなみをきちんとしていると印象付けるようなピアスはいいんじゃないかと思います。
私は学校現場で働いていて、他の先生や保護者からピアスで注意されたことはありませんが、今まで相談に乗ってきた教員の友人や、TwitterのDMをくれる先生たちは、
「他の先生もよく思っていないので」
「生徒を指導するとき示しがつかないので」
などと注意されるようです。
まず、他の先生って誰なん?そいつが直接言ってこいよだし、そもそも指導できたらいいんですよね?ってことですよね。
一人の先生がピアスしてるからって、全生徒の指導ができなくなる学校なんか、学校として機能できてませんよ。他の指導者、もっと原因探せよですよ。指導の発言や態度に問題あるんじゃないでしょうか。
「指導がきちんとできる」というのは、自分が好きな格好をし続けるためには必要な条件です。「何のために校則はあるのか」「何故ピアスはダメで、髪飾りはいいのか」「大人はよくて学生はだめなのか」そういうことをちゃんと説明できるようにしなきゃ、先生がへらへらピアスをつけてる場合ではないとは思います。
どうも、年配の先生は、「ピアス」というアイテムそのものに、“不良“というイメージを抱えてしまっているところがあります。
ただ、これは世代の問題なので仕方がないのです。若い私たちが、「プロテインは太らない」「味の素は安全だ」だときちんと認識していても、世代が上の人は証拠もなく疑い続けています。半分くらいは理解していても、「いやいや自分は結局使わない」となってしまっているのと同じで、差別しているつもりはなくてもネガティブなイメージを何十年も持ってしまっては、今更誰がどうしたって変わらないのです。「プロテインや味の素を使い続ける若い人たちはわかっていない、安全ではないのに」という偏見を持ち続けて、良さを知らないまま一生過ごす。
学生がピアスをしているのを取り上げ続けていれば、「ピアスは悪いもの」とみなしてしまう癖がついているのもよくないことだと思っています。
ところで、ピアスをあけている教員って、教員全体でどれくらいなのでしょうか。わたしが現役で働いていた時も、あまり見かける数は多くはなかった気がします。
(たまに1つピアスがあいている男性教諭を見ると、若い頃やんちゃしたのかなってテンションあがる)
マイノリティは叩かれがちです。マイノリティの意見を聞き、多様性を認め合って共存していくのがこれからの社会のあり方であるのに、教員はまだまだそういったところを無意識に差別しがちだということに気付いてる先生は少ない。
ピアスをして校則を破る生徒と自分はまた別の人間だと思っている。校則を破ったことがない先生たちは、校則を破る生徒側になりにいくことはない。ピアスをつけたい教員の気持ち側に立つことはない。
単純に毎日ピアスをつけて、気分によって服装の雰囲気を変える先生と、毎日同じジャージで風呂に入る回数も少ない先生だったら、どっちが教員らしいかというと後者になってしまうのが、残念な業界。
毎日ジャージの先生が、いくら生徒から疎まれていても教員から怒られているのは想像できない。
毎日ピアスをつける先生が、いくら生徒から憧れられていても教員から怒られるのは容易に想像できる。
おかしい。
先生というのは、「憧れられるべき最も身近な大人」だと思っています。
まだ社会に出たことのない生徒にとって、「こんな大人になりたい」と思わせることのできる近い存在なんです。それを、「こんな大人になりたくない」とだけ思わせるのが教育と思いません。そんな先生もたまには必要だけど、活躍する大人、人生楽しんでる大人、そんな像を見せるべきだと思うんです。
本来守る必要のない校則に縛られて、自由を失った大人にわたしはなりたくはありませんでした。
ある研修で、黒髪超短髪のキリッとした女性が登壇しました。最初は、凛々しい先生だなと思っていたのですが、「最近の若い先生は髪を染めたり、職員室で平気でスマホのゲームをしたり、関心できません。私たちの若い頃はそんなことは一切ありませんでした」という話をし始めて、「あ、この先生はないわ」と即座に思いました。
もし、この先生が「私は好きで黒髪短髪をやっているんです。若い人たちも髪の毛を染めておしゃれを楽しむ先生が増えていいですね。スマホで即座に調べる癖がついているのも感心します」と言ったら超絶憧れます。見た目だけでない人間性そのものが素敵だと思います。多様性を認め合える、SDGs感あって感動します。
しかし、この先生はずっと縛られている。先生という概念に。かっこ悪い。そして、自分の生きてきた古いルールを下の世代に押し付けて、自分の信じる世界以外は正しくないと思っている。自分の生き方が最高に正しいと思い、それが全うされる世界が美徳だと強く思っている。そんな世界はつまらない。まともな教育者じゃない。
とたんに、かっこよく見えたその黒髪短髪の凛々しい姿が、すごく可哀想に思えました。この人の魅力を引き立てるものは、もっとこの世にあったのではないかと思います。
「一年目」の先生は、注意されやすさはあります。周りの先生たちも、「間違った方向にやってはいけない」「育てなきゃいけない」というプレッシャーがあるので、小言を(辛くても)伝えなきゃいけないところはあります。
二三年経って、実績や信頼が重なれば、注意されることもなくなってくるはずです。
正直おすすめは、一年目は大人しくしている。二三年目で、様子を見ながら好きな格好をし始める。というプランが成功しやすいと感じます。
わたしもそんな計画で、髪の毛やネイルやいろいろ試して、誰も文句言わせるかアホ!くらいに仕事をやってきました。本当に文句を言わせるわけなかった。途中、異動してきたご高齢の先生に怒鳴られたことはあったけど、明らかにわたしの実績の方が高かったので、それがわかってきて黙ってくれました
ただ、わたしが教師生活最後の年に来た、一年目で金髪に近くてピアスもつけてとてもお洒落な芸能人ばりに容姿のいい女性の先生を見た時、「ああ、わたしもこうなりたかった。こう過ごしたかった」と思わされました。どんどんこういう先生が増えてほしい、「◯◯先生の言うことなら聞く!」みたいに生徒に思わせるくらいの先生が増えたら、子どもは学校が楽しくなるんですよ。
(仕事の実績だけでなく、容姿の良さも文句を言わせない鍵なのかもね)
教員は、ピアスをしていい。髪を染めてもいい。ネイルをしてもいい。マツエクをしてもいい。髭を生やしてもいい。
生徒が校則を守るべきだという説明がきちんとできるのであれば。
生徒と保護者が不安に思わないならば、別に教員側の不安はどうだっていい。
式典や行事で適切な格好ができるのならばいい。
だらしない大人ではなく、憧れられる大人像を作れるのであれば。
日頃の業務をきちんとこなし、実績を残しているのなら。
仕事を大切にし続けてくれるのなら。
教員はピアスをしていい。好きに生きていい。
自分が魅力的に見える一番の方法をわかっている大人はかっこいい。