先生、教育実習が不安です
6月は教育実習生が実習を行うシーズンの一つでもあります(10月頃もその一つ)。わたしも現在、実習生の受け入れをしながら、自分の実習の頃を思い出したり、過去の実習生への対応は十分だったかなと振り返ったりしています。
日々たくさんの、裏垢先生(実名のアカウントではなく、裏の名前でTwitterに投稿をする先生)が増えてきていると実感しているので、教師のたまごの学生たちも、そんな先生のTwitterの様子を目にしているはずです。
一人の実習生のリプをきっかけに、「きっとこの時期に不安な教育実習生がたくさんいるに違いない」と考え、DMで教育実習関連の相談を受け付けました。3~4日間ほどで30通くらいは来て、仕事の合間に対応させてもらいました。自分が経験した以上につらい体験や、苦しんでいる人がいるんだと知った上に、みなさん丁寧で真面目な文章を送ってくれて、「なつみ先生の言葉に泣きそうになりました」「言われたことを実践して頑張ってよかったです」という声に、わたしの方が泣きそうになり、勇気をもらいました。
すでに実習している方も、これから始まる方も、少しでも心が軽くなったり、楽しくなったり、縛られた考えから解放されたらいいなという思いで、このnoteを書きます。先生になりたいという思いを少しでも持ったということは、すでに先生に向いているんです。わたしたちはあなたに、教育現場に来てほしいのです。
①第一は体調と身だしなみを整え、笑顔でいること。土日はしっかり休む
②信頼できる先生と、おや?と思う先生を見極める
③たった数週間のことだが、一生記憶に残る経験になる。ならば楽しんで。
④教育実習で爪痕を残そうとしなくていい。いつか現場でできる。
⑤実習で得た縁をできるだけ大切にする。
⑥実習をこれから控えてる学生がしておくべきこと
①第一は体調と身だしなみを整え、笑顔でいること。土日はしっかり休む。
先生の仕事の一つは「常に笑顔でいること」だと思います。先生の具合が悪そうだと生徒は心配もしますし、授業での質問もしにくくなりテンションも上がりません。機嫌が悪いと捉えられると、指導にも従ってくれません。
先生が常に笑顔だと、生徒は学校に行くのが楽しくなります。たった数週間でも、年齢が近い教育実習生がいるだけで学校に来るのが楽しくなる生徒はたくさんいます。だから、みなさんには常に笑顔でいてほしいのです。
しかし、指導教官からの厳しい指導や、実習簿と授業準備に追われて、終盤には笑顔が消えていく実習生も少なくないです。それでも、ちゃんと、笑顔でいてほしい。
わたしの経験を話すと、非常に厳しい指導教官に当たりました。指導教官の意味不明な言葉に涙することも日々増え、「実習中は寝るな」「メモをとらないからあなたは何もできないんだ」「実習簿はぎっしり書いて朝に必ず出せ」などと罵倒の数々。同じ実習をしていたメンバーは、「うちの先生は何も言わないから楽」と言うし、担当の先生によって差があることを目の当たりにするのもつらかったです。
日々、自分でも疲労していくのがわかり、授業の準備はとても楽しかったけれど、笑顔が消えていきました。疲れているわたしを見て、指導教官が追い打ちをかけてきます。「元気がなくなっている。顔色に出すことは、教師としてあってはならない」。心の中で、お前のせいだ…と思いながらも、元気をなくすことは何もメリットがないと気づきます。
「土日も部活を見なさい」「PTAの活動に参加することも勉強になるから」といわれる場合もあるかもしれませんが、無理に参加しなくていいです。友人と約束しているならそちらを優先して構いません。せっかく地元に戻っているなら友人と遊びに行く方が癒されるでしょう。実習期間は平日だけです。経験を積みたいと考えて、余裕がある場合のみしか、土日の学校の活動には参加しないようにしましょう。
ただし、地元の友人と遊びすぎないようにもしてください。久々に会うメンバーとはアルコールが進むでしょうし、飲み会でストレス発散もよいかとは思いますが、実習最優先でこの期間は終えてほしいので、深夜まで盛り上がるのはやめましょう。
あと、できるだけ爽やかな見た目でいる方がいいので、スーツの着こなしは他人に確かめてもらうようにしてください。わたしは「シャツが出ている」とよく教官に叱られたので、服装選びも注意です。
男性も眉や髭は整え、清潔な印象にすること。女性のメイクは、眉とファンデーションだけでいいと思いますが、明るい表情がいいと思いますので、チークは軽く塗ってもいいと思います。わたしは眠たそうな表情にならないように、アイラインは入れていました。
②信頼できる先生と、おや?と思う先生を見極める
先生は二種類しかいません。あなたや生徒のためにいい影響を与える人と、悪い影響を与える人です。「この先生の授業は工夫されてる」「生徒からの信頼も厚い」「話が通じて、味方になってくれる」という先生はすぐに見抜けると思うので、指導教官の指示に全て従う必要はなく、どんどん実習中に担当でない先生とも絡んでおきましょう。
その先生が忙しそうで声をかけにくいという場合は、訊きたいことを書いてメモを机に残すことをおススメします。メモを残せば、時間をかけて返答を考えてくれますし、その先生も余裕を持てたときに話かけてくれるはずです。
あなたに悪影響を与える人は、一瞬では見抜けないかもしれません。授業の方針などで意見がぶつかることはあるかもしれませんが、人はそれぞれ自分の意見を持っているので、自分と合わないというだけで判断はしてはいけません。ただ、「この先生どこか発言がひっかかるな」「これは正論を押し付けているだけでは?」「自分のために言っていることかな?」など、「おや?」と思う場面があったら、それは悪影響を与える先生の可能性があるので、対応の仕方に気をつけましょう。
「おや?」と思う先生へ塩対応しては、ますます悪い評判を職員室で話されるだけです。できるだけその先生と絡む時間は少なくして(その分いい先生と絡む時間を増やして)、適当にやり過ごせるようにあえて全力で愛想よくしておきましょう。たった数週間の実習です。そんなところで心を消耗する必要はなく、こちらの方が余裕を持って、大人の対応をしましょう。
わたしも指導教官の対応には辟易としていましたが、毎日実習簿を見てくれているわけだし、授業を任せてくれているのだから、毎回なにかのアクションをするときには「ありがとうございます」と伝えることは忘れずにいました。そう切り替えていけば、指導教官も悪い顔はしなかったですし、最後には「授業が上手だ」と褒めてももらえるほどになりました。
自分でどうにもならない場合は、その合わない先生のことについて、他の先生に意見をもらうのが一番効果的です。自分より長くその先生と一緒に勤めているわけですから、何かいい対処方法を持っている場合があります。同教科、同学年でも、年の近い若手の先生でもいいです。守秘義務は守らないといけませんが、Twitterの裏垢先生を頼ってもいい。占いに行ってもいい。悩んでいることは誰かに吐き出せば、何かヒントがもらえることがあるし、吐き出すことで自分の考えを整理できます。一人で抱え込まないでくださいね。
③たった数週間のことだが、一生記憶に残る経験になる。ならば楽しんで。
教育実習は決して辛いことを経験するためにあるものではありません。教師になるため、免許をもらうために現場を知ってくることだけです。数週間、やることをこなせば実習は終わります。ですが、万人が経験できることではないですし、人生で何度も何度も経験できることでもありません。
あなたの記憶にいつまでも残ることです。わたしも、今のこの記事を書きながら、「あんなに一生懸命だったな」「クラス担当をしたあの子は元気かな」「あの子とあんな会話をしたな」「授業でうまい対応ができなかったあの子は今どうしてるのかな」「最後に先生ありがとうって、駆け寄って言ってくれた子がいたな」「たった数週間しかいなかったのに、わたしのこと大好きになってくれた子がくれた名刺入れ、今でも使っているな」など(ちょっと思い出に浸りすぎましたが)、蘇ることは溢れて止まりません。
こんなにも記憶に残ることなのですから、「楽しかった」と思えることをできるだけ増やして終える方がいいです。そのため、笑顔でいて、生徒と関わる時間を大切にしてくださいね。授業準備と実習簿をおろそかにしてまで、生徒と関わる必要はありませんが、「担任の先生ってどんな先生?」と掃除しながら話しかけたり、生徒の持ち物に気づいて、「私もK-POPよく聴くよ」などと声をかけたりしていきましょう。
生徒と関わりが深まると(深まらなくてもいきなりが多いかもしれませんが)、「先生恋人いるの?」と訊かれることが増えると思います。わたしも実習中、「結婚してるの?」まで訊かれました。この場合は正直に答えればいいと思います。
「いない」とうそをついて、後日デートしているところでも目撃されると信頼度は下がりますから。しかし、「いる」と言うのも、「どんな人?」「何歳?」などと質問責めに遭うのは絶対なので、「まだ付き合いたてだからあまり訊かないでね」「それよりも、今は授業に集中してね」などと、生徒の疑問を否定することなく切り替えさせることが大事です。恋人とどこまで進んだかという話題にまでならなければ、交際相手がいることは爽やかなことなので隠す必要はないと思いますよ。
④教育実習で爪痕を残そうとしなくていい。いつか現場でできる。
「授業でどうしてもこれを教えたい」「担当教官の授業方針は理解できない」と思うこともあるかもしれません。先生になりたいと思ったあなただからこそ、自分が伝えたいことのこだわりがあるはずで、それを曲げることはしなくていいとは思います。
ただ、「教育実習でこれを成し遂げる!」という力を入れすぎたことは、考えない方がいいです。やってみたいこと、実践してみたいことは担当教官などと一緒に考えて、意見をもらってよいものにしていきましょう。自分だけが頑固にこだわるのは、衝突を生むだけなので避けてほしいです。
「教育実習生だから今のうちに失敗できる」というのは利点だと考えましょう。わかりにくい授業だったとしても、生徒は一生懸命さに惹かれます。研究授業後に、他の教員からさまざまな見解を言われても、全てあなたがこれから授業がうまくなっていくための助言だと捉えてください。あなたの人格が否定されているわけではなく、よりよい先生になってもらいたいからみなアドバイスするのです(②でも話しましたが、「おや?」と思う教員の意見は適当に流しても大丈夫です)
教育実習中に「生徒にこれを教える」「こうしなきゃいけない」ということは考えすぎないで、むしろ、「現場で働くときはこれをやるぞ!」「同じ教材を扱う時が来たら、もっとこんな風にしたい」と、採用されたときの自分を想像する余裕を持つくらいになってください。その気持ちは、採用試験にも、採用された現場でもぶつけることがいつかできるでしょう。
⑤実習で得た縁をできるだけ大切にする。
ここ数年は、自治体によって採用倍率はバラバラで、講師採用の声がどこで掛かるかわかりません。教育実習先には、採用試験の合否を伝えるようにしておきましょう。
教育実習が終わった後も、運動会や文化祭や卒業式などの行事に、参加することをお願いするのも、とてもいいです。時間が経って訪れた学校には、採用試験のヒントが見つかるかもしれませんし、何より生徒が喜んでくれます。久しぶりに会った先生を見つけると嬉しくて駆け寄ってくれるはずなので、元気をもらえると思います。実習中に担当教員と約束しておくといいでしょう。詳細が決まる頃には電話で問い合わせることもしましょう。アポなしで行くのは避けてください。
教育実習を受け入れるだけで、精一杯お世話になったわけですから、「どうしても行きたい」とは言わず、迷惑のかからない範囲でお願いするようにしましょう。
また、実習を共にした仲間というのも掛けがえのない縁でつながっていると思います。母校で馴染みの同級生と過ごす場合もありますが、母校以外や浪人したから同級生とじゃなかった場合などは、実習前から不安だと思いますが、新しい人と出会える方が断然得です。新しい知見を得られますし、実際働くときも知っている同級生ばかりではないのですから、プラスに考えてほしいです。話題が合わないことがあっても、「○○さんが一緒でよかった」と思ってもらえるくらいになりましょうよ。その数週間だけではなく、しばらくしてから近況を報告し合える関係になれるといいですよね。もしかしたら、ここでも講師が足りていないなどの連絡のやりとりができるかもしれませんし、どんな縁も大切にする教員でいたほうが得なことは多いです。
⑥実習をこれから控えてる学生がしておくべきこと
ここまで、実習中や直近で実習を控えている人に対して書いてきましたが、まだ三年生でこれから実習先を探すという人や、教員を目指して間もないという学生に対して、今からしておいた方がいいということをいくつか列挙しておきます。
まず、わたしがDMを受けて一番つらいなと思った境遇の方は、何件母校やそれ以外に電話を掛けても、実習の受け入れ先が見つからなかったというものです。「母校以外で実習した方がいい」「母校がいい」「高校が第一志望でも、中学に行った方がいい」など、大学側から指示をされる場合もあるようですが、どこに行っても、教員免許は取れますので、大学側の指示を必ずしも守る必要はないのではないかと思います。
実習先が見つからない場合は、①大学に相談する ②大学の教育関係以外の部署にも相談する ③教育委員会などの大きなところに相談する ④実習先を決めた友人などに紹介してもらう などの対処法があると思います。
このような現状もあるので、一・二年生のうちから、受け入れ先で困らないようにするために、学校ボランティアや、インターシップなどに参加し、そのツテを持っておくのも手です。現場での経験も積めるので、余裕のある方はぜひ考えに入れてほしいです。
一気に書いたため、不十分な表現があるかもしれませんが、少しでも早く教育実習生の心を軽くできればと思い、この記事を公開することにしました。さらに言いたいことがあれば追記するかもしれません。
頑張りすぎないで頑張ってください。素敵な教育実習だったという場面が少しでも蘇る実習になることをお祈りしております。
わたしたち教員は、実習生を大切にします。少なくともわたしはそういう思いですし、こんなに大変だと世間で言われている教育界に飛び込んでくれたその思いを挫く教員ができるだけいないように願います。そのために、わたしは発信していきますし、力になれることがあればDMもしてください。(Twitter: @natsumi0451)