「アーティスト」とは、誰か?(もしやあたいもなれる?)
1 試着室の中での気づき
週末、クローゼットの服を一掃して、全部新しい服に入れ替えたい衝動に駆られていた。
どんな服に入れ替えたいか?ネットでサーチしたり、本屋のアラフォー向けと思われる雑誌を見たりして、新しい私のスタイルを研究した。でも、どれもこれも、ありきたりで、面白くなくて、前にも見た事があるようなものばっかり。私の欲しているのは、多分、どのカテゴリーにも落ちにくい、ちょっと風変わりの服なのだ。
ちょっと変わった系の服を着ている人に、目が行ってしまう。自分は今まで、ナチュラル系の服が好きなのだと思って生きてきた。白黒、グレー、茶色みたいなおとなしい色で、無地な感じ。けれど、ちょっと前から、シンプルな服をまとった試着室の自分に、「似合わない。。これ全く似合ってない」と思い始めていた。客観的にみて、私の体形や年齢で、無難なチョイスをしていると思う。でも、私の目から見ると、全く「私」という人間を、語っていないのだ。その鏡の中の自分は。
ミニマリストの考えにも惹かれていた。いや、正確にいうと、そう自分で思い込んでいた。でも、違うと思う。私は、もっと雑多な感じの部屋が落ち着くし、面白いと感じるし、すっきりしているとどうもダメなタイプなのかもしれない。ミニマリストで常に整理整頓された家で育ったのに。人間というのは、おもしろいもの。ということに、やっと気づいた。
ミニマリストの服というのは、これまたミニマルだ。どういう組み合わせでも状況でも合う服を、最低限持つというのだから、自然とおとなしい服になっていく。だから、私の服もそういうもんじゃないとダメだと思っていた。
退屈。これでは、退屈だと私の心が言い出した。もっと私は、自分を服で表現したい。
2 アーティスト=音楽家?
私は、アーティストという人種に昔から魅かれていた。
同時に、「アーティスト」という言葉にずっとひっかかっていた。私の中でのアーティストの印象は、
「芸術は爆発だ!!」系の、突拍子もないようなことを思いつくセンスを持っている人。往々にして、画家、その他のファインアートをする人。もしくは、様々な分野でアート表現をしている人。
である。で、そういう人たちは、必ずといっていいほど自分のスタイルがあって、洋服のチョイスもものすごい不思議で、かっこいいんだ。
たまに、音楽をやっている人が、自分のことを「アーティスト」と呼んでいて、その度にそこに引っかかっていた。私の中で「アーティスト」と「歌手」「音楽家」「ミュージシャン」「作曲家」は違う。なんでそこにこだわるのかわからないのだけど、音楽をやっているのなら、音楽向けの言葉を使って表現してほしい、と思っている。
もちろん、音楽をやっている中で、スタイルがあって、いろんな形でそれを表現しているのなら、「アーティスト」でもいいと思う。でも音楽だけだったらなんか違うって思ってしまう。根拠はない。私の印象。
3 トータルで稀有な存在=アーティスト
よく考えてみると、私の中で「アーティスト」という職業が存在しないのだという結論に達した。音楽家であるなら、「音楽家」という職業なのだ。だから、アーティスト=音楽家、ではない。
「アーティスト」という職業も、世の中ではそれで通用することもあるのかもしれないけれど、私の頭の中では、多分それは職業ではなくて、その人自身のトータルでの存在そのものだ。
「アーティスト」は、職業ではなくて、生き方、感じ方、表現の仕方、つまりは存在そのものが、逸脱したセンスの持ち主。
だから、アーティストは、その人以外、その人の真似を決してできない。とてもセンシティブで稀有で、貴重な存在。
私はアーティストに憧れるし、尊敬の念があるし、どこかでそれが最上級の褒め言葉なのだと思っている。そう思って、誰かのことを話すときに、「アーティスト」の言葉を使っている。
前にも書いたことがあるけど、例えばヴィンセントギャロ。ヴィゴモーテンセン。彼らは、画家で、表現者で、俳優で、モデル。そういえば、最近ではノーマンリーダスも、私の中のこの最高のカテゴリーに入るマルチタレントアーティストの一人だ。レディガガも、私はあんまり知らないけど、音楽以外でも表現が激しいから、アーティストかもしれない。
あとは、私がクリムトという画家がものすごく好きなのだけど、彼も突拍子もないような恰好をしていたり、そのままの絵を描いている。絵だけに収まらない、彼自身の人間がもう、アーティスト。
4 ということは、私もなれる
そうやって、考えた時に、そうか。アーティストが職業じゃないのなら、画家ということだけに特化しないのなら、私だってなれるんじゃないの?と思った。
え、あの10代の頃から憧れていた、アーティストに、あたいもなれる?(朗報)
自分の中のアーティストの印象の考えが曖昧だったから、どこかで「絵が上手に描けないとアーティストじゃない」「一つの分野に特化してプロじゃないと、アーティストじゃない」みたいに考えていた。
でも、世界的に有名にならなくっても、自分がもう既に持っているカードで、アーティスト的にはなれるのではないだろうか!!
ライティング、
落書き、
ちょっとした音楽、
写真、
占い、
メイク、そして、自分が、しっくりくる服。。。
全てを使って表現すれば、自分ブランドのアーティストなのだ!
もう、自分で思い込んだ服を着なくていい。試着室で、しっくりこない服を着るのはやめよう。ああだこうだと、メディアがはやし立ててくるカテゴリーに、自分や自分の好みをはめ込まなくていい。自分が好きだな、着たいなと思っている服が、雑誌にそのまま載っていなくってもいい。
自分の好きなように表現をしていれば、そのままで、アーティストになれるなんて、こんな簡単なことはない!!!
全ては、今まで自分の心に知らない間に嘘をついてきて、自分のしたいことをしたり、食べたいものを食べたり、着たいものを着たり、言いたいことを言ってこなかったからだ。こういうことをやってきた人たちにとっては、「はあ?何をいまさら」と思うことかもしれない。
でも、私にとっては、大発見だ。あの、あこがれのアーティストになれるなんて!
私の夢はこれからは、アーティストになること。日常のことから、もっともっと自己表現がしたくてたまらない。