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夜々ちゃんの生きづライフにやられた件
初回から多方面マルチウェイしんどみを豪速球でぶっ放してきたドラマ「いちばんすきな花」1話。藤井風の爽やかなテーマソング「花」に乗せて、主人公四者四様の世知辛さが全力疾走している。キビシイ!膝をがくんとつくようなストーリーが始まったぞ!!
このドラマの夜々ちゃん(深雪夜々/今田美桜)が最高にしんどい。ルッキズムにおける美人の地獄が満載で、解像度が高すぎて悶絶した。
ルッキズムといえば、見た目が時代の流行にマッチしていない、すなわちイケてないと括られる側の地獄ばかりが語られがちだが、本来は外見至上主義そのものを指す言葉。
美醜のどちら側にいても、勘違いされ続けるつらさを背負う。外見のみでしか判断されない、外見によってジャッジされるというしんどさにおける「美」サイドの激重主人公がついに登場したのだ。
夜々ちゃんはかわいい。美しい。生まれついてのビューティー。だがそのために幼少期から「ロマンティックなドレス」「女の子らしい遊び」をあてがわれる。幼い彼女が本当に好きなのは将棋だ。渋ッ。
成長しては自分ではどうしようもない外見によって妬み嫉みを浴び続け、言葉の意図は変換されてしまう。マウント扱いされそうで相談も難しい。半ば諦めの境地。憧れは雌雄同体のカタツムリ。性志向はわからないが全般的につらい。
それでも胸の苦しさを理解してくれる相手が見つかったと思いきや、その職場のパイセン男は一度呑んだくらいで家に連れ込もうとする始末。挙げ句、上から目線でお説教。クソバイスとの合わせ技が情けなくてダサすぎる。ガッデム。
しんどさの激流は止まらない。夜のひとり歩き、会いたくなって女友達に電話したら、彼氏といるからそのスペックでテキトーな男を捕まえろとな。お試しで、とな。
これ、セクハラなのよね。言っている相手を脳内でオッサンに変換すればすぐわかる。同性からのセクハラなのだ。
ワンナイト狙いか継続かはわからん、とにかく連れ込もうとした職場のパイセンから逃げてきたのだ。それもまだ話せていないのだろう。逃げてきた傷もまだ癒えぬままに、テキトーな男をつかまえればいいじゃんのしんどさバズーカ。その友達はそのタイミングで頼ったらあかん、ナチュラルに傷つけてくるいちばんダメなやつだ。
これは予想にすぎないが、電話の友達はおそらくフレネミーだろう。友人の顔をした敵というやつだ。ああいう人、本当にいるから怖いんだよなあ。誰かの前じゃなく文字に残るものでもなく、電話で言っているのがまたキッツイ。共通の知人のような親しい人の目に付くところでは絶対言わんぞ。あのシーンはつまり、しんどさの塊なのだ。
フレネミーが狙うきっかけは、見た目には限らない。職業、住まい、家族、持ち物、なんでもいい。夜々ちゃんはたまたま美しかっただけだ。自分より幸せそうに見える人(実際どうであるのかは厳密に問わない)をターゲットにしては、妬みや嫉みを友情っぽさにくるんでお出しするのがフレネミーなのだから。
パイセンの家に連れて行かれそうになった時ではなく、友達の言葉で心が決壊し涙があふれるのは極めていい台本だと思う。
諦めの境地に至るまで、夜々ちゃんの周りにはフレネミーが多かったのではないかと想像する。ああ、しんどみをあつめてはやし最上川。常に警戒水域なものだから、男女の友情も女の視線も安心なんかできるわけない。
・・・・・・夜々ちゃん!
ほら泣いちゃった。ナンパ師の面倒くさい決まり文句
「お姉さんひとり?」
にキレて放つ
「ふたりに見えんのかよ!」
の啖呵が清々しく、悲しい。
男女の友情エピソードに対して本当に下心がなかったのかをつい確認してしまうくだりは質問としてはギリギリアウトな失礼さがあるし、自らの悩みを開陳するのもリスキーなもの。だが夜々ちゃん視点で見たら
「は?そんなピースでヘブンな関係が実在すんの?あなたが気付いてないだけじゃなくて?マジで?えっなんでわたしはそうなれないの?マ?ほんとに?」
くらいの衝撃だったはず。
積み重ねまで台詞で、そしてノンバーバルコミュニケーションでも丁寧に描かれたしんどさの嵐だが、まだ1話。なんてこった。
将来的に夜々ちゃんの体型が変わったり年齢を重ねていけばルッキズムから解放されるかといえばそんなことはおそらくなく、
「あの頃は可愛かったのにねえw」
みたいなバズーカを浴びる可能性も高いからしんどい。断然しんどい。
とりあえず、とっつかまえてラーメンか何かおごってあげたい。気取らず、でもとびきり美味しくて背徳感すらあるようなものを。ちょっかいを出してこないし食べていても不躾にえっちな目で見ないような、粋で枯れた常連しかいない店がいい。話を延々聞いてあげたい。
あんた頑張ってるよ。あんたの引き立て役になれるなら上等ってなもんよ。ほら、サイドも遠慮なくいっちゃいな?
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