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またその先へ

 何によって心が動かされるのかは、人それぞれだしタイミングにもよる。わたしは音楽と絵画が多い。たとえば入院中の星野源さんやクラシック、退院後の藤井風さんがまさにそうだったように。

 わたしが流した音楽が、いつか誰かの心を強く動かしたこともあったのかもしれない。
 遠い記憶を辿り、幾つかのそのような言葉を思い出す。わたしはその時「ハブ」だったのだ、と改めて思う。爬虫類ではなく、繋ぐほうの。

 誰かが精魂込めて作り上げた作品が、別の人の手を介して、受け取った人を揺らす。やさしく背中を押したり、その肩をたたく。
 数多のリレーの中にわたしはいる。

 受け手として、つぶさに受け取りたい。真摯につくられたそれを、手のひらで包むように受け取りたい。何度でも胸の中で鳴らす。

 かつて場をご一緒させていただいた作曲家の先生は、ご本人がお作りになった楽曲以外を語るときにも目がきらきらと輝いていた。それは照明のためだけではなくて、先生が素晴らしい受け手でもあったからなのではないかと、烏滸がましくもそんなふうに思う。

 受けて、心を動かされて、放って。そんな幸せなリレーの中で、またその先へと向かう。新しいものに出会えるということは、何と素敵なのだろう。

 朝起きぬけに出会えた音が、わたしの背中を押した。さあ一歩前へ。
 
 

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なつめ
なつめ がんサバイバー。2018年に手術。 複数の病を持つ患者の家族でもあり いわば「兼業患者」