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review温故知新「The Piano It's Me」SUEMITSU & THE SUEMITH
えっ、いま?
そう言われたらどうしよう、そんな、2007年の作品。
しかし稀代の名作。
SUEMITSU & THE SUEMITHと言ってわからない人でも、木村カエラさんの「butterfly」はご存知なのではなかろうか。
あの光さすド名曲、結婚式にかければまず間違いない美しい愛のアンセム、それを作曲したのがソロユニットSUEMITSU & THE SUEMITHの末光 篤さんだ。
メジャー1stアルバム「The Piano It's Me」、タイトル画像は初回限定盤。わたしは通常盤と2枚持っている。そうしたくなる魅力の渦が薄い円盤に潜んでいるのだ。
このアルバムのチャート最高順位が18位、このレビューを書くにあたって、もう一度確認してしまった。ああ心底勿体ない。もっと売れてしかるべきクオリティ!
デビュー前にDisneyの音楽制作ディレクターを務めていた音大卒の才人だけあって、そりゃあそうでしょうと唸るような良メロディーの洪水。ボコーダーを通した声の質感と絶妙にマッチしたサウンドメイクが楽しい。
「The Piano It's SUEMITSU」のクラシカルで可愛らしいさま、一転してはじける「Saga」からのグラインド・ピアノ・ロック。
収録曲のうち、篠原涼子主演ドラマのOP「Astaire」やアニメ版のだめカンタービレOP「Allegro Cantabile」は覚えている人も多いかも知れない。いずれもe.p.のタイトルチューンで、彼の代表曲といっていいだろう。
音数の多い楽曲も、決して散らかった印象にならないのは流石の腕の良さ。クラシックとロックの相性の良さは洋の東西問わず先行するアーティストでも明らかだが、邦ロックにおける手練れといえば彼だろう。力強いタッチも繊細なタッチも音が立ち、華やぐピアノはまさに圧巻。
ワルツ好きにはご褒美でしかない「White Cat Waltz」、どこまでも切ないピアノの音色が美しい「Sonatine」や「Soul Concatenation」といった、緩急における『緩』こそスルメ。いずれの楽曲も、確かな音楽理論に基づいて作られているのを感じられる。
じっくり聴いてほしい一枚だ。
「The Piano It's Me」
SUEMITSU & THE SUEMITH
Ki/oon Music Inc.
通常盤 ¥2900+tax
KSCL-1164
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