Blanchardのオートガイネフィリアの論文を読む(3)

第一回はこちら、第二回はこちらから。

前回ではトランス女性を性指向によって4つのクラスタ(女性愛、男性愛、全性愛、無性愛)に分類しました。今回はその続きです。

この章ではいよいよ性指向とオートガイネフィリックな願望との間に相関関係があるかどうかを調査してゆきます。

オートガイネフィリアに関する調査とその結果

結論から言うとあるよね、というのがこの論文の論旨となります。

以下の画像は原著の表をグラフ化したものです。元のページには標準偏差や検定の結果も書かれているので気になる方はそちらもご参照ください。

図は、5種類のアンケートについて4種のクラスタの平均点をプロットしたものになります。

アンケートは以下のようなものです。

Core Autogynephilia
いわゆるオートガイネフィリア、女性の身体になりきる想像や衣服を着用することで性的興奮を覚えるかどうかを表す指標です。

Auto Inter Fantasy
他人から憧れられる願望を抱いているかどうかを表す指標です。

Alloeroticism
性的な欲望が他人に向くかどうかを表す指標です。低いほど無性愛の傾向が強いことを示します。

Heterosexual Experience
女性との実際の性的経験を評価することを目的とした指標です。

Cross-Gender Fetishism
女性の衣服、香水、化粧品を着用したり、脚を剃ることに対して性的興奮を覚えるかどうかの尺度です。

ちなみに最初の3つのアンケートについては付録に記載されておりますので読者の皆様も実施することができます(このnoteでも後ほど翻訳予定です)。

個々の指標とその結果について説明していきます。

Core Autogynephilia

いわゆるオートガイネフィリア、女性の身体になりきる想像や衣服を着用することで性的興奮を覚えるかどうかを表す指標です。

男性愛者グループ以外の3グループすべての平均スコアは、男性愛者グループの平均スコアよりも有意に高いです。

この結果は、本研究のコアの仮説、つまりAGの傾向が男性愛者よりもそうでない人によってより顕著に報告されることを説明するものとなります

バイセクシュアルグループの平均スコアは、無性愛者グループよりも有意に高いです。異性愛者グループはその間に入り、どちらとも優位差がありませんでした。

Auto Inter Fantasy

他人から憧れられる願望を抱いているかどうかを表す指標です。

この変数に関する両性愛者グループの平均スコアは、他のすべてのグループの平均スコアよりも有意に高かったです。

他のグループの間に優位差はありませんでした。

Alloeroticism

性的な欲望が他人に向くかどうかを表す指標です。低いほど無性愛の傾向が強いことを示します。

無性愛者の平均スコアは他のグループの平均よりも有意に低いです。

無性愛者グループの平均値が低いことは、そもそもそのメンバーであることを決定した自己申告データとはほぼ重複しています。

Heterosexual Experience

女性との実際の性的経験を評価することを目的とした指標です。

この変数では、男性愛者グループのスコアは、他のグループよりも有意に低いです。

他のグループの間に互いに差はありませんでした。

ここで、無性愛者グループは女性愛者や全性愛者のグループよりも異性経験が少ないわけではないことに注意すべきです。

それは他人への自己申告の性的関心のレベルが低いにもかかわらず起こっています。

Cross-Gender Fetishism

女性の衣服、香水、化粧品を着用したり、脚を剃ることに対して性的興奮を覚えるかどうかの尺度です。

女性愛者グループの平均スコアは他のすべてのグループの平均よりも有意に低く、3グループ間は互いに異なりませんでした(訳者注:無性愛者のスコアが女性愛者・パンセクに比べて低いように見えますが、標準偏差が大きいため有意差が出なかった模様です)。

今回のまとめ

・トランス女性において、オートガイネフィックな願望を抱くかどうかと本人の性志向には相関関係があることが認められた。

・女性愛者と比べて、全性愛者、男性愛者、無性愛者にはAGの傾向が強く見られる。

・「女性になることそのもの(Core Autogynephillia)」と「女性になって羨望されること(Auto Inter Fantasy)」とに対する性的欲求について、少し異なる傾向を示した。後者については全性愛者のみが、他のグループより強い傾向を示した。

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