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愛はうだるように

フレデリック「FREDERITHM ARENA 2022 ~ミュージックジャンキー~」
2022.6.29 @東京 国立代々木競技場第一体育館


開催が発表されてから半年間、この日をずっと待っていました。

まだまだ余韻は覚めないけれど、感想を綴っていきます。

最初に余談:ライブ前の話


暑い!!!!!!!!!!!!!!!!!!!北海道民こんなの経験したことない!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

あの炎天下でグッズ並んだらきっと倒れてたから整理券があって本当によかった……
今回導入されたグッズ整理券、去年の武道館クエストを開発された方が運営しているシステムで嬉しかった!他のアーティストが導入しているのを見ていつかフレデリックでもやってほしいな〜と思ってた。
整理券のQRコードを読み取った時の効果音がジャンキーのイントロのメロディーで、その遊び心に暑さからくる疲れが少し和らいだ。普段よりも並ぶ時間がかなり少なくてすごく助かりました。今後ともぜひ…!

ライブの話

名悪役~蜃気楼


昨年の日本武道館公演のラストで披露された名悪役。フレデリズム3の制作の始まりとなった曲。

1曲目はジャンキーかオドループ?VISIONもいいな、とか予想していたけど、OPからストリングスアレンジのイントロが始まった瞬間、この曲が一番相応しいな、と思った。

《あれから君は 後悔や劣等感さえも正解に変えて もっと強くなったかな 私の知らない毎日で》
この1年、辛いことも悲しいこともたくさんあった。その度に名悪役を聴いて、武道館で感じたあの衝撃を思い出した。ここで折れてたまるかと自分を奮い立たせた。
私はあの日よりも、もっと強くなれているかな。ライブで聴く度に身が引き締まる思いになる。

1曲目から全体を通して音の良さに驚いた。アリーナのような大きい会場はあまり音が良くないというイメージを持っていたけど、ライブハウスやホールのような、むしろそれ以上に良い音で迫力がある。メンバーの演奏力ももちろんだし、サニーさんの作る音が本当に最高。


名悪役→TOMOSHI BEAT→蜃気楼の流れがフレデリズム3のラスト3曲の逆順だった。
アルバムを1曲目から通しで何度も聴いていると、曲の終わりから次の曲にいく流れごと覚えてしまって、自然と次の曲のイントロが頭で流れるようになる。

身体に染み付いている流れとは真逆で、どんどん予想を裏切られていく痛快さが楽しい。待ちに待っていたライブが始まった高揚感がさらに高まっていった。


VISION~ラベンダ


VISIONのイントロで会場中に放たれたレーザーが、人生で見たレーザーの中で一番綺麗だった。席がアリーナのセンターステージ目の前のブロックだったこともあって、レーザーの海の中にいるような感覚になった。

これまでのツアーでもそうだったけれど、健司さんは観客一人一人の目を長くしっかり見てくれている感じがして、まさに1対1のライブだと思った。

VISIONを生で聴くのは初めてフレデリックのライブを観た2019年のライジング以来。新曲として披露されたこの曲の、伸びやかなメロディーと《理想以上の世界を 掴み取るんだ 今はただ》という歌詞が印象的だった。ライブの後もずっと耳に残るフレーズだった。
バンドのライブをほとんど観たことがなかった当時の私に「あなたはこれからフレデリックを大好きになってたくさん遠征して、3年後代々木のアリーナ公演観に行ってるよ」って言ったらどんな反応するだろう。
過去を思い出させる、なおかつ未来に向かう気持ちをくれる、自分にとって大切な曲をこの場所で聴けて本当に嬉しかった。

大きな会場で鳴らすかなしいうれしいのクラップの気持ちよさよ!!武さんがドラムを叩く手を止めてクラップだけになった瞬間鳥肌が立った。
《見えない未来を信じてる》《まだ見ぬ行く先に足を向けて》
VISIONとかなしいうれしい、どちらも未来を歌う曲の繋がりを感じる。

後半のYONA YONA DANCEでも思ったけれど、ANSWERの須田さんパートを歌う健司さんが、100%健司さんの歌声なのにどこか須田さんの雰囲気があった。YONA YONA DANCEも、健司さんの歌声だけどアッコさんの要素も感じた。寄せている感じではないのに、自然と自分の歌声に他の人の雰囲気を纏っていたのがすごい。

もうすっかり旅のお供になったWanderlust。この日も新千歳から離陸する瞬間に聴いていた。
モニターに映る大迫力の映像がニュージーランドを思わせて、旅先にいるような開放的な気持ちになる。
音楽を通して心が自由になるのも一つの旅と言えるのかもしれない。

Wanderlust→うわさのケムリの女の子→ラベンダの流れが最高。
けむりがものすごいもくもくしてるけど微かにメンバーが見えるあのバランスが100万点。武道館のアコースティックアレンジも素敵だったけど、原曲バージョンを初めて聴けて嬉しかった。

《日々 透明な 世界    新たな 情景が》
健司さんの歌声とともに淡い紫の光が一筋差して……知ってる香りがする。ラベンダーの香り。

今の時期、北海道はラベンダーが見頃を迎える。花畑は有名な観光地にもなっているし、そのへんの道端にも咲いている。
広い場所で一面に咲いて、青空が似合う昼の花というイメージだったラベンダー。
でもこの曲の花は、都会のマンションのベランダで、小さなプランターに植えられて夜風に揺られている。

同じ花とは思えないくらい都会的で、孤独で、儚い。それがラベンダを初めて聴いた時の印象だった。

でも会場を包むこの香りは、よく知っている花のものだった。こんなに見える世界は違うけれど、同じ花だ。

私の知っている世界と康司さんの描いた世界が地続きになったような気がした。それがなんだか嬉しくて、深呼吸をした。マスク越しでも優しく、しっかりと伝わる香り。今ここにいる意味を噛み締めるように、感覚を研ぎ澄まして音楽に没頭した。

香りの記憶は一番長く残るらしい。
毎年この季節が来るたびに、道端のラベンダーが香るたびに、私はこの日を思い出すのだろう。

YOU RAY、サイカ


康司さん、隆児さん、武さんの3人で披露されたYOU RAY。FCツアーのときのリズム隊2人のアレンジも素敵だったけど、音源とはまた違った深みと優しさが詰まった演奏だった。

3人とも一音一音をすごく丁寧に鳴らして、歌っていたのが印象的だった。夕陽のような光に照らされる3人が幻想的で美しかった。
センターステージの距離の近いところだと、スピーカーを通さないドラムの音も聴こえてきてエコーのように響いていたのもまた良かった。


大きな会場で、健司さんがたった一人で歌ったサイカ。
自分の声が嫌いだったこと、「フレデリックは声が好きじゃない」と言われたこと、それでもこの声で歌い続けると決めたこと。健司さんは歌う前にそう話した。

3年前、流し聞きとも言えないくらい気にも留めていなかったカーラジオから流れてきた1曲。名前も顔も知らないアーティストの歌声とサウンドに心を奪われた。それがフレデリックとの出会いだった。

健司さんの声じゃなかったら、きっと出会っていなかった。「まだ遊び足りない」って、袖をひっぱる悪魔の存在に気づかなかった。

数曲聴いたくらいの知識で行ったライジング、生で観たボーカルの、聴いていた音源よりもずっとエモーショナルな歌声と表現力に圧倒された。音源もライブもどっちも良いな、歌声と表現の引き出しがたくさんある人なんだ、と思った。それは今も変わらないし今のほうがより強く感じている。

ライブに行く度に健司さんの歌が上手くなっていて、もう十分上手いのに、歌も表現も魅せ方も毎回進化し続けているのが素人目にも分かる。
フレデリックには最高のボーカルがいる。

歌うことを辞めないでいてくれてありがとう。なにくそ!って思ってトレーニングしたり、健司さんの声を必要としている人たちの気持ちに応えてくれてありがとう。
だから私はフレデリックと出会えました。出会えてよかった。

今にも泣き出してしまいそうな絞り出すような声も、会場の遠く遠くまで届くまっすぐな声も、呼吸を忘れるほどに聴き入った。素晴らしかったです。

Wake Me Up~ジャンキー


ここから一気に踊るモード!
Wake Me Upがまたアレンジ変わってて最高。最後のサビで健司さん康司さん隆児さんの3人が花道を歩いてくる姿が格好良かったしすごく楽しそうだった。

YONA YONA DANCEのミラーボール、ここで光るのは分かってるんだけどやっぱり綺麗すぎて驚いた。サビでモニターに映った歌詞はきっとMVを意識しているんだろうな。

踊りすぎて飛びすぎて、KITAKU BEATSあたりでマラソンの後みたいに脇腹が痛くなってきた……けど楽しすぎてやめられない。

オドループ、最初のアレンジがまた変わってて最高。最終的に第何形態までいくのか楽しみ。隆児さんのギターソロを間近で観れて嬉しかった!

もう限界ってくらいまで盛り上げて盛り上げて、本編ラストのジャンキー!
ジャンキーの入りのアレンジも大好きなんだよなあなんて思っていたら、うさぎのジャンキーとチャンキーの中の人!センターステージでのダンスに釘付けになっていたらうさぎのお面つけたスタッフさんも踊ってるしモニターに映る客席がみんなうさぎになってるし、楽しいが大渋滞。暑さも疲れも忘れて踊った。今までで一番踊った。

アウトロのリフレインでさらに踊って、モニターにはエンドロール?違う、フレデリズムツアー2022-2023!?フレデリズムホール!?!?
頭が追いつかない、幸せが詰め込まれすぎてる!!
いつかホールでワンマンライブをやってほしいと思っていたからすごく嬉しかった。一緒に行った友達と飛び上がって喜んだ。

最後の特効もド派手で最高。怒涛のラストにぴったりの演出だった。
あっという間すぎる本編。


サーチライトランナー、熱帯夜


武道館のアンコール1曲目で初めて披露されたサーチライトランナー。フレデリズム3に収録されるのが発表されたとき本当に嬉しかったし、1年経ってクラップも完璧。

ライブで声を出せない期間が続いているけど、その形式のライブに行っているうちに、声を出せないくらいどうってことないな、と思うようになった。
もともとコール&レスポンスも歌うのも大好きだし、そこで生まれる喜びも知っている。その世界が早く戻ってきてほしいとも思う。けど、できなくても楽しめる方法はある。

間奏のシンガロング、声を出さなくたって心でいくらでも歌えるし身体でいくらでも伝えられる。声じゃなくても届くものはある、と信じている。
状況を嘆くより、自分さえ良ければとルールを無視するより、今できる最大限で楽しむほうがきっと幸せだろう。不自由ではあるけど、その不自由さすら楽しめるライブを私はたくさん経験した。もちろん今日だってそう。

《けったいな熱帯夜 あの子は泣いていたんだずっと》
《熱帯夜 あのメロディーが 枯れた耳に花咲かす》
《鮮明なイマジネーション 点と線 心 熱帯夜》
フレデリックの曲に出てくる「熱帯夜」は、その場の状況ではない。思い出して、想像して、今ここにはない夜に想いを馳せる。

その夜は、今日だったのかもしれない。夢見て、願って、作り出して、ついにたどり着いた。
うだるほどに暑苦しくて、愛おしい熱帯夜。


昔よりも自分は熱い人間になったなと思う。というよりも、たぶん元からそうだった。今はそれが表に出やすくなったのだと思う。

どうしてだろうと考えてみたら、熱くなれるものと出会って抱いた感情を、自分の言葉で表現することに抵抗がなくなってきたからなのかもしれない。

昔から作文が嫌いだった。話し合いが苦手だった。自分の考えを書いたり話したり、みんなは同じような答えを導けるのに私はそうならない。
理解できていないわけじゃない。答えを聞けば確かにとは思うけど、模範解答よりも他に目がいったこと、気になったことを汲み取ってしまう。そうなるとマルは貰えない。

「どこかズレてる」という意識がずっとあった。人から言われることもあった。見当違いなことを言ってしまう自分が嫌いで、そう思われるのが怖くて、周りに合わせていた。自分の考えを言葉にすることを避けていた。


音楽、演劇、アート、ラジオ、本、人との関わり。歳を重ねていろんな世界を知るようになった。
人とズレてるのが怖いだなんて言っていられないくらいに心を揺さぶられて、想いを伝えたい衝動に駆られるものと出会った。フレデリックの音楽やバンドの生き様もその一つだった。

軽快でクールな楽曲の印象からは想像できないほど、フレデリックは熱いバンドだった。フレデリック自身が音楽に夢中で、フレデリックに夢中だった。その熱を浴びて受け止めたら、こちらも熱を持って愛を込めて返さずにはいられない。

そう思える瞬間がすごく幸せで、もっと大切にしたくなった。ズレてるのかもしれないし訳の分からないことを言っているかもしれないけど、それでも伝えたいと思うようになった。

文章なら時間をかけてしっかり考えられる。まだ言葉にできていない感情をなるべく伝わるように言葉にしていく、その作業もだんだん楽しくなってきて。

何かに夢中になれる、熱くなれる自分を愛せるようになった。

「あなたにとって本当に夢中になれるものとは?」
ジャンキーという楽曲が問いかけるテーマ。

私が夢中になれるのは、音楽やさまざまなエンタメであり、人と好きなものを共有する喜びであり、貰った感動や幸せを言葉にすること。 

夢中になれるものがあると、生きやすくなる。生きるのが楽しくなる。

25年生きてきて、人生の半分以上を音楽と一緒に過ごしているけど、今が一番音楽が好き。今が一番楽しい。この気持ちはこれからもきっと更新されていく。

息つく暇もなく次の楽しみが待っているというのは幸せだ。
今年のライジングが本当に楽しみ。音楽愛も情熱も増した私が観るライジングはどんな景色だろう。
代々木に行くことを目標に日々を乗り越えたこの半年もそう、これからの楽しみや叶えたいことがあると頑張れる。いつもありがとうございます。

ミュージックジャンキーはミュージックジャーニーへ。代々木はフレデリズム3のために作り上げられたライブだったけど、ここがゴールではなかった。フレデリズム3の物語はまだ始まったばかり。

これからもいろんな場所で音楽とたくさん出会って夢中になって、今よりもっと熱を持って音楽を好きになった姿で、フレデリックにまた会いに行きます。

また次の旅で会いましょう!
行ってらっしゃい、行ってきます!