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失われゆくクメールの伝統
3日間のクメール正月も終わり、明日月曜日から普段の生活に戻ります。道を歩いているだけで水をぶっかけられることもなくなりました。
昨日は、私がよく行くPrey Pour 村へ行ってきました。ウチから車で30分ほど、アンコール・ワットにも比較的近い村です。
今回、私も初めてのお正月で、当初の予定は、村に入って村人たちのささやかで心のこもった正月行事を見物させてもらってカメラに収めたいということでした。男女に別れての綱引きや、棒に登って先端のお菓子を奪い合うゲームなどなど、近隣の村々で行われるものとばかり思い込んでいたからです。ところが、村のカオンのいうことには、伝統行事といわれるようなものは何も行われず、ただ親戚友人たちが集まって、BBQやカラオケパーティーをやるだけなんだそうです。
そして、村人たちはこぞってシェムリアップや西バライ、アンコール・ワット、アンコール・トムへ出かけてしまうのです。伝統行事が行われるのは、村の中ではなく、シェムリやアンコール遺跡の中央広場に設営されたステージと広場で、観光客を相手に煌びやかに華々しく披露されるのです。(ちなみに、アンコール遺跡入場料は、外国人は1日35$ですが、カンボジア国民は無料)。最も、町から遠く離れた地方の農村では、まだまだ様々な行事が残っているのではないかと思われます。
よく考えてみれば、それも当然のことと言っていいでしょう。商品化の波に人々の暮らしが呑み込まれていったという、世界共通の問題もありますが、カンボジアの場合は、大国の利害に振り回されて20年以上続いた内戦の影響が最大といえます。とりわけポル・ポト政権下の暗黒の4年間に、それまで何百年と受け継がれてきたすべての伝統行事は根こそぎ壊滅させられてしまったのです。
我が家の界隈も、もともと田んぼが広がっていた田舎ですが、期待していた門付けのトロットダンスも来なかったようで、ときおり通行人に水をかけてお祝いする子どもたちの歓声が聞こえるくらいでした。正月らしい飾りつけもなく、色とりどりのゴウムの星が吊り下げられるのもどうやら街中だけのようです。
それでも、大きなホテルやレストラン、銀行、学校、商店などの前には、トンサテヴィー女神の降臨をお迎えするお供えが用意され、これらはなかなか興味深いものでした。当然のことながら、高級ホテル、高級レストランに行けば行くほど立派になります。
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私自身すっかり見損ねてしまった伝統行事でしたが、Khmer Times に載っていた写真を何枚かご紹介します。ほとんどがアンコール遺跡の中で撮られたものだと思います。どういういわれがあるものか、私も知りません。
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これは一昨日、我が家の前で撮りました。いざ“出撃”。子どもたちも大人たちもほんとうに楽しそうで、こちらもイヤでも笑みがこぼれます。ただし、この水鉄砲合戦を見ている間中、私の心の片側では常にウクライナのことがよぎりました。彼らは今まさに重火器で命がけの闘いに挑んでいるのです。いつになったら、こんなに楽しい“闘い”の日々が戻ってくるのでしょう。
伝統行事を守り続けて行くための必須条件は、その地域の平和であるという当たり前のことを、しみじみ考えさせられたクメール正月でした。
ウクライナに1日も早く平和な日々が戻ってくることを祈ります。