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爆発物非法活動取り締まり

村長さんと村の書記がやって来て、村の中央にあるエンジュの大木の幹に何やら貼り紙をしているのでのぞいてみると、非法な爆発物等の発見通報者に奨励金を出すという内容のものでした。こういった貼り紙は前にも見たことがありますが、いよいよオリンピックも近づき、改めて摘発に乗り出したということでしょうか。

いったい全中国で年間どれくらいの爆発物が使用されているかというと、それはもうとんでもない量になると思います。人民解放軍が使用する分はいうに及ばず、鉱山関係でも大量に使用されるでしょうが、それと並んで、実は民間で使用される量が日本では想像ができないほど多いのです。爆竹と花火です。

春節のときに夜通しで爆竹を鳴らす光景はつとに有名ですが、春節だけでなく、爆竹や花火を鳴らすのは、とりわけ農村地区では絶対に欠くことのできない長く続いた伝統で、それは今も生活の中にしっかり根付いているのです。

ただし、これらの爆発物に起因する事故というのはとても多く、取り扱いの途中に大爆発を起こして何人かが死亡するという新聞ネタ級事故から、個人の軽症の火傷まで、年がら年中後を絶たないのです。また、子ども達がおもしろがって通行人に投げつけるというのもあり、それが中って失明したなどという話もありました。私自身も一度西安で年越しをした時など、暗いところから突然爆竹が飛んでくるので、恐ろしくて外出できませんでした。

それで最近は、都市部では花火・爆竹が禁止されているところが多いのですが、相変わらず当局のお達しを無視する人々はゴマンといます。

さて、私が住んでいる山西省の伝統をご紹介します。まず、どこかの家で赤ちゃんが産まれたとすると、それを祝って花火が打ち上げられます(もちろん時間を選ばす)。村人は「あぁ〇〇んトコで産まれたな」とわかるわけです。たいていは、10本から20本くらいの丸筒型のをひとまとめに縛ってあるものを使います。

子どもが13歳の誕生日を迎えると、いわば“元服”のようなもので、友達や親戚を呼んでパーティーを開き(人を呼んでやるのは第1子のみ)、ここでももちろん景気よく花火が打ち上げられます。

新規開店のホテルや商店でもあろうものなら、それはもう盛大豪華に、何百発もの花火や爆竹や、時には解放軍お下がりの砲筒まで出て(もちろん空砲)、バンバンッ!!バチバチバチ!!ドーンドーン!!と耳を劈く轟音で、道行く人はイヤでものぞきに行きたくなります。

結婚式で使用される花火・爆竹の量も相当なものです。当地の結婚は、完全に‶嫁取り婚″で、結婚の儀式は新郎新婦両家で別々に行われ、‶披露宴″というものも別々に行われます。まずは新郎が新婦を迎えに来るのですが、新郎が新婦の家に到着したとき、そして、2人が新婦の家を出る時には、バンバン盛大に打ち鳴らされます。そして、新郎の家に到着した時、披露宴が始まる時なども花火・爆竹、そして手持ちの空砲が鳴らされます。ただ、この手持ちの空砲には、もろに黒色火薬が詰め込まれるのでかなり危険です。

民間行事で最も使用量が多いのは葬儀です。これはいろいろ多過ぎるので、また項を改めてご紹介したいと思います。私が最も興味を持っているのは当地の葬儀で、亡くなってから埋葬まで普通は1週間前後(風水師が暦を見て決める)、時にはもっと長く、使われる爆竹の量もそれに比して多くなります。人が亡くなった時はもちろんの事、その後に誰かが弔問に訪れる時と帰る時にも爆竹はその都度鳴らされるからです。

年々の墓参りのおりにも必ず持参します。誰かが病気で入院していて、退院するときには、病院の門のところでお祝いと感謝の印として鳴らされます。春節などで町に出た子供たちが帰郷したとき、また再び家を出るときにも道中の安全を祈って鳴らします。

ただし、爆竹や花火はけっこう高いので、ビンボーなこの界隈ではきわめてささやかに、平常はほんの一瞬バンバンッ!!と鳴り響く程度です。春節などで「お前んとこは、今年は儲けたから○○元も買うんだってなぁ」といった冗談交じりの会話がかわされるのですが、5年ほど前に行った福建省の客家はっかの村では、黄土高原地区の平均年収の何倍もの価格の爆竹が、朝まで盛大に鳴らし続けられました。

食事は常にどんぶり麺、テーブルに座って食べる習慣はありません

そうそう、貼り紙ですが、書いてあったのは:

「臨県公安局爆発物非法活動取締り奨励金制度について」

臨県公安局は、人びとの生活と財産を守るために、爆発物の非法生産、販売、購入、移送、備蓄および使用等を取り締まり、断固として爆発事故の防止に努めなければならない。よって、以下の違法活動に関して、通報者には奨励金を給付するものである。

非法火薬500Kg以下、または雷管500本以下       奨励金500元

非法火薬1000Kg以下、または雷管1000本以下      奨励金1000元

非法火薬5000Kg以上、または雷管3万本以上      奨励金3万元

非法生産拠点、非法販売ネットワーク           奨励金3-5万元
                         (1元≒16円)

だいたいこんな内容です。しかし、火薬の量というのが、並大抵の量ではないと思いませんか?とまれ、賀家湾の村人たちは“我関せずえん″で、3日目には貼り紙も風に千切れたのか、きれいさっぱりありませんでした。                        (2008‐06‐03)


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