【アメリカ在住】レジ打ちのスペシャリストから教えてもらった仕事術
アメリカのスーパーのレジの仕組みは、日本のそれとは少し違う。
アメリカでは、レジの店員さんが荷物の袋詰めまでしてくれることがほとんどなのだ。
私が週1で通っているスーパーがある。気さく、かつキビキビ働く人ばかりで、ほかのスーパーの店員さんとは天と地の差があると個人的に思っている。(アメリカのスーパーの店員さんは怒ってるのかな?と思うほどぶっきらぼうなことが普通)レジ打ちもかなり早く、ほかのクルーと喋りながらもレジの手は止めないという、これまたアメリカの常識では考えられない偉業を成し遂げてくれる。
そのスーパーに1年近く通い、店員さんの顔を覚えるようになってくると、仕事の違いがはっきりとわかるようになった。そして、「そのレジが他のレーンよりも混んでいても、この店員さんのレジに並びたい」と思える店員さんも出てきたのだ。
その仕事の違いとは何か。私が並びたいと思う店員さんは、「常温保存と冷蔵保存の食材を分けてくれる」人だ。少し他の店員さんよりレジ打ちが遅くても、私は保存方法で袋詰めをきっちり分けてくれる人のレジに並びたい。それはなぜか。家に帰ってからの食材保存の負担が明らかに違うからである。
アメリカでは、食料品の全てを週1回の買い物で賄っている。そのため、1回の買い物の量がとてつもない。日本で恐ろしい大きさだと思っていたコストコのカート、あのくらいの大きさが満タンになることが日常だ。さらに今住んでいる家には地下があり、年中通して低い気温で保たれているので、常温保存のものは常に地下に置いている。つまり、買い物の量が多く、さらに保存場所が複数箇所(しかも行き来には階段使用)ということで、食材を保存するのが想像以上に大きな負担なのだ。
そんな負担の大きい食材の保管に対して、「常温保存と冷蔵保存がごちゃ混ぜの袋詰め」だとどうなるか。キッチンに運んだ8個も9個もある紙袋の中身を漁り、常温保存と冷蔵保存を仕分け、冷蔵保存のものを冷蔵庫に収め、常温保存の食材を再度紙袋に詰め、それらを持って地下へ行き、パントリーに収める。全て常温保存の食材だと思っていた袋の中に、冷凍のものがまざっていたりすると、溶けないようにすぐに上の冷凍庫まで持っていかなければならない。そうやって階段を何度も往復したりしないといけないのだ。この一連の流れが、本当に面倒くさい。だからこそ、私は買い物の際に、冷蔵保存と常温保存の食材を分けてくれる店員さんのレジに何が何でも並びたいのだ。
きっと、このような気遣いができる店員さんは、「自分の手を離れた後工程のことを考えることができる」人だ。レジ打ちと袋詰めがとても速い店員さんもいる。袋詰めをとてもきっちりやってくれ、少ない袋で効率的に詰めてくれる店員さんもいる。もちろんそんな仕事ぶりも素敵だ。でも、レジ打ちや袋詰めなどの目の前の仕事だけではなく、「お客がその後どういう作業をするか?」という後工程に想いを馳せることができる店員さんが、冷蔵保存と常温保存を分ける袋詰めをしてくれるんだと思う。後工程を考えることができる人こそ、『仕事がデキる』人なんじゃなかろうかと思う。私が企業に勤めている時に素敵だなと思った人は、常に「次に使うのはどんな人で、どうやって使うか?」を考えていて、それがアウトプットに反映されていた。そんな人から仕事をバトンタッチされた時は、驚きを通り越して感動したものだ。私も、あの先輩みたいな仕事ができていただろうか。そんなことを、専業主婦になった今、アメリカのレジに並びながら考えている。