ましひろさん②
ましひろさんの取材記事、その②です。今回は聖装新聞をはじめたきっかけや思いを聞きました。
※前回の記事はこちら
~新聞の話を教えてください。聖装新聞を始めたきっかけはどんなことだったんですか?
ましひろさん 完全にネタよ。最初の原点は2019年かな。年末に名古屋でDRってイベントがあってね。そこでカラオケ大会があって私が大トリを任されることになった。そのときにスタッフのつかさってやつがふざけて私のことを教祖って呼び出してね。便乗して何人かがそう呼ぶようになった。それで、「女装の宗教があっても面白いかも、ネタになるな」って思った。
宗教と言えばなんや。日本で一番大きいのは某学会でしょ。その新聞の名前をもじって聖装新聞にしたら面白いと思って作ってみたの。
~そこからなんですね!すご!芸大出身ってことが活きるんですね。一人で新聞作れるものなんですか?
ましひろさん 紙面も一面の1/3くらいの量だったけどね。新聞というか、新聞風の物だった。今の規模になったら一人では絶対できないわ。それで私が歌ってるのをネタにして記事にしたの。『教祖高らかに熱唱、信者ら感動の涙』やからね(笑)
それは「面白かったな。いいネタできたな」で終わったんだけど。その後すぐにコロナ渦になってね。みんな外で女装できなくなるわけよ。
その現状を新聞で晴らそうと思った。新聞で女装界隈のことをネタにしたらさ、女装できなくても、会場に行けなくても、面白く思う人が多いんじゃないかって思った。
それで新聞を作り始めた。最初の頃は身内のネタばっかりで、しょうもない記事ばっかりだったけど。
~コロナが続ける理由になったんですね。完成度の高い新聞をイチから作るって想像もつかないんですが、イラストレーターとかを使って作るんですか?
ましひろさん そうね。イラストレーターは使えたからね。でも刊行を重ねるにつれて、手伝ってくれる人が増えて、だんだん公共性を帯びてきた。徐々に身内ネタが減っていって、イベントを取り上げることも多くなってきて。
~ほんとの新聞に近づいてますね。ファンもついてきたんですね。
ましひろさん 私、基本的には飽き性なのよ。新聞じゃないネタは一回きりの物ばっかり。でも新聞って、他人のふんどしで相撲を取れるのよ。手を変え品を変えいろんなことが新聞のなかでできる。
~たしかに。ネタを探すのは難しいでしょうけど、ストーリー性はいらないですよね。一過性で良いというか。ショッピングモールじゃないけど、箱だけ用意してみんなにいろんな企画をしてもらうみたいな。
ましひろさん そうそう。毎回自分がネタを作る必要はないし、みんながやってることを引っ張ってきて作るからね。それが飽きずに続けれられた理由かな。我ながら良いコンテンツを作った。自分を飽きさせない仕組みづくりっていうのはやっぱり重要だね。
新聞書いてて思うけど、ニュース記事なんてどれも同じなんだよね。『どこでイベントがありました。こんなことやります』とか。そんな記事ばっかり。
読者も飽きるし私も飽きてしまう。だから、新しくてエッジの効いたコンテンツをどれだけ作れるかってことに一番苦心してる。
~生みの苦しみはありますよね。はじめられて3年経った聖装新聞ですが、どれくらい大きな組織になったんですか。
ましひろさん レギュラーメンバーとしては、広告とかデザインを担当してくれてるとりたんって絵描きがいる。初期から手伝ってくれてる私の右腕的な存在だね。他にはおりょーさん、教祖様の四コマを書いてくれているPちゃん、地方を走り回ってくれてる地方部のRenさんとか。社会部のニュースがあればお願いしているゆりあさんとか。スポットスポットでお願いする場合も多い。
~ワンピースみたいですね。同じ志の下にどんどん仲間が集まる。デザインできる人がいたら強いですよね。コンテンツが一気に本格的になります。
ましひろさん みんな強みを活かしてほしい思ってる。絵が描ける、文章が書ける、グルメに強い。そういう人達に声かけて、それぞれの専門分野に任せてみんなで作ってく。スポットで面白いことをしてる女装さんとか取り上げることも多いね。私もやりたいですって参加してもらうこともあれば、こちらから誘うこともある。
~もちろん無給ですもんね。私もこうしてライター活動をしていて、元々はこの仕事がしたいって思いが強かったんですけど、時間とお金を使って好きなことをするのであれば、仕事である必要ないって思い始めたんですよね。きっと皆さんも、面白いものを提供するっていう共通の信念のようなものがあって、そのために時間と労力を使ってるわけじゃないですか。
ましひろさん だから面白いよね。みんなよく無給で快く引き受けてくれるなって思うよ。人間の性で、みんな自分の得意を披露したいってこともあると思う。強みの発表の場ってあまり多くないじゃない?だからそういう人に任せると発表の場ができる。専門性の高い記事は面白くて読者も読みたいから、WinWinになるんだよね。そういう意味ではクリエイター集団だよね。創造性がある人とやっていきたい。その人を取り上げてみんながハッピーになれるように。
女装ってさ。美しさばかりがクローズアップされるけど、それに対して反発心みたいなものがあるのよ。
~反発心ですか?
ましひろさん すごい才能がある人も多いし、強みがある人もいる。別に綺麗な女装を否定したいっていうつもりはないんだけど。
~Twitterしてると圧倒的に綺麗な女装は、強者のイメージがありますね。弱者はなす術ない、万アカが正義みたいな。
ましひろさん そうなのよ。だからそういう価値基準に対抗したいって気持ちはあるよね。もちろん美しさは才能であり努力の結晶であり、武器なのよ。強みであることは間違いないし、否定するつもりは全くない。
~たしかに!でも美しくなくても発言権がなくなるわけじゃないですもんね。
ましひろさん そう、女装の価値って美しさだけなの?女装を突き詰めて考えれば女を装うでしょ。裏を返せば、女の価値って美しいだけ?違うじゃない!その人の才能であり、人格であり、そのことが本来の評価されるべきであってさ。裏を返せば、美しさでしか見てない人は、女を美しいか美しくないかだけの目線でしか見てないんじゃないの?ってことを言いたい。
それはおかしいじゃん。その人の人格であり、才能であり、持ってる技術が本来あるはずなのに、女装を女性の美しさでしか評価しないって、それは違うんじゃないのって、ずっともやもやしてた。
~そういう思いも新聞で発信する原動力になっていったんですね。
ましひろさん そう、だから可愛いだけの女装なんて新聞に載せたくないのよね。なんのニュース性もないでしょ。その人を取り上げることで、みんなが幸せになれる人を載せていきたい。例えばね、日本最高齢92歳のとくみさんって女装がいるの。
~えー!!!92歳ですか!
ましひろさん 「そんな人がいるのか!」って、知ることでみんな元気もらえたり、ハッピーになれるじゃない。大阪におられるんだけど。
~知らなかったです。Twitterとかされてないですよね。
ましひろさん TikTokだね。
~TikTok!!若い!!!
ましひろさん スイッチってスタジオにおられるのよ。新聞の老舗探訪ってコーナーで私が取材に行った。90超えた女装さんがいるって噂で聞いて。「これは会わないと!足で稼がなあかんわ」って。戦争の話とか、どんな思いで女装をされているかとか、お話聞かせてもらってね。やっぱりそれ聞いたら希望が湧いてくるんだよ。とくみさんも遅咲きで、80超えてから女装を始められたみたい。
~80超えてから女装を!?
ましひろさん そんな年代からでもやれるんだって、みんな勇気もらえると思うのよ。ハッピーになれる人を取り上げていきたいから。
正直いうと、聖装新聞に載っけてくれって依頼けっこうあるのよ。どうやったら載せてもらえますか?みたいな。でも違うのよ。自己アピールしてほしい。「こんな活動してます。私を取り上げたらこんなハッピーなことあります。」みたいにね。しょうもない新聞だけどさ。一個人の自己顕示欲の発露に使ってほしくないのよ。
~ちゃんと信念を持たれているのが伝わります。
ましひろさん 信念というと大げさかもしれないけど。正直、自分が美しさだけで勝負できなかったことに対する恨みというか、復讐心かもしれない。
~初期衝動はそうかもしれないけど、ここまで大きなうねりになったらましひろさん1人の思いじゃないですよ。新聞自体の人格としての意見になりますよね。
ましひろさん 美しい、美しくないって基準の話したけど、おかしな話だよね。最初は自分が美しくなりたいって思って女装を始めたくせに、その美しさを新聞で否定するっていうね。
~Reiさんに出会ったのが大きかったんですかね。
ましひろさん うん、勝てねぇってね。それはもう美しい人に任しときゃいいわって。
今日はここまでです。明後日投稿予定、③に続く。
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