葛藤
私は、いつものように、乗り換えの駅まで大通り沿いを歩いていました。
――すみません
と、呼び止められた気がして振り返ると、女の子と目が合いました。女の子、といっても、私より若干年下くらいでしょうか。道の端っこに立っていて、手には大きな紙袋を持っています。
気になって近づくと、彼女は、手の中の小さなメモを差し出して見せました。“自分は留学生で、お金に困っている”というようなことが、5行くらいの短い文章で書かれていました。
彼女が抱えている紙袋には、小分けにラッピングされた市販のお菓子がたくさん入っていました。彼女はこれを売っていたのです。
私は、彼女の境遇を何ひとつ知らない。そもそも、彼女が、自分の意思でここに立っているのかもわからない。
今ここで、私がお菓子を買ったら、彼女のこの方法を肯定することになる。
でも、このまま立ち去る?
それとも買う?
――ほかの選択肢を思いつかなかった。
より後悔が少ないのはどっちだ。
私「……いくらですか」
彼女「ひとつ500円、ふたつ1000円」
私「……(財布を出す)」
彼女「何個?」
私「……ひとつ」
彼女「ありがとうございます」
私「……いいえ」
私が500円渡しても、彼女は救われないよ。
こんな日に限って、曇った夜空が妙に明るくて、なかなか寝付けない。
*
……ここまで書いて、寝落ちしました。気がついたら朝になっていました。とりあえず、熱い紅茶をいれて、お菓子を食べることにします。
朝と夜は、隣りあわせ
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