社長を辞める夫
↑の翌日の話です。
変わらない日常
11時起床。
離婚するかもしれないと分かっても私がやることは変わらない。
考え事をしながらではあるが、いつも通り家事をこなす。
夕方、ふと思い立って妹のセリちゃんにLINEした。
「ちょっと聞いてもらいたいことがあるんだけど、今日電話できる時間ある?」
「18時に仕事終わるからその後で電話するね!」
約束をしてスーパーへ買い物に。
少しでも元気を出してもらえるよう、夫の好きなハンバーグを作ることにした。
セリちゃんの意見
18時。
ハンバーグの下拵えをしていたらセリちゃんから電話がかかってきた。
「遅くなってごめんね!なんかあった??」
「実は離婚するかもしれないんだよね」
「えぇ!?」
順を追って経緯を説明する。
夫が会社を辞めると言っていること。
田舎に移住したいらしいこと。
「あ〜、それ完全に『人生の楽園』に影響されてるじゃん」
「だよね~」
「人生の楽園」というTV番組については以下の記事に書きましたのでご興味があればどうぞ。
「でも私は着いていけないじゃん」
「うん、凛ちゃんは東京でしか生きられないよ。無理無理」
「で、じゃあ離婚かもねって話になったの」
「なるほど」
一通り聞いてからセリちゃんは「うーん」と唸った。
「最終的に決めるのは凛ちゃんと旦那さんだけど。私としては、離婚はしないでほしいかな。すごく仲良いし、理想の夫婦って感じだもん」
外からはそう見えるのかもしれない。
実際、私は夫に対して不満があるわけではないのだ。
夫が帰ってこない
20時。
いつもなら19時までには会社を出て「今から帰る」と連絡してくるはずの夫から音沙汰がない。
昨日の夜に「明日は上層部の何人かと話をする予定になっている」と聞いていたので、それが長引いているのだろうか。
それとも、もう何もかも嫌になって駅のホームに衝動的に飛び込んでいたりしたらどうしよう。
急に心配になってLINEをすると、しばらくして返信があった。
「遅くなってごめん。今から帰ります」
生きていたのでホッとする。
やっぱり辞める
帰ってきた夫は顔色が悪かった。
多分良い話にはならないだろうけど、まずは夕食だ。
いつも通り、全然美味しそうに撮れなかったけど夫は「すごく美味しい。ありがとう」と言ってご飯をおかわりしてくれた。
作って良かった。
食事をしながら夫がぽつりぽつりと話しだす。
辞意を伝えたら案の定引き止められたらしい。
それに対して「自分が残る条件」を出したところ「それは飲めない」と言われたと。
だから辞めるってさ。
「6月に辞めることにした。その後2ヶ月かけて有給休暇を消化するから、7月と8月は移住候補地を探しに旅して回ろうと思ってる」
ただ、関東や甲信越など東京に比較的近い場所を探すことにしたらしい。
「今日ザッと資産を確認したら想定よりも余裕があった。もし別々の生活になっても、凛ちゃんに苦労をかけることにはならないと思う」
どうやら離婚はせず2拠点生活をしたい模様。
しかしこのまま東京の家に住み続けて別の仕事をする可能性もある、と。
私の心を動かす人
22時。
ロイくんから「やっと仕事終わった〜」とLINEが来る。
彼は現在繁忙期に入っており、朝出社してからぶっ続けで22時まで仕事、というバブル期のサラリーマンみたいな働き方をしている。
まぁ若いから大丈夫だろうけど。
私と電話する時間があるなら睡眠時間に当ててほしいと思い、しばらく電話もしていない。
「お疲れ様。身体大丈夫?」
「さすがにしんどいかな。凛ちゃんに会いたすぎる」
この時、私は気付いてしまったのだ。
今日1日かけて夫のことを考えていたはずなのに、私の気持ちは常にフラットだった。
そしてロイくんからのたった一言の「会いたすぎる」によって、ようやく心が動いた。
会いたい。
すごく会いたい。
まるで人間の感情を取り戻した気分になった。
今の私の心を動かすのは、この人の言葉だけなのかもしれない。
正直な気持ち
夫が会社を辞めるまで、まだ4ヶ月ある。
人が心変わりをするには十分な期間だ。
これからも二転三転するかもしれないが、とりあえず現状はこんな感じです。
今回の件で初めて離婚について考えた。
自分はどうしたいのか。
私は「離婚したい」とは思っていない。
そして「離婚したくない」とも思っていない。
どっちでもいい。
自分のことなのに「どっちでもいい」なんておかしな話だけれど。
本当に、どちらでも構わないのだ。
どう転がっても私は自分の信念を曲げないし、やりたいことしかやらない。
先が見えないことに不安を抱く人もいるだろうが。
私は先の展開が読めない人生のほうが好きなのだ。