武士道入門32 ビジネスマン必須の「商人道」とは?

『武士道』第10章の「サムライの教育と訓練」で新渡戸稲造さんが言っている のは、武士の教育とは、あくまで世の中を守るため、あるいは己の家や名誉を 守るための「戦士の学問だった」ということです。
だから「お金儲け」に対する考え方は、排除されました。

「武士は、お金そのものを嫌い、金儲けや貯蓄の術を賤しみました。武士にとっ て儲けたお金は、汚いものと考えられます」

こうした武士の根本姿勢とは逆にいたのが、商人たち。
士農工商の身分では最も下になるのですが、じつはこちらでは「武士道」の 哲学を取り入れ、正しい道徳的な商人のための哲学、言うなれば「商人道」と いったものが、生まれていたんですね。
これが江戸時代の経済的繁栄を生み、じつは現在のビジネスにまでつながっています。

その筆頭にいたのが、石田梅岩さん、という人。
もとは農民だったそうですが、それから商売の道を志し、「石門心学」という思想をつくりました。
そして商人向けの教育を始めたんですね。

植西聰さんの『「商い」で成功した江戸商人「ビジネス」で苦しむ現代人』 という本によると、彼は「武士道」をまるでパクったかのように、次のような 4つの原則をまとめています。

・仁......お客さんの気持ちを思い、喜んでもらうよう努力すること
・義......嘘や偽りのない、正直な商売をやっていくこと
・礼......どのようなお客さんであれ、相手を尊敬する気持ちを持つこと
・智......商売に創意工夫をして、絶えず改善していくこと

なるほど、これは現代の企業の「企業理念」であってもおかしくない原則ですよね。

一方で、やはり武士道を取り入れ「三方良し」の思想を掲げて、多くの豪商 を生んだのが近江商人。
「売り手よし、買い手よし、世間よし」ということで、こちらも究極的には「世 の中のためになるビジネス」を目指したわけです。

彼らの哲学はやがて、明治以後の近代企業に引き継がれますが、すでに武士 の時代から「武士道」の教えをビジネスに取り入れ、成功した人々は登場していました。現代人も参考にすべきと思います。

ちなみに石田梅岩さんは、生徒がたった1人であっても、「十分ではないか!」......と、講義をし続けたそうです。こういう姿勢、見習わなきゃですね

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